幻覚パジャマ【毎週ショートショートnote】
所有するアパートの住人から、異臭がすると苦情が入った。部屋に入ると、借主である年老いた男性が、コタツでうたた寝しているような状態で亡くなっていた。身寄りはなく孤独死だった。
この場合、遺体や部屋のモノには触れず、警察を呼ぶことになっていた。念のため、事件性を確認するためだ。
「こんにちは」
「こちらです」
警察官は手を合わせていた。
「故人は、奥さんを愛していらしたんですね」
「なぜ、そう思うんです?」
「食事の量が多いと思いませんか?」
「確かに、二人分ありますね」
「奥さんの分だったのかもしれません」
「認知症だったんでしょうか?」
「それだけではないと思います」
「幻覚が見えてたとか?」
「最後まで記憶に残る感覚って、なんだかわかりますか?」
「う~ん。耳、ですか?」
「聴覚は一番初めに忘れると言われています。最後まで記憶と結びついているのが嗅覚だそうです」
「そうなんですか」
「残り香があったんでしょうね」
故人は女性用のパジャマを着ていた。
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