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横浜アリーナで、長崎ヴェルカは歴史を刻めるか——りそなグループ B.LEAGUE FINALS 2025-26 GAME3 観戦記

プロローグ

Bリーグが10年目を迎えた今季、ファイナルの舞台は例年通り横浜アリーナだ。ただ、「例年通り」という言葉が使えるのは今年が最後になる。来季からの新制度移行に伴い、この場所でファイナルが開かれることは、もうない。

5月26日19時05分。長崎ヴェルカと琉球ゴールデンキングスが、横浜アリーナに決着をつけにくる。

試合前の記者会見で、長崎の馬場雄大はこんな言葉を残している。

「長崎ヴェルカというチームはバスケットボール以上の意味が長崎にある」

今夜、その言葉がコートでどう体現されるかを見届けに行く。


GAME1・GAME2を振り返る

GAME1は琉球が71-69で先勝した。第1クォーターだけで20-9と飛び出した琉球が、長崎の猛追をわずか2点差で振り切った。


GAME2は長崎が66-60で逆襲した。崖っぷちで迎えた一戦、イ・ヒョンジュンが第1クォーターだけで12得点を叩き出しリズムを掴むと、第3クォーターには最大17点差まで広げた。熊谷航が第4クォーター残り約5分半でファウルアウトを喫したものの、長崎はディフェンスの強度を落とさず逃げ切った。


1勝1敗。すべてはGAME3に委ねられた。

今夜、何を見るか

熊谷航は、いつまでコートにいられるか

長崎のディフェンス強度を決める選手が熊谷航だ。
GAME2では第4クォーター残り約5分半でファウルアウトを迎えた。ただあの時点では17点リード、試合はほぼ決まっていた。

問題は今夜だ。接戦になったとき、熊谷がいつまでコートに立っていられるか。「熊谷がいつ退く」ではなく、「熊谷がいつまでいられるか」が、この試合の隠れた分岐点になる。

松本健児リオンと狩俣昌也は横浜アリーナのコートに立っているか

ふたりは、この5年間をずっとそこにいた選手だ。

松本健児リオンは、長崎ヴェルカ創設時のトライアウトを勝ち抜いた契約選手第1号。B3開幕戦からコートに立ち、B2、B1と昇格するたびにそこにいた。「ミスターヴェルカ」と称される所以だ。

狩俣昌也は共同キャプテンとしてB3優勝・B2昇格を牽引し、今シーズン限りでの引退を表明している。 

チャンピオンシップを通じて、ふたりの出番はほとんどなかった。だからこそ、今夜コートに立つ場面があるとすれば——それは5年分の重さを帯びた瞬間になる。

中立地の演出は、本当に中立か

横浜アリーナはどちらのホームでもない。ライブ中継で見る限り、GAME1・GAME2ともに演出に大きな偏りは感じなかった。BGM、映像、アナウンス——表面上は均等に見えた。

ただ、それは映像越しの話だ。音の密度、ブースターの体温、コートサイドの空気感は、現地でしか測れない。

V・ファーレン長崎という"援軍"

GAME2のスタンドには、見慣れたユニフォームがあった。V・ファーレン長崎の選手たちだ。京都での最終戦を終えた翌日、そのまま横浜へ駆けつけた。

GK・波多野豪はスタンドから立ち上がり、ブースターの応援を先導した。同じ長崎スタジアムシティを拠点とする"同志"の存在が、会場の空気を変えた。彼らはいるか。今夜、この目と耳で確かめる。

現地で見たもの

熊谷航は、何ファウルで前半を終えたか

熊谷のボールマンへのプレッシャー、スティール——その運動量の高さは、同時にファウルリスクと表裏一体でもある。

決勝のGame3という最も大事な試合で、守備強度を保ちつつ前半を2ファウルで折り返した。スコアは36-23と十分なリードを保って残りの20分を迎えた。

第3Q、熊谷は琉球のビッグマン、ジャック・クーリーが守るゴール下でオフェンスリバウンドからのイ・ヒョンジュンへアシストを決めると、その次のプレーでは自ら3Pショットを決めて試合の流れは完全に長崎のペースに変わっていた。

熊谷をよく見てみると、セミファイナルで着用していたフェイスガードは、もう外していた。長崎ヴェルカの悲願達成をさえぎるものは、もはや何もなくなっていた。

松本健児リオンと狩俣昌也の2人は横浜アリーナのコートに立ったか

松本健児リオンは、第2Qに熊谷と交代で出場した。

松本が投入された時、長崎ヴェルカブースターからは大きな歓声があがった。また、長崎のパブリックビューイング会場でも同様に大きな歓声が上がった。

これは、松本健児リオンがこれまで積み重ねてきた、数字には表れない貢献を長崎ヴェルカのブースターが知っているからに他ならない。

また、引退を表明していた狩俣昌也の出番はなかった。彼はSNSでブースターを「Xファクター」と呼んだ。

GAME1・GAME2を支えた長崎の応援が、確かにチームを動かしていた。今夜、私も長崎のXファクターの一員としてスタンドに立っていた。

アリーナの空気は、本当に中立だったか

私の隣には、琉球ブースターが座っていた。彼女は、琉球ゴールデンキングスの得点や好守備の時に一際大きな歓声をあげていた。

その一方で、長崎ヴェルカのフリースローや3Pショットが決まった時にも長崎の選手に拍手をしているところを目撃した。

これは今まで見てきたホーム&アウェーの試合では感じることのできない、中立地開催だからこそ感じることができた、お互いの好プレーに対して「素晴らしい試合を見せてくれてありがとう」の気持ちが表れた瞬間だった。

私はこの試合、長崎ヴェルカの応援をしていたが、隣の彼女につられて、琉球ゴールデンキングスの好プレーに対して自然と拍手を送っていた。

コートには、もうひとつの「最後」があった

今夜の試合には、スコアとは別の視点がある。

Bリーグが産声を上げた2016-17シーズンから10年、586試合(CS決勝を含めると589試合)笛を吹き続けた平出剛審判が、S級ライセンスの定年というルールに従って今夜をもってコートを去る。

選手のプレーを裁く笛の向こうに、試合を守る別の意志があることを、彼のジャッジを見ながら初めて意識した。

平出審判の最後の試合、集まった13235人の観客

彼の勇姿を横浜アリーナに集まった観客全員が固唾を飲んで見守っていた。

エピローグ

試合前の馬場雄大のコメントには続きがある。

「勝っても負けても、長崎の皆さんは声を枯らして応援してくれる。彼らに顔向けできることを、常に考えながらプレーしている」

長崎と琉球が歴史を刻んだこの夜、コートの上には両チームの選手だけが闘っていたわけではない。

第2戦に応援に来ていたV・ファーレン長崎の選手たちは、週末の試合のため来場はしていなかったが、彼らの不在時に駆けつけたのがV・ファーレン長崎のサポーターだ。

V・ファーレン長崎のサポーターもまた、狩俣のいうXファクターといえるだろう。彼らの力なくしては、長崎ヴェルカの優勝はなかったかもしれない。

ただ私には、もうひとつの見方がある。ほとんど出番のなかった狩俣自身こそが、長崎ヴェルカのXファクターではないか。

コートに立つ時間は短くても、創設期からこのチームを知る男の存在が、ベンチの空気をどう作っているか。それは数字には出ない。

だがしかし、チームのエースである馬場雄大やジャレル・ブラントリーが「長崎のため、マサさん(狩俣)のためにも勝たなければならない」と言っていたのがそれを現している。

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