うつへの一手。薬か、運動か。両方を並べてみる
うつへの対処を、薬と運動の2本で並べてみます。どちらが上、という話ではなく、運動が「柱の一つ」として並ぶところまで来た、という話です。
まず量と予防。Pearce 2022(JAMA Psychiatry)は15研究・191,130人・210万人年を集めた用量反応メタ解析。中強度運動8.8 mMET-h/週(marginal MET時間。だいたい速歩を週2.5時間ほど)で、うつの発症リスクが約25%下がった。少ない運動量の段階ほど傾きが急で、つまり「ゼロから少し」のリターンが一番大きい。
次に治療効果。Singh 2023(Br J Sports Med)は97のレビュー・1,039試験・128,119人をまとめたアンブレラレビュー。運動はうつ症状に対して中程度の効果(効果量の中央値−0.43)、不安にも同程度。著者は「運動はうつ・不安管理の主軸(mainstay)であるべき」と結論づけた。比較対象は通常ケアで、抗うつ薬との直接の頭打ち比較ではない。だから「薬と完全に同等」とまでは、この2本からは言い切らない。
弱点も書く。重症のうつに運動単独で、というのは無理がある。薬や心理療法との併用が前提。そして、うつの最中に運動を始めること自体がしんどい(行動活性化の出番)。
実際どう動くか。軽中度なら、週3回×各30分の中強度を「処方」として扱う。完璧主義は禁物で、歩くだけでも有意な差が出ている。薬を始める前に、まず運動を試す余地は十分にある。
📄 Pearce 2022, JAMA Psychiatry(dose-response meta)| https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35416941/
📄 Singh 2023, Br J Sports Med(umbrella, n=128,119)| https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36796860/
今週の1行:うつへの柱、運動。
次回 #48 は、運動がなぜ脳に効くのか、その分子の正体に踏み込みます。
▸ フル版(脳の全テーマ・図版つき):https://bac.amplinc.com/brain-frontier/
