通信の傍受とプライバシー保護
私は、電子工学や情報処理を教える専門学校の教員をしていました。
最近は、通信の傍受に関する話題が出ることがあります。
そこで、ずれた議論がなされるのを見かけることがあります。
そのため今回は、通信の傍受に関することを述べます。
■通信の傍受と法律
□電波法
国内での無線通信は、電波法の規制を受けます。
では電波法で、通信の傍受に関してどのように定めているのかということですが、簡単に言えば、
(1) 通信を傍受すること自体は違法でない。
(2) 通信内容を漏らしたり、通信内容を悪用することは禁止されている。
ということです。
(秘密の保護)
第五十九条 何人も法律に別段の定めがある場合を除くほか、特定の相手方に対して行われる無線通信(電気通信事業法第四条第一項又は第百六十四条第三項の通信であるものを除く。第百九条並びに第百九条の二第二項及び第三項において同じ。)を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない。

(1)ですが、電波は広範囲に送信されているので、誰でも受信機で受信することができます。
ただし、そのような通信があったことやその通信内容を他人に知らせること、あるいは通信内容を悪用してお金をだまし取ったり邪魔をするようなことは禁止されています。
□通信傍受法
通信傍受法の正式名称は、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」です。
同法は組織的犯罪の捜査において、警察や検察などの捜査機関が傍受令状に基づき、電話や電子メールなどの通信内容を秘密裏に受信・記録することを認める法律です。情報処理の科目では、情報セキュリティで学ぶ法律です。
通信傍受法で通信の傍受をどう定めているかですが、簡単に言えば、
(a) 組織的な犯罪(殺人や銃器・薬物の不正取引、集団密航など)を対象としている。
(b) 裁判官が発布する傍受令状が必要。
(c) 傍受する期間や通信事業者の立ち合いが定められている。
ということです。

(立会い)
第十三条 傍受の実施をするときは、通信管理者等を立ち会わせなければならない。通信管理者等を立ち会わせることができないときは、地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。
2 立会人は、検察官又は司法警察員に対し、当該傍受の実施に関し意見を述べることができる。
(記録媒体の封印等)
第二十五条 前条第一項前段の規定により記録をした記録媒体(次項に規定する記録媒体を除く。)については、傍受の実施を中断し又は終了したときは、速やかに、立会人にその封印を求めなければならない。傍受の実施をしている間に記録媒体の交換をしたときその他記録媒体に対する記録が終了したときも、同様とする。
通信が傍受できないとテロ行為などの組織的犯罪を防ぐことが困難になりますが、それ以外の用途での通信の漏えいを、通信管理者等が立ち合うことや、記録媒体の封印等で防ぐようになっています。
□行政傍受
この二つの法律のプライバシー保護に関する原則は、
傍受は禁止されない、ただし傍受した内容は漏えいのないよう取り扱わなければならない
であると思います。
ところで通信傍受法に基づく傍受は、裁判官が発布する傍受令状により行いますので、司法傍受に分類されます。
これに対し、国家の安全保障の一環として傍受令状なしで行われるのが行政傍受で、スパイ防止法がある国では実施されています。
日本でもスパイ防止法に併せて行政傍受が検討されており、
・外国勢力の干渉抑止
・情報収集能力の強化
・民主的統制
を骨子とした提言が出ています。この提言は外国政府の工作員の活動など、安全保障上の脅威となる勢力を対象にしています。
通信の傍受は、一般人は気にすることはないと思います。日本が、国家を批判しただけで逮捕されるような国になったら別ですが、犯罪とは関係のない仕事やプライベートでの通信に、国が傍受を必要とする内容はありません。
それよりもプライバシー保護なら、スマートフォンやカメラ付きメガネで知らないうちに自分が撮影され、その映像がSNSやYoutubeなどで公開される可能性のほうが高いし、影響も大きいと思います。
いいなと思ったら応援しよう!
お心遣いありがとうございます。この記事への反響としても、受け止めさせていただきます。