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ONE① 日の丸コンテナ会社の現在地。その驚くべき収益性とは

港で、ひときわ目を引く鮮やかなマゼンダ(赤紫色)のコンテナを見たことはないでしょうか。

かつて、日本のコンテナ海運は風前の灯火でした。 「お荷物」と揶揄されるほどの赤字に苦しみ、世界との差は開く一方。 しかし今、そのマゼンダの旗印の下、日本発の企業が世界を驚かせています

こんにちは、サプライチェーン・マニアの瀬崎健です。

前回は、ウォルマート研究の最終回をお届けしました。

巨大な物理店舗という「持続的イノベーション」に縛られず、自らをデジタル企業へと作り変えた彼ら。 「イノベーションのジレンマ」をいかにして葬り去ったのか、その自己変革の軌跡を辿りました。

今回からは、同じ「変革」をキーワードに、海を舞台にした日本発のグローバル企業へと視点を移します。
絶望的な状況から這い上がり、世界屈指の収益力を手に入れたONE(Ocean Network Express)。
今回は「現在地」をみていきます。

世界第7位の規模と圧倒的な収益性


2021年、日本において、ONEはトヨタに次ぐ純利益を稼いだ。 こう言ったら、驚く人もいるかもしれません。

世界を相手に驚異的な利益を叩き出す「最強の収益マシン」、それがONE

ONEは、日本郵船、商船三井、川崎汽船という邦船3社が、生き残りをかけてコンテナ事業を統合し、2017年に設立されました。
まさに、退路を断った「背水の陣」からのスタート。
しかし現在、ONEの運航規模は世界第7位になるという成長を遂げました。

ONEの特筆すべき点は規模よりもその「収益性」。

設立からの5年間で、累計345億ドルの純利益を達成しました。
特に2021年度には、税引き後利益で約2兆1,800億円という驚異的な数字を叩き出しました。
当時の日本企業において、トヨタ自動車に次ぐ第2位の利益額。

直近の2024年度決算でも、純利益42億4,400万ドル(約6,000億円超)を記録しています。
かつての赤字事業の面影はなく、今や日本経済を牽引するトップランナーへと変貌を遂げた。
その広告塔となったのが、船体やコンテナを彩る「マゼンダカラー」です。

コンテナを、あえて派手な色にすることで、短期間で劇的な認知度向上を果たしました。
この色は日本の「桜」を象徴しています。
日本発のグローバル企業としての誇り、それがこの色には込められているのです。

「持続的成長」へのフェーズ移行

ONEは今、大きな転換期を迎えています。
設立からの5年間は、フェーズ1「統合と確立」。
バラバラだった3社の文化やシステムを統合し、土台を固めた5年間。

そして今、彼らはフェーズ2「持続的成長」へと踏み出しています。
海運業は、市況によって利益が激しく乱高下するビジネス。

ONEはこの宿命からの脱却を狙っています。

具体的には、5つの戦略を柱に据えました。

  • コンテナ輸送事業の拡大

  • 「バリューチェーン全体」への投資

  • DX(デジタル戦略)

  • グリーン戦略

  • 人材・財務戦略

特に注目すべきは、港湾ターミナルや物流インフラなどへの投資
川上から川下までを抑え、市況が悪化しても安定して稼げる事業構造への移行を急いでいます。

資産投資と脱炭素化の両立

ONEの攻めの姿勢は、投資額にも現れています。
2030年度までに、200億ドルという巨額の投資計画

これまでは親会社から船を借りるスタイルが中心でした。
しかし、ついに「独自の資産形成」を開始。 2022年には初の自社保有船を発注
2025年3月末時点では、263隻を運航し、さらに49隻もの建造予約を抱えています。
これが、柔軟な航路運営とコスト管理を可能にします。

この大規模な投資と切っても切り離せない「脱炭素化」。
海運業界は厳しい環境規制にさらされています。

ONEは、2050年までの排出ネットゼロを目標に掲げました。
環境対応をコストではなく、他社との差別化を図る「次なる競争力の柱」と捉えているのです。

なぜONEは成功したのか

ONEの成功要因を分析すると、一つのキーワードが浮かび上がります。
それは、「過去の成功体験からの決別」です。
かつての日本海運は、伝統ある大手3社が個別に競い合っていました。

しかし、そのままでは世界には勝てません。
彼らは自らのブランドを捨て、「ONE」という新しいアイデンティティに全てを託しました。

「強烈なブランド構築」
「徹底したコスト管理と経営のスピード感」
「市況に左右されない安定収益への構造改革」

これらは、あらゆる業界において、V字回復のケーススタディとして示唆に富むものです。

どん底から世界トップクラスへ。
ONEの物語は、まだ始まったばかりです。

次回、「戦後日本のコンテナ海運」。
歴史を知れば、今のONEの凄みがより深く理解できるはず。

お楽しみに!

参考:『日の丸コンテナ会社 ONEはなぜ成功したのか』日経BP社 幡野 武彦 (著), 松田 琢磨 (著)


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