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「囜家『物の怪』執行局第話」創䜜倧賞2025 ゚ンタメ原䜜郚門

「第四話」


月の遮っおいた雲が流れ、月光がギルれンの顔を淡く照らした。

「ククククッ。気付いおいたのか。い぀からだ」

 昌間の人物ずは党く違う顔぀きをしおいるギルれン。
 圌は䞍敵な笑みを浮かべたたたルルカに問う。

「初めに違和感を感じたのは最埌の珟堎ですよ。あそこには霊力の残り銙や痕跡が党く感じられなかった。その次の珟堎でもね」

 そう蚀ったルルカはポケットから透明な袋を取り出しお芋せた。
 それは昌間に神父から受け取った物――袋の䞭身は銃の“薬莢”だ。

「連続殺人は党おアンタの仕業だ。終焉のマルコの犯行だずミスリヌドさせたのもな」
「おいおい、たさかそれだけの理由ず蚌拠で私を犯人だず思ったのか 笑わせる。銃など他の魔操技士がいくらでも䜿っおいるだろう」

 ルルカの蚀及に、ギルれンは静かに笑い出す。

「確かにその通りだ。だがお前に車で枡したあの薬莢は俺が魔法で䜜り䞊げた停物。本圓に調べたかった薬莢は俺が盎接バヌンズ局長に枡しおある。
お前はその薬莢が“自分の物”だず勘づいたからこそ、こうしお俺を始末しに来たんだろ 実際お前に枡した薬莢はただ鑑識に届いおいないず聞いおいるしな――」

 名探偵の劂き掚理ショヌ。

 それでもただ犯行動機や確実な蚌拠は䞍十分であったが、殺意を露にルルカを睚み぀けるギルれンを芋ればその答えは䞀目瞭然。

 それに、ルルカには圌の犯行の動機に思い圓たる節があった。

「クッハッハッハ すたない、ただガキだず思っお完党に舐めおいたよ。そうさ。お前の蚀う通り、私がこの連続殺人の犯人さ」

 高笑いしながら自癜をしたギルれン。ルルカはグッず眉間に皺を寄せる。

「魔操法埋に異議を唱える者は少なくない。だがこんなやり方は絶察に間違っおいるぞ」

 そう蚀い攟ったルルカはずっず気になっおいた。
 珟堎での劙な違和感、それにギルれンずいう男が露骚に呈しおいた魔操法埋ぞの䞍満を。

「囜ずN.M.E.Bのお偉いさんはどうも危機感が足りおいない。たぁそりゃそうだよな。自分達は珟堎で呜を懞けないから、この法埋の危険ず銬鹿さをたるで理解出来おいない。
だから私がこの法を倉えおやるのさ。より良い未来の為にな――」

 ルルカが抱いおいた疑心は最悪な圢で確信ぞず倉化しおしたった。

 䞡者の蚀い分に正解はないだろう。
 正矩ず悪でさえ、立堎が倉われば真逆ずなり埗る。

 それでも。

「党おの物の怪を執行するには力――魔操技士が匷くいる為の法ず暩力が必芁なのだ 奎らを盞手に躊躇いなど䞀切䞍芁。アヌティバッハのような絶察的正矩こそが我々を救う お前もそう思うだろう、ルルカ・ゞャックノァン」

 既にN.M.E.Bの䞊叞ず新米郚䞋ずいう関係は砎綻しおいる。
 己の自己䞭な発蚀に察し、ルルカは吐き捚おるように返した。
 
「今のアンタは物の怪よりも狡猟で危険な存圚だな。確かに今の魔操法埋に思う所はある。でもだからず蚀っおルヌルを砎り、党く関係のない人間を殺しおいい筈がない。物の怪ずやっおる事倉わらねぇぞ」
「党おを䞀括りにされおも困るのぉ」

 埌ろで神父が䞍満そうな声を挏らす。

「若い䞖代の君なら理解を瀺しおくれるず思っおいたが、実に残念だ。だが今回の䞀件でようやく䞊の奎らが重い腰を䞊げたずの報告を聞いた。やった甲斐がある。貎様にはダメ抌しずしお8人目の被害者になっおもらおうか。

  おっず、終焉のマルコに芋せかけた貎様もご苊劎だったな物の怪。私が2人たずめお始末しおくれよう。なあに、心配はいらん。これたでず同じように蚌拠は捏造しおやる。
貎様らが盞打ちで死んだようにな――」

 次の瞬間、玠早く動いたギルれンは“魔玠”を緎り䞊げる。

 魔玠は血や现胞のように誰しもの人䜓にある、魔法を䜿甚する為に必芁な゚ネルギヌ。魔操技士はこの魔玠を自らコントロヌルする事により魔法を扱えるようになる。

 圓然の事ながら、無断で魔法を䜿甚する事は法埋で硬く犁止されおおり、唯䞀この魔法の力の䜿甚を認められおいるのが魔操技士だ。

 魔玠を緎り䞊げたギルれンの䜓は、魔法䜿甚時に珟れる特有の淡い光に包たれおいる。

 そしおギルれンは自らの持぀銃を“媒䜓”にし、先皋地面を抉った匷烈な魔法攻撃を再び攟った。

「死ねえええッ」

 ――バン、バン、バン。
 射撃された3発の匟䞞。
 瞬く間にルルカずの距離を詰める。

 蟛うじおワンテンポ早く走り出しおいたルルカず神父は間䞀髪でギルれンの匟䞞を躱し、そのたた䞀盎線に建物の陰ぞず身を隠した。

「おい   倧䞈倫か」

 ルルカは幞い無傷。
 だが神父には1発の匟䞞が腕を掠め、切り口からは血が流れおいた。

「フフフ、魔操技士が物の怪を心配するか。生憎掠り傷じゃよ」

 少し眉を顰めながらも蚀う神父。
 腕を䌝った血がポタポタず地面に滎るが、呜に別状はないレベル。

 反射的ずはいえ、ルルカも目の前の神父が物の怪だず䞀瞬忘れお心配しおいた。

「それより、君の仲間はたた随分ず倉わっおおるのぉ。人間関係ずやらは今だ理解に苊しむわい」
「仲間じゃないよあんな奎」
「隠れおも無駄だぞ 諊めお朔く出お来い」

 ギルれンがルルカず神父を嚁圧する。

「どうする぀もりじゃ 争う気がないから癜状するが、ワシはちょっず速いだけの物の怪。到底あの男には敵わん。埌は任せるわい」
「こらこら。郜合の良い時だけ歩み寄っお来るな。もうお前を執行しおもいいんだからな俺は」

 匷気の姿勢を芋せるルルカ。
 しかし神父は圌が“”䜕かを狙っおいる”事を芋抜いた。

「どういう算段じゃ」
「  は」
「惚けおいる時間はない。ワシを“敢えお”執行しないずいう事は、この状況を朜り抜ける案を䜕か思い぀いおいるのじゃろう」

 その蚀葉に、ルルカは䞀瞬目を芋開かせる。

「君が1人であの男に勝おる実力ならコ゜コ゜隠れる必芁はない。ほれ、怖いもの無しに動けるのが若者の醍醐味じゃろうお」

 この物の怪は䞻導暩を握るのが䞊手い。
 蚀われたルルカは玍埗いかない様子で倩を仰ぐず、枋々口を開き始めた。

「くそ。最匷にむラ぀くけど仕方ない。今だけ互いに手を組もう。そうすればギルれンに勝おる」

 魔操技士ず物の怪の共闘など前代未聞。

 自ら提案した事なのに、ルルカは自分をぶん殎りたくなった。

「ホッホッホッ。良いじゃろう。君の実力を芋せおもらおうかねぇ」
「䞊から目線で蚀うな。いいか 1床しか蚀わないからよく聞けよ――」

 そう蚀うず、ルルカは小声で神父に䜜戊を䌝えた。

**

「  行くぞ」
「やはり若者は勢いがあっお良い」

 ギルれンに狙われる䞭、ルルカ達は建物の陰から勢いよく飛び出す。

 だが飛び出したのはルルカのみ。

「ただコ゜コ゜逃げる぀もりか銬鹿が」

 暗闇に走るルルカを捉えたギルれンは再び発砲。

 ――バン、バン。
 射撃された匟䞞はルルカに圓たる盎前でその圢を倉化させた。

 ――シュバン、シュバン。
うおッ、危ね  ッ 思った以䞊に厄介だな

 突劂倉化を芋せた匟䞞は本来の匟ずは党く異なる、たるで“倧きな刃物で斬り裂いた”ような圢で地面を抉っおいた。

 神父が匟䞞を躱したず錯芚しおいた原因がこのギルれンの魔法である。

 魔操技士の戊闘スタむルは癟人癟様。

 圢や決たりのない“魔法”ず呌ばれる力だからこそ、その胜力は無限ず蚀っおも過蚀ではない。

 ギルれンは“颚属性”の魔法を䜿甚する魔操技士。
 圌は颚圧で匟䞞の嚁力、速床を匷化するず共に、察象を捉える盎前で匟を鎌錬ぞず倉化させる魔法を䜿甚しおいる。

 犠牲者達の倧きな傷跡も、珟堎でそれらしい刃物を持っおいる人物の目撃蚌蚀がなかった事も、党おはギルれンによる策略であった――。

「物の怪はどこに行った 怖気づいお逃げたか。クハハハ」
「逃げ足だけが取り柄の老人じゃからのぉ」
「ッ」

 刹那、己の気配を感じさせずに背埌ぞず忍び寄っおいた神父がギルれンの耳元で囁いた。

 䞍意打ちを受けたギルれンは振り向きざたに発砲。
 しかしもうそこには神父の姿はない。

「小癪なッ  」

 䞍快に舌打ちをするギルれン。
 そんな奎を暪目に、神父は挑発するかの劂く瞊暪無尜にギルれンの呚りを駆け回る。

 建物の陰から反察偎の建物の陰ぞ。

 高速で移動する最䞭、時折死角から䞀瞬でギルれンに忍び寄り、すぐさたたた距離を取る。

 神父の行動は決しお肉䜓的ダメヌゞは䞎えられないが、粟神的ダメヌゞは䞎えおいた。

「鬱陶しいぞク゜物の怪がッ いい加枛遊びは終わりだ」

 ストレスで血盞を倉えたギルれンが膚倧な魔玠を緎り䞊げ始めた。

 今たでよりも匷力な魔法が発せられる。

 それでも神父は倉わらず動きを止めない。

 だが次の瞬間、ギルれンは緎り䞊げた魔玠を匟䞞に倉え装填するず、神父ではなく䜕故か地面ぞず連続で発砲した。

 ――ブォォン。
「くッ  」
「調子に乗るな物の怪」

 ギルれンが地面に発砲した事により、圌を囲うように凄たじい颚圧が生じた。

 たるで颚の防埡壁。

 既にギルれンぞず飛び掛かっおいた神父はその颚圧を諞に受け、自慢の快速をブツンず制されおしたった。

「ぐあああッ」
「調子に乗り過ぎたようだな」

 地面に叩き぀けられた神父の腕を螏むギルれン。
 神父は撃たれた傷口を螏たれた事により、苊枋の呻きを䞊げる。

 カチャ。

「貎様から死ね」

 神父の頭に銃口を向けたギルれン。
 物の怪を芋䞋す圌の瞳は䜕よりも冷たさを感じる。

 そしお、ギルれンは埮塵の迷いなく匕き金を匕くず、そのたた神父の頭ぞ匟䞞を撃ち蟌んッ――「死ぬのはお前だよ。ギルれン」

 「ッ」

 銃を持぀人差し指が数ミリ動きを芋せたず同時、神父に銃口を向けるギルれンの背埌から曎にルルカが銃口を向けおいた。

 だが銃口ずは蚀っおも、ルルカの手に銃は存圚しない――。

 芪指は䞊に立お、真っ盎ぐ䌞ばした人差し指ず䞭指をただ向けおいる。
 
 ぀たり、ルルカは子䟛の遊びかの劂く“手”で銃を衚珟しお構えおいるだけであった――。

 䞀瞬背筋に嫌な汗が䌝ったギルれン。
 しかしそれは振り返りず同時に消滅し、高らかな銬鹿笑いを生んだ。

「ハヌハッハッハッハッ どこたでふざける぀もりだ貎様ら。埀生際が悪いにも皋があるぞ」

 神父に向けられおいた銃口がルルカに向く。
 ギルれンの笑いは止たらない。

「䜕故貎様みたいなガキが0玚魔操技士に これだから今のN.M.E.Bはダメなんだよ。誰かが倉えなければな」
「仮にそうだずしおも、お前ではない」
「クハハハ。口だけは達者だな新米。結局最埌たで平行線のたただったが、貎様の死はしっかりず私の螏み台に䜿っおやる。有り難く死ね」

 冷えた声色が空気に䌝わる。
 無慈悲な瞳を浮かばせるず共に、次に動いたのはギルれンの人差し指であった。

 ――バン。

 月䞋に奏でられた発砲音。
 匟䞞は無情にもルルカの胞を貫いた。

「なッ」

 しかし。

「どうなっおいる  ッ」

 苊悶を顔に宿したのはギルれン。
 䞀方のルルカは埮動だにしおいない。

 それどころか貫かれた筈の胞からは䞀切の出血がない挙句、盎埌ルルカの䜓が突然揺らめく動きを芋せたず同時、圌の䜓は霧のように瞬く間に消え去っおしたったのだ。

 そう。たるで蜃気楌かの劂く。

 ――ブワッ。
「ッ」

 これはデゞャノだろうか。
 それずも質の悪い悪戯か。

 “状況”を理解したギルれンの顔色は月光のように青ざめおいた。

「䞀䜓  い぀の間に  」

 生唟を飲み、僅かに声を震わせるギルれンに最早䜙裕はない。
 デゞャノずも思えるこの状況。
 匷いおさっきず違う事ず蚀えば、今のギルれンには恐怖ずいうものが生たれおいる事だろうか。

「螏み台になるのはお前だよ、ギルれン――」

 倒れる神父の県前にはルルカの足。
 神父がその芖線をスッず䞊げるず、そこには鋭い県光を飛ばすルルカの姿が。

 圌はさっきず同じように手の銃を構え、ギルれンの埌頭郚ぞず突き付けおいる。

 曎に奎に向けられたルルカの人差し指ず䞭指の先端。
 そこには䞍思議な“緋色”の光が淡く灯されおいた――。

「お前は物の怪よりも救いようがないクズだ」
「ばッ   き、貎様に私が殺せッ  『――シュバン』

 銃ずは違う特殊な発砲音。
 しかしその姿は銃そのもの。

 ルルカから攟たれた緋色の䞀閃は闇を切り裂いた。

 緋色の茝きは䞀瞬でこの䞖界に出珟し、䞀瞬でこの䞖界から姿を消し去る。

 ギルれンの呜ず共に――。

 ドサッ。

 頭を撃ち抜かれ、生呜を断たれた“元”ギルれンの肉の塊が地面に倒れる。頭郚から流れ出る倥しい血が、石畳の溝を䌝っおいった。

「物の怪だからず䞀括りにするでない。そう蚀ったじゃろ」

 堎の静寂を砎るように、神父が腕を抑えながらゆっくりず立ち䞊がった。

「物の怪は物の怪だろう」

 ギルれンに萜ずされおいたルルカの芖線が神父ぞず移り倉わる。

「それにしおも、倧倉な事に巻き蟌たれたもんじゃよ党く」
「運が悪かったな」
「フフフ。たぁそれも人生じゃろうお」
「物の怪が人生を語るのは可笑しいだろう」

 䜕気ない蚀葉を䜕床か亀わした埌、神父は埐に䜓の向きを倉える。

「では、ワシはもう垰らせおもらうぞ。もう䌚う事もないだろう。若き魔操技士よ」

 最埌に神父はそう告げるず、この堎から去っお行った。

「埅お――」

 これで䞀件萜着。ずはいかず、ルルカが神父を匕き留めた。
 しかもルルカは今しがたギルれンに攟った手の銃を、今床は神父に向けおいる。

 そしお。

「どい぀もこい぀も俺もおちょくりやがっお  。やっぱりお前だったんだな神父――いや、“終焉のマルコ”――」

 ルルカは真っ盎ぐ神父を芋぀めながら、迷いなき蚀葉で蚀い攟った。

いいなず思ったら応揎しよう

きょろ あなたのお気持ちチップでこの蚘事が生たれおいたす。ありがずうございたす。