暮らしの森|木の実は、明日の分も落ちている|モコ
森に暖かな日差しが差し込む。
草の上には、ころころと木の実。
昨日の風が落としていった、小さなごちそう。
モコはしゃがみこみ、
カゴに木の実を集めていた。
「これ、おいしいモコ!」
ひとつ拾って、かじる。
またひとつ拾って、かじる。
拾っては食べ、拾っては食べ。
その様子を、少し離れた木陰から、
マダム・ザマスが見ていた。
日傘をくるりと回しながら、ゆっくり近づく。
「……モコ」
「ザマスー!」
モコは口いっぱいのまま手を振る。
「その木の実、全部食べたらどうなるざます?」
モコはきょとんとする。
「えっと……なくなるモコ?」
「そうざます」
マダムは草の上にしゃがみ、
ひとつ木の実を拾う。
「森の実は、“今日の分”と“明日の分”が
混ざっているざます」
モコは手を止める。
「……?」
「全部食べたら、今日のお腹は満たされる。
でも明日の自分は少し困るざます」
「でも、お腹すいたら食べたいモコ……」
「それも正しいざます」
モコはしばらく木の実を見つめていた。
風が吹く。
またひとつ、木の実がころんと落ちた。
モコはそれを拾い、少し考えてからカゴに入れる。もう一つもカゴへ。
そして最後の一つだけを口に入れた。
もぐもぐ。
「……おいしいモコ」
マダムは微笑む。
「森は奪わなければ、だいたい足りるざます」
モコも小さくうなずき、
もう一度カゴを見る。
「こっちは、だいじに取っておくモコ」
マダムはゆっくり立ち上がり、
日傘をくるりと回した。
「それが“備える”ということ。
明日の分を残せる人は、困らないざますから」

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