はじめてのはちのこ
表題画像は当時のものではありません。
【幼虫、蛹を食する内容なので、苦手な方はご注意下さい。】
パートナーの実家に帰省した。初めてのお盆休み。
彼のおじいさんが「仲間から地蜂の巣を分けてもらった」と言って、持って帰ってきた。
その後、おじいさんとお義父さんは、寄り合いか何かで出かけてしまった。
お義母さんも「留守番、お願いね」と気を利かせてくれたのか、畑に行ってしまった。
家の中に残されたのは、私とパートナー。
そして、地蜂の巣。
私は、外で昆虫や爬虫類を観察するのは大好きだ。
けれど、家の中で、しかもまだ生きている幼虫や蛹となると、話は別だ。
袋の外から見ても、かなりグロテスクというか…未知すぎて怖い。
これ、どうするの?とパートナーに訊くと、穴から中身をとり出して食べるのだと言う。
お湯にでも入れて振り落とすのだろうか?
パートナーがゲンナリした顔付きで「ひとつずつ、ひっぱり出すんだよ」
無理無理無理…!
完全にドン引きしていた。
ところが気温のせいか、袋の中だからか、蛹は蠢いたり、外側の殻を破いて出てきそうにしている。
幼虫は次々と巣の外へこぼれ落ちていく。

袋を見ていた私は、もう気になって仕方がない。
パートナーは、私があれこれ訊き始めた時点で
「気にしなくていいよ」
「じいちゃんが戻ってきたらやってくれるよ」
と、最初は気を紛らわせようとしてくれているようだった。
でも、もし羽化し始めたらきっと大変な事になるね。と話している間にも、蛹から出ようとしているのか、動きが大きくなっていく。
その様子を見て、ふたりでなんとかしようということになり、ピンセットと割り箸を準備した。
念のため、部屋から広縁へ移動して作業を開始した。
ピンセットでそっと摘んでボウルの中へ…。
繰り返すうちに徐々に慣れてきた。
少しすると全く平気になってきたが、たまに雑に引っ張るとプチュっと。
オェッ!気持ちわるっ!やっぱりダメ!
でも手を止めれば羽化が…!止めるわけにはいかない。
どれくらい、ひっぱり出しただろうか。
無心になってさらに作業を続ける。
またプチ!もう何も感じない。
この頃になると、ピンセットだけだと破けやすい事がわかり、補助的に指で押さえたりしていた。
破けると、指に白っぽいトロリとした液体がつく。
鼻を近づけると酸っぱい、いい香りがして、ついペロリ…。
あ、これ、知ってる!懐かしい秘密の味。
それは、私がまだ小学生くらいの頃。
母が綺麗な小瓶から小さなスプーンで何かをすくって舐めていた。
なんだか秘密めいていて、とても気になっていた。
ある時、母が留守にしているすきに、こっそり味見をした。
ピリッとした酸味が喉まで広がり、染み込んでいくような。
そう、ローヤルゼリー!
はちのこ=ローヤルゼリーに似た味?
これは絶対、美容にいい!
そう思うと、その後は楽しくなってきて、潰れたら舐めちゃえばいいや、くらいの気持ちでどんどんひっぱり出していく。
巣は空っぽになった。
ステンレスのボウルの中に幼虫、蛹、黒っぽくて羽も体も縮こまった状態の個体が入り乱れている。
この黒っぽくて丸まっているのが、今にも飛び始めるのじゃないかと思うと、落ち着かない。
パートナーにどうやって食べるのか聞いてみると
「たぶん、炒めて、そばつゆか何かで煮て、みたらし団子みたいな味にするんだよ。」
との事。
ん…甘辛味の炒め煮って事かな?
思ったより簡単そうだ。
飛び始めたら怖いから、料理しちゃおう。
そう思って開始した。
炒りつけて、お皿に盛りつけると、違和感が増す。
あるべき姿ではないから、なのかもしれない。
無事にやり遂げて、まずは仏壇にお供えした。
みんなが揃うまでは、お預け。
でも楊枝でチマチマ味見がてら、ふたりで乾杯。
甘じょっぱくて、お義母さんお手製の梅酒によく合った。
初めてのはちのこ。見かけによらず美味しかった。
さて次に帰省したときには何が……。
