あの日の一球|毎週ショートショートnote|高校野球怪談【こわくないよ】
「また消えた!」
久しぶりの甲子園出場を決めた僕らは、
夜遅くまで練習していた。
最近、外野を抜けた白球が、なぜか消える。
こんな噂が流れた。
――昔、甲子園で。
ある外野手が取れなかった打球が決勝点となり、チームは敗れた。
「来年、ここへ戻ろう」と誓い合ったが、
その外野手は、翌年、事故で亡くなった。
学校も、それ以来、甲子園から遠ざかった。
彼は今も、あの日の一球を追っている――
ある夜、僕は確かめることにした。
外野にボールを投げる。
その直後。
暗闇を、白い影が走った。
息を止めて近づく。
そこにいたのは――
一匹のビーグルだった。
足元には、消えた白球。
翌朝、野球部に新しい噂が生まれた。
外野の向こうに、
恐ろしく守備範囲の広い犬がいる――
その話を聞いた監督の顔色が変わった。
「それ、あいつの犬だよ」
僕らが甲子園へ戻るこの夏。
また、白球を追いたくなったのかもしれない。
昔、飼い主と遊んだように。
あの日の一球。
その続きを追うのは、今度は僕らだ。
(410字)
『あの日の一球』(了)
【お知らせ】
この後、
「おまけエッセイ」1本と、
「おまけマンガ」3本を掲載しています。
田原にかさんの「毎週ショートショートnote」、
27回目の投稿です。
今週のお題は、
「高校野球怪談」でした。
怪談ですか…
あまり得意ではないんですよね…
と思ったものの。
田原さんがこんなことを書かれてました。
高校野球怪談【こわくないよ】
みたいにタイトルを書けば、ホラー苦手な方も読んでくれるはずです!
(タイトル詐欺はダメですけどね!)
私、「これだ!」と飛びつきまして(笑)
今回、記事のタイトルに、
一言一句、そのまま入れさせていただきました。
怖くないアピールです。
(怖いの、書けないだけ🤣)
さて、今回のショートショートには、
「恐ろしく守備範囲が広い犬」が出てきました(笑)
「守備範囲が広い」というと、
私は、あるマンガに出てきた2人の外野手を思い出します。
これをお読みの方は、
『アストロ球団』というマンガをご存じですか?
いえ、知らなくても、何の問題もありません。
私は、ほぼ1年前に、こんな記事を書きました。
『アストロ球団』を紹介しつつ、
昭和の文化資産を未来に残す大切さを熱く語った記事でした。
今回は、去年書いたこの記事をリライトして、
途中から、まったく別の話にしてみたいと思います。
きのころショートショート初の、
「おまけのエッセイ」です(笑)
それでは、ごゆっくりお楽しみください。
このエッセイのあとには、
「おまけのエッセイのおまけのマンガ」もありますよ!✨
(な、なんだってーーー!?)
<おまけのエッセイ>
人生を面白くする出会い
アストロ球団という伝説
『アストロ球団』(原作:遠崎史朗、作画:中島徳博)は、
今でも(ネタ的に)話題に上る、伝説の野球マンガです。
1972年から4年間、『週刊少年ジャンプ』で連載されました。
沢村栄治の遺志を受け継いだ「九人の超人」たちが、
「打倒読売巨人軍」「打倒アメリカ大リーグ」を掲げ、
世界最強の野球チームを目指して戦う物語。
『南総里見八犬伝』を下敷きにしていて、
アストロ超人たちには、ボール形のアザがあります。
このマンガに、いかなるときも、
外野を2人で守る「超人」が出てきます。
たった2人で、広い外野をどうやって守るのか。
それは。
たとえホームラン級の打球が飛んできたとしても――

体が大きい選手が、小さい選手を放り投げて、
どんな打球も、空中でキャッチしてしまうのです!
……なるほど。
外野手が足りないなら、外野手を投げればいい。
そういうマンガです。
さて、『アストロ球団』。
実は、私もドンピシャ世代ではありません。
私は『北斗の拳』『キャプテン翼』『キン肉マン』『DRAGON BALL』などがズラリと並ぶ「少年ジャンプ」黄金期の世代。
生粋の昭和キッズだった私から見ても、
『アストロ球団』は、ちょっと古いマンガでした。
でも、私には年の離れた兄がいたので、
『アストロ球団』は家にありました。
だから私は、普通に何度も読み返していたんですね。
ただ、なぜか最終巻だけがない。
そのため私は、
「9人目のアストロ超人」が誰だったのか知らないまま、
大人になりました(笑)
その後、1999年に出た復刻版を入手し、
ようやく『アストロ球団』という物語を、最後まで読み終えました。
そして、改めて思い知ったのです。
なんて無茶苦茶で、荒唐無稽で、支離滅裂なマンガなんだ。
もちろん、褒めています。
ネットで『アストロ球団』を検索すると、
今でも「人間ナイアガラ」などのネタ画像が出てきます。

これ、何をしているシーンかというと、
今まさにボールを打って一塁へ走っている選手に、
相手チームの選手たちが頭上から襲いかかっている場面です。
……何を言っているのかわかりませんよね?
私もわかりません(笑)
背景の「ナイアガラの滝」は、マンガ的なエフェクトです。
でも、選手たちは、
実際に空から降りてきています。
しかも、その先では相手チームの一塁手が、
本気でランナーを殺そうと待ち構えています。
「いや、それ、走塁妨害ちゃうん?」
とか、そんな生ぬるい話ではありません。
試合中に、人が何人も死ぬマンガなのです。
昭和時代は、そんな野球が普通に行われていました。
ごく一部のマンガの中で。
確かに「人間ナイアガラ」はすごい。
すごく、ひどい(笑)
でも、こんなシーンばかりが有名なのは、ちょっと惜しい。
なぜなら、「人間ナイアガラ」なんて、ほんの一部だからです。
もっともっと、想像を絶するヤバいシーンがゴロゴロあります。
自分の目が信じられず、
開いた口はふさがらず、
奥歯と奥歯はかみあわない。
そんなシーンが山ほど。
機会があったら、読んでみてください。
野球観、いや、人生観が変わりますよ!
……変わっていい方向かどうかは、保証しませんが。
偶然、出会うということ
ところで。
こうして考えてみると、
私と『アストロ球団』の出会いは、ずいぶん適当なものでした。
ただ、兄の本棚にあった。
それだけです。
しかも、最終巻まで揃っていない。
それなのに、私は何度も読み、
何十年も経ってから復刻版を買い、
今になって、こんな文章まで書いている。
考えてみれば、不思議です。
自分の中に長く残るものって、
必ずしも「自分で選び抜いたもの」ではないのかもしれません。
たまたま家にあった本。
友人に半ば強引に聴かされた曲。
テレビでたまたま放送されていた映画。
そんな、
「別に探していたわけではないもの」
が、妙に心に残ることがあります。
むしろ、あとから振り返ると、
そういうものの方が、自分の中に深く入り込んでいたりする。
人生には、
こちらから探しに行く出会いもあります。
でも、
向こうから勝手に入り込んでくる出会いもある。
『アストロ球団』は、
私にとって、後者でした。
人生を面白くするのは
今は、何かを探すのが、とても簡単になりました。
検索すれば、何だって見つかる。
なんなら、勝手におすすめされる。
レビューを読んで、
評価を見て、
失敗しないように選ぶ。
もちろん、それはとても便利です。
私もやります。
でも、その一方で、
「よくわからないけど、なんとなく触れてみる」
ということも、
少し大事にしていいのではないかと思うのです。
役に立つかわからない。
面白いかどうかもわからない。
でも、とりあえず、
読んでみる。見てみる。聴いてみる。
そういうところからしか生まれないものも、
きっとあります。
人生を変える出会い。
なんて言うと、
ちょっと大げさです。
そんな大層なものに、
毎日のように出会うわけではありません。
でも、
人生を少し面白くする出会いなら、
案外そこらじゅうに転がっている。
私は、そう思います。
私にとって、
兄の本棚にあった『アストロ球団』は、
そのひとつでした。
あのとき読んでいなかったとしても、
おそらく人生は何も変わっていません。
でも私は、
「外野手が足りなければ、外野手を投げればいい」
という発想を知っています。
人生に必要かと言われれば、
まったく必要ありません。
でも、何かを知らない人生より、
知っている人生の方が、ほんの少し面白い。
私は、そういうものが好きです。
このエッセイも、また
そもそも、あなたは今日、
『アストロ球団』の話を読む予定でしたか?
おそらく、違うと思います。
朝起きて、
「よし。今日は『アストロ球団』について書かれたエッセイを読もう」
と決意した人は、いないのではないでしょうか。
でも、何かの拍子にタイトルをクリックして、
あなたはここまで読んでいる。
それもまた、
ひとつの「予定になかった出会い」です。
そういう余計なものが、
人生を少しだけ面白くしてくれることもある。
あなたにとって、このエッセイも、
「人生を少し面白くする出会い」
のひとつだったかもしれません。
だったら、書いた甲斐があります。
だから私は、これからも、
誰が読むのかわからないような話を書いていこうと思います。
そのうちのどれかが、
誰かの「予定になかった出会い」になれば、最高に嬉しいです!
おまけのエッセイ
「人生を面白くする出会い」(了)
<おまけマンガ>
先ほどのエッセイを書いたあと、
さらに、おまけのマンガを作りました。
3本立てです。
もはや、「おまけって何」って感じですよね。
でも、作っちゃったんです(笑)
それでは、行きますよ。
1本目!
(1)ハチミー、『アストロ球団』を読む

2本目!
(2)ハチミー、カプフチに『アストロ球団』をすすめる


3本目!
(3)カプフチ、秘策を披露する①

カプフチの秘策。
あと2つあるらしいですよ!
続きは……
メンバーシップ、
「きのころサークル」で!
「きのころサークル」通信
明日の「きのころサークル」では、
今日の続きのマンガ2本に加え、
マンガのメイキング過程もお見せします。
(今回描いたマンガは3本ではなく5本でした笑)
また、今回のショートショート作品について、
創作の裏側や、「410字」になる前の原型作品を
ノーカットで掲載します。
原型作品は「800字」超えです。
終盤で、最終形とは違う展開もありますよー!
月曜日の投稿では、
バーチャルな「ぬい活」が始まりました!

きのころ本人がぬいぐるみ化。
日本でも、世界でも、異世界でも、
どこにでもお邪魔する予定です✨
今回は、SS+エッセイ+マンガ3本をお届けしました。
もう、フルコースですね✨
楽しんでいただけたなら嬉しいです。
本日は以上です。
お読みいただきまして、ありがとうございました。
