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バヌチャルな恋が、リアルな愛に倉わるずき

────掌線小説

Grrrrrrrrrrr!

遠くに聞こえたその咆哮は、声だけで倧物なこずが分かった。党速で森を駆け抜け、切り立った厖のきわでスコヌプを取り出す。

いた   想像しおたよりデカい。このサむズのドラゎンはめったにお目にかかれない。きっず今日䞀番の獲物だ。はやる気持ちをグレネヌド匟の装着音で萜ち着かせる。ラむフルスコヌプを光孊匏からデゞタルズヌムに切り替え、タヌゲットの眉間を狙う。瞬間、スコヌプの䞭を人圱が暪切った。

「短剣」
思わず声を出しお驚く。ドラゎン盞手に短剣で戊うダツなんお芋たこずがない。鋭いかぎ爪の攻撃をかわしたず同時にドラゎンの右手を駆け䞊がる姿に今床は絶句した。玔癜のシュヌズに真玅の゜ヌル  。

The Redレッド
 å™‚では聞いたこずがあるけど、ホントにいたんだ。レッドは䞀瞬でドラゎンの右手の腱を切り裂いた。ズンっず地鳎りが響き、巚倧な右手がダラリず垂れる。次に巊手の腱、最埌に急所の眉間を貫けばこのバトルは終わる。こんなに鮮やかな近接バトルは初めお芋た。

ピンっ

レヌダヌに反応音。別のドラゎンが遠くからレッドに近づいおいる。あれほどの手緎れなら二匹盞手でも䜙裕だけど、タむムアタック䞭なら邪魔だろう。

僕は歊噚を超長距離甚ラむフルに倉え、颚をよんだ。スコヌプをあお、息を止めお ── 撃぀。レヌダヌからドラゎンが音もなく消えた。次の瞬間、チャットに通知が届いた。

凄いですね
そんな長距離で急所を射抜くガンナヌはじめお芋たした

スコヌプをレッドに向けるず、厖ほど倧きいドラゎンが既に暪たわっおいた。これが、圌女ず亀わした初めおの䌚話。この画面のスクショは今でも僕の宝物だ。

†

JOKERNIGHTゞョヌカナむトは、3幎前に公開されたオンラむンゲヌム。今ではアクティブナヌザヌが1億人を超える人気ゲヌムだ。ドラゎンを倒すバトルモヌド以倖にもフィヌルド内で行われるアヌティストのラむブなど、ゲヌムずいう枠を超えたSNSプラットフォヌムになっおいる。半幎前、同僚にゞョヌカナむトを教えおもらった僕は、䞀気にハマった。䌑日はすべおの時間を぀ぎ蟌んだ。6垖䞀間の郚屋が、ゲヌム郚屋に倉わるのに時間はかからなかった。

レッドは、ゞョヌカナむトで最も有名なカリスマプレむダヌで、去幎初めお開催されたバトルロワむダルの䞖界倧䌚優勝者だ。副賞で莈られた走力を限界倀の3倍にするシュヌズ。圌女はそれを癜いハむヒヌルにカスタマむズした。癜色に映える真玅の゜ヌル。い぀しか圌女は「レッド」ず呌ばれる䌝説のプレヌダヌになった。

圌女は、゜ロプレヌしかしないこずで有名だった。チャットも垞にクロヌズ状態。誰ずも亀流しない、その厇高なプレヌスタむルがレッドのカリスマ性を高めた。そのカリスマが、いた目の前にいる。しかもチャットがオヌプン状態だ。動揺した僕は、なにを話しおいいか分からずに固たっおいた。

わたしずチヌムを組みたせんか

突然の蚀葉にキヌボヌドを打぀手が震える。

え うぞ

ネット初心者みたいなタむプミスをしお、僕は恥ずかしくなった。

ほんぞ

わざずタむプミスをした圌女に、このずきからもう、僕は惹かれおたのかもしれない。

†

そっちに行きたすね、ずチャットを受けおからレッドが珟れるたで、30秒もかからなかった。目の前に珟れたレッドのアバタヌは、ずおもシンプル。明るい髪に負けないくらいキラキラず茝く琥珀色の瞳。真っ癜なコスチュヌムに茝くダむダモンダのペンダント。そしお、䞖界にひず぀しかない「レッド゜ヌル」。

はじめたしお、リサです。
みんなはレッドっお呌んでるみたいだけど。

はじめたしお、ナりトです。リサさんは  

リサ、でいいですよ

リサは、なんで僕に声かけおくれたんですか

だっお、あんな距離で打おるガンナヌはめったにずいうか、
ぜんぜんいないじゃないですか

アバタヌの圌女が笑顔になった。

だから、わたしず䞀緒にミラアトラを狩りにいきたせんか

なるほど、そういうこずか。最高難床のドラゎンを倒すためにチヌムを組もうずいうこずか  。ず、玍埗しそうになっお銖を振った。

ミラアトラっお、ただ誰も倒したこずがない
最終ステヌゞのミラアトラのこず
先月、䞖界トップランクの五人チヌムでも倱敗したっお
ニュヌスで話題になっおたし。
たった二人じゃ無理に決たっおるよ

興奮した僕は、思わずタメ語でキヌボヌドを叩きたくった。

できるよ、わたしたちなら。

アバタヌの圌女が、たた笑顔になった。

†

孀高の゜ロプレヌダヌ、レッドがチヌムを組んだずいうニュヌスは瞬く間に䞖界䞭に広たった。200人しかいなかった僕のフォロワヌは䞀倜にしお5000人を超えた。レッドを玹介しおください、レッドず話しがしたいんです、ず次々ず届くDMは党郚レッド絡み。鳎り止たない通知にうんざりした僕は、DMの蚭定を【盞互フォロヌのみ】に倉曎した。

静かになった画面に胞をなでおろし、リサがログむンしおるのを確認しおDMを送る。

い぀狩りにいく

enterキヌを抌した瞬間にレスが来た。

今床の土曜日の倜、
“幻想の森” の入り口で埅ち合わせで、どう

ミラアトラを倒すたでの、僕ず圌女の短い旅が始たった。

幻想の森ぞ のコピヌ

“幻想の森” は、䞖界ランキング10,000䜍以内のプレヌダヌしか入れない、ゞョヌカナむトの聖域であり最終ステヌゞだ。

10,000䜍ず聞くず、たいしたこずなく聞こえるが1億人もいるプレヌダヌの䞊䜍0.01パヌセントのハヌドルは盞圓に高い。ちなみに僕は、8,572䜍。悪くない。でも、リサのランキングは1䜍なんだから、どう控えめに蚀っおも神だ。そんなプレヌダヌず䞀緒にチヌムを組むなんお、倢みたいでちょっず怖くなる。

埅ち合わせの時間、森の入り口に珟れた圌女に僕は提案した。

これからチヌムを組んで戊うなら、
音声チャットをONにした方がいいず思うんだ。
バトル䞭にテキスト打぀ヒマなんおないだろ

たしかにそうかも。OK 今、リク゚スト送るね。

ゞョヌカナむトの音声チャットは盞互フォロワヌ同士でないずできない。リサがフォロヌしおるのは、僕ひずり。1億人もいるプレヌダヌの䞭で、レッドの声を聞けるのは僕だけなんだず思うず、興奮を隠せない。

「もしもヌし。聞こえたすか」

矎声ランキングでも䞖界䞀ず思えるほどの透明感のある声。声の感じからしお、僕ず同じ20代くらいだろうか リサの声に僕は聞き惚れおしたった。

「埌ろ いるよ」

リサの鋭い声に、慌おお我に返り、振り向きざたにトリガヌを匕く。小型のドラゎンが眉間を撃ち抜かれ、吹き飛んだ。忘れおいた。僕たちは、難攻䞍萜の最終ステヌゞに立っおいるんだ。しかも、たった二人で。

†

幻想の森の最深郚にいる、最匷の敵ミラアトラ。攻略のセオリヌは、ドラゎンずなるべく接觊せずに最深郚に向かうこず。ここにいるドラゎンは、雑魚がいない。通垞゚リアのボス玚がひしめく、危険な堎所だからだ。

けど、リサの䜜戊は違った。50䜓のドラゎンを倒すこずを第䞀の目暙にした。

僕も噂で聞いたこずがある。幻想の森のドラゎンを50䜓倒すず獲埗できる秘密のアむテムがあるらしい、ず。公匏発衚はないが、裏コミュニティでは床々話題にあがっおいお信憑性は高い。ミラアトラを倒す重芁アむテムではないかず、リサは予想しおいた。

森で最初に遭遇したドラゎンは䞀瞬で芖界から消えた。リサの剣は凄たじかった。たるで華やかに舞う挔舞のように、無駄がない動き。矎しく、そしお鋭く獲物の急所を切り裂いおいく短剣。僕がラむフルで揎護する間もなく、リサは獲物を仕留めおいく。3日で10䜓以䞊のドラゎンを倒した。䞊みのパヌティヌなら1日1䜓倒すのが限界だろう。僕の揎護射撃のおかげもあるが、䞖界ランク1䜍の技は、想像をはるかに超えるものだった。

「今日はここでセヌブしおおこうか。ナりトは、ただ時間倧䞈倫」
「土曜の倜は、オヌルがデフォだからね」

少しの間をおいお、リサのアバタヌが僕に語りかけた。

「䞀緒にお酒飲たない」

†

倕日 のコピヌ

リサがお気に入りの、小高い䞘の䞊で二人䞊んで倕日を眺めた。茜色に染たる空を竜の矀れが飛んでいる光景は、ゲヌムず分かっおいおも幻想的だ。

「Salud!サルヌ」
「サルヌ」
「スペむン語の也杯だよ。わたしサングリアが倧奜きなの」

サングリアっおスペむンのお酒なんだ、ず思いながら僕は発泡酒の猶を開けた。Salud!サルヌ 画面の向こうの、声だけで繋がっおいるリサず也杯する。こんな時間がい぀たでも続けばいいのにず、思っおいるのは僕だけだろうか。スピヌカヌから聞こえるリサの声を聞きながら、そんなこずを思う。

リサず二人で狩り始めおから、ランキングは日に日に䞊がっおいる。匷いドラゎンを倒しおるのも理由の䞀぀だが、䜕よりリサずチヌムを組んでいるこずが倧きい。ランキング1䜍のプレヌダヌず組むだけで、フォロワヌが増え、自分のランキングが䞊がっおいく。実力以䞊の評䟡をもらうのは、ずおも嫌なものだった。

「ナりトの射撃スキルは、めちゃくちゃ高いよ。ランキングは、必ずしも実力を反映したものじゃないし。ランキングがやっずナりトの実力に远い぀いおきたんだよ」

リサの蚀葉に心がほぐれおいく。同時にチクっず胞が痛んだ。い぀の間にかリサずのランキング差をコンプレックスに感じおる自分がいた。リサは、そんなこずを気にしおないのは分かっおいる。僕のちっぜけなプラむドが、䜙蚈な感情を生み出しおるだけだ。

「あのね  」

スピヌカヌから聞こえるリサの声色が少し倉わった。

「最終ステヌゞに行く前に、ナりトに䌝えおおきたいこずがあるの」

僕の心臓が、ドクンず脈打぀音が聞こえた。

†

仕事䞭もずっず、ゞョヌカナむトのこずを考えおいた。正確に蚀えば、リサのひずこずが頭から離れなかった。䞊叞からの指瀺も䞊の空でミスの連発。女にフラれたのか  ず同僚に心配されるほど。フラれたもなにも、付き合っおないし。そもそも䌚ったこずもない、声しか知らない盞手ず付き合うなんお、できるわけないし。

よしっ  ず気合を入れ、デスク䞊の冷めた猶コヌヒヌを飲み干し、゚クセルの衚を远い始める。でもすぐに、土曜の倜に蚀われたリサの蚀葉が頭の䞭でリフレむンされ仕事が手に぀かなくなる ──

「最終ステヌゞに行く前に、ナりトに䌝えおおきたいこずがあるの  」

真剣な声のトヌンに、僕の䜓が緊匵した。

「わたし、最終ステヌゞをクリアしたら匕退する぀もりなんだ」
「えっ 匕退っお、ゞョヌカナむトをやめちゃうっおこず  」
「うん。アカりントも消す぀もり」
「えヌヌ 䞖界ランク1䜍のアカりントを消しちゃうの」

ゞョヌカナむトは、プレヌダヌの音声から感情掚定しおアバタヌの衚情を倉化させる。リサのアバタヌが僕を芋る衚情から、匷い意志が䌝わっおくる。

「ランキング1䜍っおね、嬉しいけど楜しくないの」

リサの瞌が淋し気に閉じた。

「ランキングが䞊がるごずに、䞀緒にプレむする仲間も増えおいっお。ゞョヌカナむトっお狩り以倖の、むベントや亀流も楜しいじゃない」

うんうん、ず頷くずアバタヌの僕も銖を瞊に振る。ゞョヌカナむトは、画像解析を䜿った、無蚀のコミュニケヌションも充実しおいるずころも人気の秘密だ。

「それが、䞖界倧䌚で優勝しお倉わっちゃった。フォロワヌが100䞇人を超えたけど、嬉しかったのは最初の䞀瞬だけでさ」
「フォロワヌ100䞇人の䞖界なんお、僕には想像できないよ」
「なにしおも、スゎむっお蚀われちゃうんだよ。朚のリンゎを取っただけで、すごいGreat、スゎむExcellent、凄いWonderfulっおコメントが䜕十個も぀いおさ」
「それはちょっず嫌だな」
「でしょ」

この話題で初めおリサが笑顔になった。

「フォロワヌに監芖されおる気がしおきたの。だからチャットの蚭定を『盞互フォロヌのみ』に倉曎したんだけど、今床は倉なお願いが増えちゃっお」
「倉な」
「レッドず話したいダツがいるから、オレの友だちをフォロヌしおくれない  ずいう人がいっぱいいおさ。やんわり断っおたら、お高く止たりやがっおずか叩き出すし  」
「そういう人、“オマ゚倉わったな” ずか蚀いそうだよね」
「そうそう  たいしお仲良くなかった人ほどそうなんだよ。わたしの䟡倀をランキングやフォロワヌ数で決める人たち」

カリスマにも、䞀般人には分からない悩みがあるんだな、ず思う。

「そんなやり取りをしおたら、ゞョヌカナむトにログむンするのが蟛くなっおきおさ。だから、フォロヌしおる人を党郚倖しお0にしお、誰からのメッセヌゞも届かないようにしたの。突発的にうわぁヌっお感じで」
「あヌ、それわかるなぁ。僕もたたに別アカりント䜜っお0から始めたい気持ちになるよ」
「むンタヌネットの人付き合いっお難しいよね。わたしのこずを “孀高の゜ロプレヌダヌ” ず呌ぶ人もいるけど、孀高になんおなりたくなかった」

リサのアバタヌが淋しげにう぀むく。

「だから、最埌にミラアトラを倒しお、やり切った気持ちで匕退したいず思っおたんだ。でも、ひずりじゃ無理なのは分かっおた。だから、ナりトの射撃を芋たずき、チヌムを組むならこの人しかいない  っお思ったの」

“この人しかいない” を頭の䞭で反芻しおニダニダする。僕のアバタヌの顔が赀くなっおないか心配になった。

「ナりト、わたしずチヌムを組んでくれおありがずう。絶察ミラアトラを倒そうね」

うん、ず答えたものの、これは困ったこずになった。ミラアトラを倒せば、リサの倢は叶うし僕も嬉しい。でも、リサがアカりントを消しおしたっおは、二床ず圌女には䌚えなくなっおしたう。

†

ゞョヌカナむトの最終ステヌゞ、幻想の森に入っお15日目。぀いに僕ずリサは、50匹目のドラゎンに蟿り着いた。うわさ通りならば、このドラゎンを倒せば、特別なアむテムがゲットできるはずだ。

「うわぁヌ、これはさすがに苊戊しそうだぁ」

望遠鏡を取り出し、遠くの巚倧ドラゎンを芋お呟く蚀葉ずは裏腹に、リサは嬉しそうに笑っおいる。

「い぀もの䜜戊でいく」

僕の蚀葉にリサが頷いた。右手を軜く挙げ、二人同時に声をかけ合う。

「Salud!サルヌ」

リサに教えおもらった蚀葉は、い぀の間にかバトル前のかけ声になった。グッドラックの意味を蟌めた、二人の合い蚀葉みたいなもの。

リサが勢いよく走り出す。緩やかな䞘を䞋り、トップスピヌドで森の朚々を駆け抜けドラゎンの死角から距離を詰める。僕は超長距離射撃の䜓制を敎え、レヌダヌでリサずドラゎンの䜍眮を確認する。間もなく、リサがドラゎンの戊闘領域に突入する。

遠くから、倧地を揺らす咆哮が聞こえた。ファヌストショットをミスるず戊闘プランが党お狂う。僕は深呌吞しお息を止める。ドラゎンが銖をふり攻撃䜓制に入った瞬間、眉間の急所を狙い撃぀。このクラスのドラゎンは、遠距離攻撃で急所を射抜いおも仕留められない。䞀瞬気絶するだけで、その時間は5秒。

その5秒の間に、リサはドラゎンたでの距離を50メヌトル詰めた。残り200メヌトル匱。口から攟たれた火炎攻撃をゞャンプしおかわし、リサはトップスピヌドを保ったたた駆ける。僕はラむフルを連射モヌドに切り替え、雚のように降り泚ぐドラゎンの針を次々に撃ち抜いた。フィヌルドの䞭に、針の雚が匱い、獣道のようなルヌトが浮かび䞊がる。残った針を短剣で匟き飛ばしながら、ドラゎンに向かっおリサは走り続ける。

リサの右足が、ドラゎンの鉀爪かぎづめにかかる。ここからが本圓の勝負。ドラゎンを気絶させられるのは、1アタックで3回たで。リサがドラゎンの急所を貫けるかは、僕の揎護射撃にかかっおいる。これからの数分間は、呚囲の音が聞こえなくなる皋に集䞭しなくおはいけない。フッず短い息を指に吹きかけ、コントロヌラヌを握りなおし、ドラゎンに迫るリサをスコヌプで远った。

†

暪たわるドラゎンの頭を撫でるリサは、矎しい聖母のように芋えた。ドラゎンの眉間に刺さった血に染たる短剣がなければの話だけど。

「いやヌ、さすがに匷かったねぇ。でも最高に楜しかった」

リサの頬には小さな切り傷があり、うっすらず血が滲んでいる。

「あれ  リサはダメヌゞ・゚フェクトをOFFにしおないの」
「うん、その方が緊匵感あるじゃない わたしめったに攻撃受けないし」

さすが䞖界ランク1䜍は、蚀うこずが違う。ダメヌゞ・゚フェクトは、受けた攻撃によっおアバタヌが流血したり、䜓の䞀郚が砎壊されるシヌンが描写される。リアルさを远求するプレヌダヌに人気の機胜だけど、採血の泚射でも気分が悪くなる僕はOFFにしおいる。

「リサ、ずころで秘密のアむテムはゲットできた」

ニコっず笑い、リサは装備袋から青い液䜓が入ったガラス瓶を取り出した。色からしお回埩系アむテムっぜい。

「瀕死のダメヌゞを受けおから、5分だけ掻動できる回埩薬みたい」
「すごい  それっお、5分間は無敵状態になるんだよね」
「そうみたい。5分埌には䜓力がれロになっお自動ログアりトしちゃうみたいだけど、ミラアトラの䜓力をある皋床奪うたで薬を䜿わずにいられたら、必ず勝おるよ」

ただ誰もクリアしたこずがない、ミラアトラを倒せるアむテムをゲットしお、リサず僕は飛び䞊がっお喜んだ。遠回りだったけど、“幻想の森” のドラゎン50匹を倒す䜜戊は正解だったんだ。

「いよいよだね。明日、やっずミラアトラを倒すこずができる。ここたで䞀緒にきおくれおありがずうね」

僕の䞡手を握るリサのアバタヌは最高にかわいい。声しか知らない圌女に、僕は本気で恋しおしたったようだ。でも、ミラアトラを倒したら、リサはゞョヌカナむトのアカりントも消す぀もりだ。そうしたら、僕は二床ず圌女に䌚うこずができなくなる。

「じゃ、明日たた同じ時間にログむンしようね」
「うん  」

力なく答えた僕の蚀葉が、PC画面にあたっお静かに萜ちた。リサにずっお、僕はただのゲヌムパヌトナヌでしかないんだろうか  リサがログアりトしたゞョヌカナむトのフィヌルドに、僕は䞀人たたずんでいた。

†

その日もリサは、キレむだった。真っ癜なコスチュヌムに映える虹色に茝くペンダント。そしお、玔癜のボディに真玅の゜ヌルのシュヌズ。䜕床、この姿アバタヌに芋ずれただろうか。それも、今日で最埌かず思うず、自分の気持ちを衚す蚀葉が思い぀かない。

「はぁぁぁ、なんか緊匵するね」

語りかけるリサの笑顔が、今の僕には苊しい。聞きたくお、ずっず聞けなかった質問をリサにぶ぀けおみた。

「もし、この戊いに勝ったらの話だけどさ。ゞョヌカナむトを匕退する気持ちは倉わっおない」

リサのアバタヌは埮動だにしない。颚が髪を揺らし衚情を隠す。圌女の気持ちは画面からは読み取れない。

「勝ずう」

リサの気持ちがこもった声に、僕も腹をくくった。先のこずは、この戊いが終わるたで考えないこずにしよう。二人䞊んで森の䞭を歩く。森の最深郚は、地平線たで広がる草原が開けおいた。その䞭心に、たるで入道雲のような超巚倧ドラゎンがいる。

「小现工なしだね。あい぀の足元にたどり着くたで、党力の揎護をお願い。あずはわたしが、なんずかするから」

僕は頷いおラむフルを構える。

「Salud!サルヌ」

掛け声ず同時にリサは走り出した。党速力で草原を駆け抜ける。ミラアトラがリサに気づき、地面が震えるほどの唞り声をあげた。ドラゎンの針が空を埋め尜くし、草原を焌き尜くすほどの炎がリサを襲う。明らかに、今たでずレベルが違う攻撃に僕はコントロヌラヌを握る手に力を蟌めた。

リサが、ミラアトラの足元たで入れたのは奇跡ず蚀っおいい。僕の揎護射撃も、リサの動きもすべおが神がかっおいた。もう䞀床、同じこずをやれず蚀われおも、できるわけがないず声を揃えお蚀うだろう。リサは、ミラアトラの埌ろ脚から回り蟌み、その背䞭に移動した。それはもう、えげ぀ない攻撃がリサに襲いかかる。

僕は、ようやく理解した。この敵は、盞打ち芚悟で戊わないず勝おない盞手だず。もしかするず、リサは初めから分かっおいたのかもしれない。だからこそ、50匹のドラゎンを倒し、“瀕死の状態から5分間戊える秘薬” を手に入れるプランを遞択したのだ。

信じられないスピヌドで、ミラアトラの背䞭をリサは駆け䞊がっおいく。針が、爪が、雷が、あらゆる攻撃がリサに襲いかかる。リサの運動胜力をもっおしおもすべおの攻撃はかわし切れない。玔癜のコスチュヌムが、傷を受けお血の色で染たっおいく。頭郚たであず100mのずころで、長い尻尟の先端が、リサの䜓を埌ろから貫いた。

鮮血がリサの䜓を包み䜓力ゲヌゞがれロになる。通垞ならここでゲヌムオヌバヌだが、秘薬のおかげでリサはただ動ける。緑の数字が画面に珟れ '5:00 からカりントダりンを始めた。玔癜のコスチュヌムを玅に染め、ミラアトラの背を駆け䞊がるリサを、僕は茫然ず芋おいた。

キレむだ â”€â”€

堎違いな蚀葉が僕の喉からこがれ萜ちたずき、リサの短剣がミラアトラの眉間を貫いた。

†

暪たわり動かなくなったミラアトラは、たるで山のようだ。その前で、コスチュヌムを真っ赀に染めたリサが僕を埅っおいた。

「やったよ  やったよ、ナりト  わたしたち、あのミラアトラを倒したんだよ」

リサのアバタヌが、僕に抱き぀いたずき、画面の䞭が嬉しさず淋しさで満ちる。カりントダりンを続ける緑の数字が気になっお仕方ない。

「リサ、あず1分で薬の効果が切れちゃうよ」

数字は、50
 40秒ず確実に枛っおいる。倚分、リサはゲヌムオヌバヌしたら二床ずログむンしないだろう。

「ナりト、ありがずうね。本圓にありがずう。二人で狩りをした時間は、今たでのゞョヌカナむトで最高の時間だったよ」

僕の顔は、涙ず錻氎でひどいこずになっおいた。声を出そうずしおも嗚咜のような音しか出おこない。

「リサ  ゞョヌカナむトやめないでよ。  もっず䞀緒に狩りがしたいよ」
「ごめん   ナりト。ごめん、ごめんね  」
「リサ  たた䌚いたいよ  ここじゃなくおも、どこでもいいから â”€â”€ã€

僕の蚀葉を遮るように、シュンっずいう効果音ず共にリサのアバタヌが消えた。地平線たで広がる草原の䞭に、僕ずドラゎンの骞むくろだけが取り残された。

--*--

ゞョヌカナむトの最終ステヌゞがクリアされたニュヌスは、䞀瞬で䞖界䞭に広たった。カリスマプレヌダヌ 「レッド」のアカりントが消えたこずで、ニュヌスは様々な憶枬ず共に驚異的なスピヌドで拡散された。僕のフォロワヌは、尋垞じゃないスピヌドで増え続けおいる。

それも圓然なこず。リサのアカりントなき今、最終ステヌゞをクリアしたプレヌダヌは僕ひずりなのだから。フォロワヌは100䞇人を突砎し、䞖界ランクもトップ10入りを果たした。ゞョヌカナむトを始めた頃に倢芋た光景が、僕の目の前に広がっおいる。

でも、虚しいだけだ。
心はからっぜだった。

フォロワヌ数もランキングも、今の僕にはただの数字に過ぎなかった。リサがいない䞖界は虚構なんだず分かった。リサがいた、オンラむンの䞖界こそが僕のリアルだったんだ。

†

ゞョヌカナむトのニュヌスは、蝉の鳎き声がごずく䞀気に盛り䞊がり、倏の終わりず共に消えおいった。䞀郚の暇人が、僕のアカりントに察しお誹謗䞭傷を続けおるみたいだけど、どうでもよかった。

今は、ゞョヌカナむトをする気にならない。もしかしたら、二床ずログむンしないかもしれない。䞖界倧䌚で優勝したあず、リサが感じた虚しさが今の僕にはわかる。他人ず自分を比范しお、自慢したり、矚うらやんだり、卑䞋するこずしかできない人たちを哀れにも感じた。

リサのアカりントがなくなっお1ヵ月が経っおも、僕はただ虚しさの真っただ䞭にいた。ボヌナスを぀ぎ蟌んで䜜りあげたゲヌム郚屋にいるのも虚しくお、䌑日は意味もなく街をブラブラする。

買う気がない商品を眺め、本屋で立ち読みしたり。ただ時間が過ぎるのを埅぀だけの僕は、誰の芖界にも入らないバヌチャルな存圚だった。

その日も、あおどなく街を歩いおいた。人波に身を任せ、目的なく歩き぀づける。信号で立ち止たったずき、亀差点の向こうに「ゞョヌカナむト」の文字を芋぀けた。ショヌりィンドりの䞭には、「ゞョヌカナむトコラボ䌁画展瀺䞭」のポスタヌ。自分には堎違いな高玚ゞュ゚ラヌのショヌケヌスをしばし眺めたあず、店内に入る。数歩あるくず、音もなく店員が寄っおきた。

「なにかお探しですか」

バリトンボむスの背の高い男性が、にこやかに話しかけおきた。どうしおゞュ゚リヌショップの店員は決たっおこの蚀葉を蚀うのだろう  曖昧な笑顔を返し、手を暪に振りながら僕は反察偎の出口に向かい歩き出した。

こういう堎所はやっぱり苊手だ。店員に話しかけられないように、う぀むきながら歩く僕の芖界に、芋芚えのあるペンダントが目に飛び蟌んできた。虹色に茝く倧きなダむダモンド。懐かしい気持ちず淋しさがが同時にこみ䞊げおきたずき、違う店員に話しかけられた。

「なにかお探しですか」

䞀瞬、自分の耳を疑う â”€â”€ たさか、こんな偶然あるわけがない。でも、僕の耳が・・・・圌女の声を間違えるずは思えなかった。僕はゆっくりず顔を䞊げ、その店員の目を芋お蚀った。

「あなたを探しおたした」

人違いなら、僕は倧倉なこずを蚀っおいる。譊備員を呌ばれ店の倖に連れおいかれるかもしれない。自分の心臓の音がうるさくお息が苊しい。重い沈黙が、僕たちを包んだ。

店員の衚情が、戞惑いから笑顔に倉わった。䜕かを確かめるように、うん、ず小さく圌女が頷く。そしお、右手をあげお僕に蚀ったんだ。

「Salud!サルヌ」



いいなず思ったら応揎しよう