孟子とは?性善説を説いた思想家の生涯・名言・王道政治をやさしく解説
はるかです。孟子とは、紀元前4世紀ごろの中国・戦国時代に生きた思想家です。人は生まれつき善に向かう心を持つという性善説を説き、儒家の祖である孔子の教えを受け継いで発展させた人物として知られています。
人に裏切られて「結局みんな自分が一番かわいいんだ」と思い込んでいた時期に、たまたま手に取ったのがこの人の言葉でした。読み終えて、性善説をそのまま信じたわけではないけれど、人を見る目が少しやわらかくなった気がしています。
孟子は紀元前372年ごろに生まれ、前289年ごろに没したとされています(諸説あり)。名は軻(か)、現在の山東省にあたる鄒(すう)の出身です。
学んだ相手: 孔子の孫にあたる子思の門人に師事し、儒家の教えを受け継いだ
孟母三遷: 幼い孟子の教育のため、母が墓地の近く・市場の近く・学校の近くへと2度住まいを移したという逸話が伝わる
遊説の日々: 弟子を連れて梁の恵王や斉の宣王のもとを訪ね、仁義にもとづく政治を説いて回った
斉での立場: 多くの学者を集めた斉に仕官したが、俸給を受けて論じるだけの「稷下の学士」と同列に扱われることは拒み、王の師としての待遇を求めたと伝わる
晩年: どの国にも本格的に採用されず、郷里に戻って弟子の教育と著述に専念した
母が環境を変えてでも子を育てようとした逸話を知ったとき、環境が人をつくるという当たり前のことを、あらためて重く受け取りました。何十年もかけて各地を回り、それでも聞き入れられずに郷里へ戻った晩年を思うと、正しさを説き続けることの孤独さも伝わってきます。
性善説は、人は生まれつき善に向かう心の芽を持っているという考え方です。「生まれつき完成された善人」という意味ではありません。
惻隠の心: 他人の苦しみを見過ごせない心。仁の芽
羞悪の心: 不正や恥を憎む心。義の芽
辞譲の心: 人に譲る心。礼の芽
是非の心: 善悪を判断する心。智の芽
この四つを「四端」と呼び、育てなければしぼんでしまう芽だと孟子は考えました。同じ時代には人の本性を悪と見る性悪説も現れており、二人の主張は正反対に見えます。
ただ、どちらも「学びと努力で人は変われる」という点では一致しているのだと知り、対立の構図だけで見ていた自分を少し反省しました。人を信じきれなくなっていた自分にとって、善は完成品ではなく育てるものだという発想は、意外なほど気持ちを軽くしてくれました。
孟子が説いた王道政治は、仁義にもとづいて民を治める政治のあり方です。力や策略で従わせる覇道と対比されます。
王道: 君主が民の暮らしを思いやり、信頼によって国をまとめる統治
覇道: 武力や策略、利害の駆け引きで諸国を従わせる統治
孟子の主張: 戦国の世で覇道が主流の中、あえて王道こそ長く続く政治だと説き続けた
理想論に聞こえるかもしれませんが、人間関係に置き換えると腑に落ちました。力で押さえつけた関係は長続きせず、結局は信頼した相手にしか本音を渡せないという実感があったからです。
原文と背景を知ると、名言の重みがぐっと増します。
五十歩百歩: 戦場で百歩逃げた者を、五十歩逃げた者が臆病だと笑う矛盾のたとえ。梁の恵王との問答から生まれた
大丈夫(たいじょうふ): 「富貴も淫する能わず、貧賤も移す能わず、威武も屈する能わず」。地位や貧しさ、権力に流されない生き方を指す言葉
浩然の気: 外からの誘惑や圧力に負けない、まっすぐで満ちた気概のこと
特に「大丈夫」の一節は、周りの評価に振り回されて自分を見失いかけていたころ、何度も読み返した言葉です。
孟子は孔子の思想を継いだ儒家の一人ですが、『論語』とは成り立ちが少し違います。
論語: 孔子と弟子たちの言行を、死後に弟子がまとめた語録
孟子: 孟子自身と弟子・諸侯との問答を記した書物で、孟子の生前から編まれ始めたとされる
四書: 後世、南宋の朱熹が『論語』『孟子』『大学』『中庸』をまとめて儒学の基本テキストとした
読める版: 岩波文庫『孟子』(小林勝人訳注、上下巻)は原文・書き下し文・現代語訳がそろっている
孔子の言葉が短く断片的なのに対し、孟子は相手を説き伏せる長い問答が多く、読み物としての勢いがあると感じました。
孟子について、要点を整理します。
紀元前4世紀の思想家で、孔子の教えを継ぎ、人は善に向かう心の芽を持つという性善説を説いた
四端(惻隠・羞悪・辞譲・是非)を育てることを説き、政治では武力による覇道でなく仁義による王道を理想とした
『論語』『孟子』『大学』『中庸』は四書としてまとめられ、儒学の基本テキストになっている
人を信じられない気持ちを抱えたまま読んだ孟子の言葉は、答えをくれたわけではありませんが、「育てればいい」という視点をくれました。岩波文庫の小林勝人訳注は原文・書き下し文・現代語訳が並んでいて、気になった一節をゆっくり確かめながら読み進められます。
気になった方は、手元に置いて少しずつ読んでみてください。
