空に憧れて
空を飛びたい
ふと思った、思っただけだ、思ってしまった
人は飛べない、誰もが思った、誰もが知ってた
私は空が好きだ、人は空が好きだ。
私達は飛んでみたかったんだ。
空は特別だった、でなければ何故キリストは天に昇ったのだろうか?
何故…奇跡は空から降ってくるのか?
私達が空を好いているから、私達が空に辿り着く事が無かったから永遠の憧れを持ったのだろう。
ただ約30年前憧れは死に、奇跡は現実になった
とある兄弟が空を飛んだ、飛行機が台頭した。
当初飛行機は注目されなかった。
色々な国が偵察用に数機購入しただけで"まだ"
あの様な使い方はされていなかった。
約16年前世界大戦が始まった、各国の総力戦、地獄の様な戦いが4年も続いた、その中で飛行機は異常な発達をした、飛行機は本来の偵察機の役割を超え爆弾を積み上から落とす爆撃機が生まれた。
そしてその爆撃機を倒す為の戦闘機が生まれた
神の奇跡は地面を焼き、建物を崩し、大量殺戮をする為の道具になった。
飛行機は量産され搭乗者達はピオニーの花の様にすぐ萎んでいった。
大戦後、飛行機は用済みになり多くの退役軍人達がのさばる様になり、元パイロット達は曲芸飛行か郵便飛行で稼ぐしか無くなった。
私はパイロットになりたかった自由に空を飛び、郵便の仕事をしながら午後はワインを飲んで寝る
私の理想だった、ただ理想は幻想でしか無く現実にはならない。
私は目が悪かった5メートル先の風景ですらぼやけてしまうのだ、だから私はパイロットを諦め設計者になったのだ、別に飛行機を作りたいわけでは無いが携わりたかったからだ。
私はアエロナウティカ・マッキから声がかかり
レース用の飛行機の設計に携わっている
「君少し良いかい?」
急に上司から声がかかった。
「はい、なんでしょうか?」
上司は一拍置いて、ゆっくり話した
「今軍からの要求で戦闘機を開発している、君からアドバイスがほしい。」
私は驚いた、上司は私が戦争に使う飛行機を嫌っている事を知っている、いやそれより…
「戦闘機ですか…私はあまり…」
上司は猫の様な鋭い目を逸らさずに話した。
「わかってる、ただ有無など言えないのだよ」
私は察した…が一応聞く事にした。
「何故、今更戦闘機を?この国に戦闘機を作る余裕があるですか?防衛なら現行機で十分では?」
上司は初めて目を逸らした。
「現在、各国が緊張状態にある、日本、ナチス、そして我が国、いつ破裂するかわからない緊張だ、どの国がいつ戦争起こしてもおかしくない、わかるか?俺たちは巻き込まれるんじゃ無い、巻き込むんだ世界を!考える限り最悪の方法でな、負けたらこの国は今後100年以上渡る汚名と責任を背負う事になる、勝つ以外に無いんだわかってくれ」
私は予想通りの返答に、嗚呼またかと思った。
「わかりました…受けます。」
上司は再び目を合して口を開いた。
「ありがとう、完成予想図がある見てくれ。」
私は驚いたもうそこまで進んでいる事に、上司は図面を開いて見せた。
「これは陸上機?それも単葉機ですか?」
当時のマッキ社は複葉機それも飛行艇を作っていた全て真逆だった。
「嗚呼、より現代的で性能の高い方を取ったそうだ。」
私はその言葉が酷く違和感があった、噂には聞いていた星型エンジンにこの出力それに…
「このエンジン出力では水平速度もそこまでです
このままでは単葉機のメリットである操縦性の意味が無い。」
上司は鷲の様な目つきで睨みつけ話した。
「ではどうする?合理的に答えてくれ。」
私は思いついていたが話したくなかった。
「暖房を取り外し、装甲を削る…」
上司は口元を隠す様に話した。
「ありがとう、それが聞きたかった。」
上司は立ち去ろうとした、私は怒りのままに叫んだ。
「本当にそんな設計で飛ばす気ですか!?
ただでさえ生還率の低いパイロットをさらに減らしもて遊ぶのか?それにキャブレターにも欠点があるだろ!人は…チェスの駒じゃない…」
私は声が掠れる程に叫んだ、上司は黙って聞き一言。
「そうだな…ただ俺達は空が好きで、人間だっただけだ。」
私はふざけているのかと思った。
理解もしたく無い…
戯言を吐いてる様にしか見えなかった。
上司はそのまま出て行った。
数ヶ月後、例の戦闘機が試験飛行を行うというから見に来た、その飛行機は曇天の雨や雪が降りそうな雲の下を優雅にハヤブサの様に飛んでいた。
その飛行機の名前はM.C.200 "サエッタ"というらしい、この天気によく合う名前だ。
私は上司の事ば理解出来た、どうやら私は人を殺す兵器を好いている様だ。
なのに私は戦争が嫌いなのだそれが私達人間の愚かさと強さなのだろうと。
この飛行機が何人人を殺すか考えたく無い、ただこの飛行機がどんな活躍をするか知りたい。
私達は空が好きで、人間なのだから…
