革の「傷」との付き合い方|気にしすぎなくていい理由
はじめに|傷を見て、ため息をついていませんか?
革小物を買ったとき、最初についていた傷や模様が気になった経験はありますか?あるいは、使っているうちについた傷を見て「やってしまった…」と感じたことは。
実は僕は、どちらの傷もそんなに気にしていません。というより、むしろ好きです。今日はそんな話をしてみます。
1|血筋やトラは「その動物が生きてきた証」
革には、なめす前の動物の生活の跡が残ることがあります。血筋は皮膚の下を走っていた血管の痕、トラは首まわりのシワや筋肉の動きによってできた模様です。
市販品ではこういった部分を避けて裁断することも多いのですが、僕は制作のときにあえて使うこともあります。
その動物がどんな環境で、どんなふうに生きてきたか。それがそのまま革の表情になっている。血筋やトラが入った革を見ると、そういうことを自然と思います。「欠点」ではなく、その個体にしかない証だと思っているので、デザインとしても積極的に取り入れています。
2|使ってからの傷は「自分だけの歴史」
買ってから使っているうちについた傷はどうでしょう。
バッグのコーナーが擦れた傷、財布を落としてしまったときの傷、鍵と一緒に入れていてついた細かい線——。
これも僕の中では「自分がそれを使ってきた記録」です。傷がつく場所は、自分がどう使ってきたかを教えてくれます。ポケットに入れる人はここが擦れる、バッグの底に入れる人はここが当たる、というように。同じ革小物でも、使う人によって傷のつき方がまったく違うんです。
それって、世界にひとつだけの一点ものになっていく過程だと思っています。
3|大切なのはケア|機能さえ保てれば傷は味になる
とはいえ、傷をそのまま放置していいかというと、そういうわけでもありません。
革は乾燥が進むとひび割れてきます。表面の傷から乾燥が広がると、見た目だけでなく強度にも影響が出てきます。ファスナーの開閉がスムーズでなくなったり、縫い目がほつれやすくなったり。「機能を失う」状態になると、さすがに修復が難しくなってきます。
だからこそ、定期的なケアが大事です。クリームで油分を補って、乾燥を防ぐ。それだけで革の寿命はずいぶん変わります。傷自体は消えなくても、ケアされた革の傷は「味」になります。ケアされていない革の傷は「痛み」になる。この違いは、手に取ったときにはっきりわかります。
4|「完璧な革」より「自分だけの革」を育てる
革小物を選ぶとき、傷ひとつない均一な表面を求める気持ちはわかります。でも革は、使えば必ず変化します。最初の完璧さより、使い続けた先にどんな表情になるかの方が、ずっと面白いと僕は思っています。
血筋やトラが入った革を選ぶのも、使ってできた傷をそのままにしておくのも、「自分だけの一点もの」を育てていくための選択です。ケアを続けながら、その変化を楽しんでいく。それが革小物の醍醐味だと思っています。
整骨院で患者さんを診るときも似ています。これまでの怪我や仕事、どんな運動をしてきたか。それを聞いていくほど、その人にしか出来ない立ち方や動き方が見えてきます。革の傷を読むのも、人の体を読むのも、バックヤードを知ることから始まるんだなと思っています。
おわりに
傷を気にしすぎなくていい、というのは「雑に扱っていい」ということではありません。丁寧にケアしながら、その上で変化を楽しむ——そのバランスが、革と長く付き合うコツかなと思っています。
革小物のケアや選び方で気になることがあれば、お気軽にご相談ください😊
次回は「コバってなに?|革小物の端っこにこだわる話」についてお伝えする予定です。ぜひフォローしておいてください!
