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律令制の領国と現代の繋がり

何度かの変遷を経て律令制時代に固まったと言われる古代の行政区画=古代国名は今も使われることが多い。地域振興との関わりを主に少し述べたい。最初に、古代の広域行政区画と現在の都道府県の対応など図をしておく。
【地域振興】
物産(農畜産物、食品、陶磁器、金属器、木器、織物、紙など)、文化行事等および観光全般。地名・駅名は除く

古代の五畿七道および領国
国土交通省関東地方整備局・横浜道路整備局よりhttps://www.ktr.mlit.go.jp/yokohama/tokaido/02_tokaido/04_qa/index1/a0101e.htm
筆者作成表
古代国名と現代都府県対応表
山川書店(2024)『日本史探究 詳説日本史』より転載

1.地域振興では旧国名が都道府県名に優先
地域振興は伝統に結びついていることが重視されることが多く、都道府県名ではなく古代国名がよく使われる。以下は筆者の経験上の見解なので当然、反論はあるだろう。

(1)筆者の出身である九州の例
 ①旧国名がよく使われる地域
  肥後、豊後、日向、薩摩、壱岐
  同じ島でも対馬○○というのはまだ遭遇せず。

 ②旧国名は殆どわれないと思われる地域
 ○肥前・・長崎県と佐賀県に跨がるので使い辛いのだろう。長崎は明らか
       に長崎を前面に出すのが得策。
 ○豊前・・これも大分と福岡に跨がるからか?豊前○○を出しているものは
                    若干ある。
 ○大隅・・早くから薩摩と一体で島津家が所領していたので使われない。
 ○筑前・・筑紫を筑前と筑後に分けたのものの筑紫の方がとおりいい。
       福岡市の一地域に過ぎない博多を前面に出すことが多い。
 ○筑後・・地域名としてはよく使うが、藩として久留米・柳川のイメージ
       がある。

(2)九州以外を全国的に見れば(除く北海道、沖縄)
 ①旧国名がよく使われる全国的に有名な地域
  四国:讃岐、伊予、阿波、土佐。
                 四国は県名より旧国名がまかり通る。
  中国:出雲のみか?
     因幡、伯耆、岩見、隠岐、長門、周防は地名としては有名。
     安芸は宮島だけ?個人的には美作が好きである。宮本武蔵は
     「作州浪人」と称していた。
  近畿:大和、近江、伊勢、丹波、丹後、但馬、河内
     和泉・紀伊は泉州・紀州が使われることが殆ど。京都は「京」
     なので山城は出ず。摂津は大阪・兵庫を跨がるので使い辛いと
     思う。
  中部:若狭、越前、能登、越中、越前、越後、三河、美濃、飛騨、
     信濃、駿河、伊豆、甲斐

     中部は殆どが使われる。三河は三州となることも。信濃は信州
     方がよく出ると思う。駿河は江戸時代よく使われたが現在はそう
     でもないか?
     尾張は尾張○○という伝統工芸品はあるが殆ど目立たない。遠江
     は流石に使われない。
  関東:常陸くらいであろう。
     他は県と旧国名の不一致、又は、東京に近く地名としの魅力薄
     だからか?或いは、江戸時代は関八州で括られていたので国名
     より細かい単位が売りだったのか?
  東北:ほぼ無し。古代の領国は広範過ぎ複数県に跨がるから当然か。
    「出羽」がつくものはある。しかし、山形のものと秋田のものが
     あり紛らわしい。
       蛇足ながら、明治維新後に出羽と陸奥はそれぞれ2国と5国に
                 分割されたが無視可能(羽前・羽後、磐城・岩代・陸前・陸中・
     陸奥)。

県名より旧国名が圧倒的に勝っているのは土佐と薩摩で間違いないと思う。高市早苗氏が「私は大和の女です」といったのは大和朝廷縁と言いたかったのだろう。

2.現在は殆ど忘却の彼方の五畿七道
五畿七道(畿内七道)は高校の日本史の教科書に出ているが、今や使われることは、東海道以外はないと思う。北海道は、言葉は悪いが長らく化外の地であり国名はなく(蝦夷という呼称はあった)、明治維新後に広域行政区画として北海道ができ(つまり、東海道と同じカテゴリー)、それがそのまま都府県と同じレベルになってしまった。何れにしても、北海道を除き「道」が地域振興で使われることはないだろう。
蛇足①:化外の地「台湾」
現在、中国の力による併合が懸念されている台湾は、清帝国以前は化外の地とされていた。国性爺合戦で有名な鄭成功が台湾を拠点に明復活を掲げ清への抵抗戦争を行った後、清の領土と認識された。

筆者は長い間、東海道五十三次と東海道線のイメージに引っ張られ、以下の二つは変だと思っていた。広域行政区画を改めて見て、おかしくないことを知った次第。
○東海道四谷怪談は四谷が舞台なのに何故「東海道」がつくのか。
○東京多摩地区に「よこやまの道」という防人が通ったという旧道があり、説明書きに「旧東海道の道」と書いてあった。何故、ここが東海道なのか。

ついでにいうと、東山道は非常に広い範囲である。東山道を初めて意識したのは、関ヶ原の合戦時の秀忠遅参の件で、秀忠軍が東山道ルートで向かい、真田の抵抗で遅参したことになっていることである。東北方面まで東山道であるのは違和感があった。
蛇足②:畿内と近畿
以前書いたよう畿内制度・・首邑・都城近辺の天子の直轄地・・を定めたのは漢/新の王莽である。現代の日本で近畿(旧畿内+周辺域)という用語はよく使われる。しかし、地域振興で使われることはない(近鉄や近ツリなどの社名、近畿財務局程度?)。

3.現代の広域区分は曖昧・バラバラ
現代の広域区分は非常に中途半端である。財務局や国税局などの官庁拠点の所轄とは一致せず、天気予報区分とも一致しない。百貨店でよくある物産展に使われるのは以下であろう
○北海道展
○九州(・沖縄)展
○東北展
○北陸展
関東、中部、近畿、中国、四国は、少なくとも筆者は出会ったことがない。因みに、百貨店の物産展の嚆矢は東武百貨店の北海道展ではないかと言われている。

嘗て、北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州の8区分が標準であると思っていた(北陸は中部に含まれていた)。実のところ、地域区分は統一されたものはない。8区分、9区分、10区分、11区分などがあり、同じ区分数でも異動があったりする。古代の五畿七道も都があった五畿=畿内はさておき、道を管轄する役所があったのは西海道のみ(太宰府)。つまり、広域区分は現在も今もあまり大きな意味がなさそうだ。但し、「道」は文字どおり幹線道路、「駅」を設置一致するところだったので、現在の広域区分より意味がある。

以下、現在の地域区分をいくつか列記して終わることとする。中部から北陸
を独立させたのが最もメジャーと思える。

国土地理院の地域区分
北海道地方
北海道
東北地方
青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県
関東地方
茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県
北陸地方
新潟県 富山県 石川県 福井県
中部地方
山梨県 長野県 岐阜県 静岡県 愛知県
近畿地方
三重県 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県
中国地方
鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県
四国地方
徳島県 香川県 愛媛県 高知県
九州地方
福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県

内閣府の地域区分の説明
https://www5.cao.go.jp/j-j/cr/cr16/chr16_04.html

内閣府地域課題分析レポート(2025年8月)の地域区分
https://www5.cao.go.jp/j-j/cr/cr25-1/chr25-1_07.html
総務省統計局の地域区分
https://www.stat.go.jp/data/shugyou/1997/3-1.html
衆議院比例代表選挙区(ブロック)・・総務省
https://www.soumu.go.jp/2026senkyo/about/

オマケ:
明治維新前は全国のことを六十余州といった。これは、古代国の数である。冒頭の表だと65ヶ国である。この言葉を知ったのは長崎の「六十餘洲」と
いう日本酒に出会った時である。因みに古代中国では全国のことを九州と
称した。

NHKのローカルニュースの天気予報では「関東甲信越」が対象となる。
関東+山梨+長野+新潟である。括りはよく分らないが、財務局と税務局の管轄区分に近そうだ。
ついでに言えば、最近のローカル天気予報では箱根・多摩・秩父を一括りにしている。経度は同じようなものとは言え、流石に同じ気候とは思えない。

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