めぐりあい・Gファイター!ビスケットの袋の中に立つガンダム!?
シュディディディ……(←※ガンダムが起動する音)。
男には、どうしても譲れない一線というものがあります。
たとえそれが、スーパーのお菓子売り場にひっそりと並ぶ、数百円のビスケットであったとしてもです。
先日、我が家の奥さんがYouTubeで「機動戦士ガンダム V作戦ビスケット」の動画を見たらしく、「これ、可愛いねぇ」と呟いておりました。
奥さんのその一言を聞き逃さないのが、長年連れ添った夫の矜持(きょうじ)。
仕事帰りにスーパーへ寄り道し、売り場へダッシュ。
箱にギッシリ詰まったビスケットの手前から、迷わず2つを鷲掴みにしてレジへ駆け込みました。

LINEで「買ったよ」と送ると、画面には即座に「ありがとう」の文字。 よし、今日の夫ポイントは大幅加算だ。
完璧なミッション遂行に、胸の中で静かにガッツポーズを決めました。
帰宅後、さっそく奥さんに「はい、これ」と渡しました。

……が。
開けない。
「可愛い!」とか言いながら、すぐさま袋をバリバリと破り捨てるかと思いきや、テーブルの上にちょこんと置いたまま、微動だにしないのです。
1日経過。……開けない。
2日経過。……やっぱり開けない。

しびれを切らした私が「ねえ、なんで開けないの?」と尋ねると、奥さんはすまなそうな顔でこう言いました。
「あなたが開けないから、遠慮してたの」
いやいやいや! 違うんだよ、奥さんよ。
私が開けないのには、もっと深遠で、哲学的な理由があるのだよ。
いいかい? この商品は全5種類。
ガンダム
ガンキャノン
ガンタンク
Gファイター
コア・ファイター(×2)&武器セット
この袋を開けない限り、この中には「シュレーディンガーのガンダム」が存在しているんだ。
開けなければ、私の手元にあるのは「ガンダムが入っているかもしれない可能性の袋」なんだよ。

一生開けなくたっていい。
ロマンは、箱を開けた瞬間に消え去ってしまうのだから……!
……なんて熱弁を振るうわけもなく、「あ、そうなんだ」と力なく微笑むのが、しがない夫のリアルな姿であります。
そして運命の3日目。
ついに小腹が減った奥さんが痺れを切らしました。
「お菓子食べたいから、開けて!」

命令には抗えません。
私は観念し、密かに「頼む、せめてガンダムかガンキャノンを……!」と祈りを込めながら、2つの袋を破りました。
結果。
1つ目:Gファイター

2つ目:Gファイター

……ありえないでしょ!!?

スーパーの箱の手前からそのまま並んで取ってきた2つですよ?
よりによって、支援機の「Gファイター」がダブるだなんて!

連邦軍の輸送能力を高めるためには確かにGファイターは不可欠ですよ。
でもね、主役不在でGファイター2機って、我が家の食卓は「セイラ・マスとスレッガー・ロウの出撃ラッシュ」ですか。
自分のこの引きの悪さ、あるいは変な強運っぷりに、笑うしかありませんでした。

若かりし頃の私なら、確実にカチンと来て「キーッ!」となり、翌日にはスーパーで「大人買い(箱買い)」をかましていたことでしょう。
しかし、私もそれなりに人生の荒波を揉まれてきた大人です。
人生なんて、思い通りにいかないから面白い。
欲しいものをドンピシャで手に入れることだけが、幸せじゃないはずです(と、自分に必死で言い聞かせる)。
次の買い物の機会があったら……
そうですね、今度は「ひとつだけ」買ってみようと思います。
そして、開封せずにそのまま……墓場まで持っていきますか。
開けなければ、その箱の中には、いつだって本物のガンダムが立っているのですから。

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