総合計画を読んだ。その次に何を調べますか?―自治体研究を一段深くする方法
公務員試験で自治体研究をするとき、
「まず総合計画を読みましょう」
と言われたことがある人も多いと思います。
私も、これは大切だと思っています。
総合計画は、その自治体がこれからどのような地域をつくろうとしているのか、そのためにどんな分野に取り組んでいくのかを示す、いわば自治体のマスタープランです。
受験するのであれば、一度は目を通しておいた方がいいでしょう。
ただ、総合計画をしっかり読んだ人にこそ、その次にやってほしいことがあります。
総合計画だけで、自治体研究を終わらせないことです。
総合計画は、どうしても「広く」なる
いくつかの自治体の総合計画を読み比べてみると、気づくことがあります。
子育て、福祉、防災、産業、教育、環境、まちづくり……。
どの自治体の総合計画も、内容は似たり寄ったりです。
そもそも総合計画は自治体の施策全体について書かれるもの。
そのため、特定の分野だけを詳しく説明するのではなく、自治体が取り組む幅広い分野を網羅しなければなりません。
よほど特徴的な自治体でない限り、似たような言葉や方向性が並ぶこともあります。
総合計画を読めば、
「この自治体が何を目指しているのか」
を知ることはできます。
でも、それだけでは、
「なぜ自分は、この自治体で働きたいのか」
まで掘り下げる材料としては、少し足りないことがあるのです。
次は、自分の関心分野を絞ってみる
そこで私がおすすめしているのが、総合計画を入口にして、自分が関心を持てる分野をいくつか探すことです。
たとえば、
防災
子育て
農業
福祉
多文化交流
教育
生涯学習
商店街
環境
観光
健康
何でも構いません。
できれば、自分自身の経験とつながる分野があると強いと思います。
学生時代に農業ボランティアを経験した人なら、農業政策。
子ども食堂の運営に携わった人なら、子どもの貧困対策や子育て支援。
自分が実際に経験してきたことと自治体の政策がつながれば、単に資料を読んで覚えた話ではなく、自分自身の言葉として語りやすくなります。
ただし、一つだけ注意があります。
一つの分野だけに絞り込みすぎないことです。
私は学生には、最低でも3つ、できれば5つくらい、興味を持って調べられる分野を用意しておくように伝えています。
行政の仕事には人事異動があります。
「私は観光しかやりたくありません」
「福祉以外には興味がありません」
と受け取られてしまうのは、あまり得策ではありません。
やりたい仕事を持つことは大切です。
でも、それだけに固執するのではなく、いくつかの行政分野について関心を持っておく。
その方が、行政職として働く姿にもつながりやすいと思います。
総合計画から「行動計画」へ降りてみる
関心のある分野が見つかったら、もう一段深く調べてみます。
そこで見てほしいのが、分野ごとに作られている行動計画・アクションプランです。
そこには、総合計画よりも具体的に、
何をするのか
いつまでにするのか
どんな事業を行うのか
何を成果として見るのか
といったことが書かれています。
計画によっては、数年ごとの検証や振り返りも公表されています。
ここまで読むと、
「この自治体は○○に力を入れています」
というところから、
「具体的に何をしているのか」
「どんな成果が出ているのか」
「まだ何が課題として残っているのか」
まで見えるようになってきます。
自治体研究の解像度が、一段上がるわけです。
「何をしているか」の、もう一つ前を考える
ただ、私はここでもう一段考えてほしいと思っています。
「なぜ行政が、それをやるのか」
という問いです。
たとえば、商店街振興について調べているとします。
実際に商店街を歩いてみる。
シャッターが閉まった店舗がある。
一方で、行政の補助制度などを利用して、新しい店舗が生まれていることにも気づいた。
これは、とてもいい発見です。
でも、ここで終わらせない。
「公務員の視点」で考えてみます。
そもそも、なぜ行政は税金を使ってまで商店街を活性化させようとしているのでしょうか。
商店街が衰退したということは、見方を変えれば、住民がその商店街を利用しなくても生活できるようになったということでもあります。
郊外に大型スーパーができたのかもしれない。
ショッピングモールができたのかもしれない。
市場の競争だけを考えれば、利用されなくなった商店が淘汰されていくこと自体は、不思議なことではありません。
それでも行政は、税金を投入して商店街を支援する。
なぜでしょう。
そこにはきっと、その自治体なりの政策的な理由があります。
商店街を単なる「買い物をする場所」としてではなく、別の役割から捉えているのかもしれません。
では、その自治体では何を重視しているのでしょうか。
商店街にどのような役割を期待しているのでしょうか。
ここから先を、ぜひ考えてみてほしいと思います。
施策を知ることから、行政がその施策を行う理由を考えることへ。
ここまで来ると、少しずつ「受験生として自治体を見る」ことから、「行政職員の視点で自治体を見る」ことへ近づいていきます。
興味のある分野が見つからなければ、広報紙を見てみる
「そうは言っても、自分には特に興味のある行政分野がない」
という人もいると思います。
そんなときに私がおすすめしているのが、自治体の広報紙です。
特に見てほしいのが、4月号です。
自治体によって構成は異なりますが、新年度予算や、その年度に重点的に取り組む施策が紹介されているはずです。
そこを眺めながら、
「これは少し面白そうだな」
と思えるものを探してみる。
そこから関連する計画や事業を調べていけばいいのです。
もう一つは、1月号。
首長の年頭の挨拶などが掲載されています。
市長や知事が、その年にどんなことを重視しようとしているのか。そのヒントが見つかることがあります。
最初から自分の関心分野を無理に決める必要はありません。
自治体側が発信しているものを読みながら、自分との接点を探してみてください。
3つから5つの分野を持つことは、面接対策にもなる
複数の分野について調べておくことで、役立つ場面があります。
本番の面接です。
面接では、想定していた以上に一つのテーマを深く聞かれることがあります。
面接官自身が詳しい分野であれば、そこから質問が深くなっていくこともあるでしょう。
でも、深掘りされること自体を怖がる必要はありません。
むしろ、
「もう少しこの人の話を聞いてみたい」
と思ってもらえている可能性もあります。
だからこそ、そのときに自分なりの考えを返せる準備をしておく。
一つの志望動機だけを完璧に暗記するのではなく、3つ、できれば5つくらいの行政分野について、
「この自治体では何が行われているのか」
「なぜ、それが必要なのか」
「自分はそれについてどう考えるのか」
まで準備しておく。
そうすると、面接でどこから話が広がっても、自分の言葉で対応しやすくなります。
自治体研究は「詳しくなること」がゴールではない
自治体研究をすると、どうしても情報をたくさん集めたくなります。
計画を読む
事業名を覚える
数字を調べる
もちろん、それらも大切です。
でも、私は最後にもう一つ確認してほしいと思っています。
あなたが興味を持っている分野について、その自治体が「何をしているか」だけでなく、「なぜそれをしているのか」まで、自分の言葉で説明できるでしょうか。
自治体について詳しくなることだけが、自治体研究のゴールではありません。
その自治体が、
「なぜ、それをするのか」
に思いを巡らせてみる。
そこまで踏み込んだとき、自治体研究は単なる面接対策から、少しずつ「行政(の仕事)を理解すること」に変わっていくのだと思います。
