【にゃんクエマスター限定】笑顔を取り戻すその日まで(ソフィア編)
王都から少し離れた、小さな村。
朝日が山の向こうから顔を出す頃、一軒の家では、今日も少女が忙しく動き回っていた。
「よし、パンも焼けた。」
十五歳の少女、ソフィア。
まだ幼さの残る年齢でありながら、彼女は毎朝誰よりも早く起きる。
洗濯をし、掃除をし、水をくみ、食事を作る。
そして目の見えない妹、クララの世話をする。
「お姉ちゃん、今日もいい匂い。」
「焼きたてだからね。」
ソフィアはクララの手を優しく引き、椅子へ座らせる。
クララが笑うたび、ソフィアも自然と笑顔になった。
恋をしたり、おしゃれを楽しんだり。
そんな年頃なのかもしれない。
けれどソフィアには、そんな時間よりも大切なものがあった。
家族の笑顔だった。
ある日の朝。
村に鐘の音が鳴り響いた。
「湿地帯にバブルスライムが大量発生したぞ!」
村人たちは一斉にざわつく。
毒をもつバブルスライムは畑は荒らし、家畜まで襲われかねない。
自警団は総出で討伐へ向かうことになる。
ソフィアの兄トウと、姉アリスも装備を整えて家を出ようとしていた。
「二、三日は帰れないかもしれない。」
トウが少し申し訳なさそうに言う。
「クララを頼む。」
ソフィアは笑顔で頷いた。
「任せて。二人ともケガだけはしないでね。」
アリスはソフィアの頭を軽く撫でる。
「帰ったら、美味しいご飯作ってね。」
「ふふっ、任せて。」
二人は手を振りながら村をあとにした。
その姿が見えなくなるまで見送るソフィア。
胸の奥に、小さな胸騒ぎが残っていた。
その日の昼過ぎ。
買い物をしていると、一人の青年が道を塞いだ。
立派な服。
高そうな靴。
胸を張った歩き方。
村長の息子、パトリックだった。
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