芋出し画像

あずがき

 石田䞉成ずは、どのような人物だったのだろうか。

 我々が小説やドラマ、挫画などで目にする䞉成は冷培で融通の利かない官僚ずしお描かれるこずが倚い。しかし、その人物像は本圓に実像に近いものなのだろうか。

 もし我々が知る䞉成像が、埌䞖の評䟡や創䜜によっお圢䜜られた䞀面に過ぎないずしたら。

 そんなこずを考え始めたのは、二〇二五幎の倏頃だった。圓時の私は、倧接事件を題材ずした前䜜『刑吏の刃』を執筆しおいた。そのため本栌的に取り掛かるこずは出来なかったが、䞉成ずいう人物に぀いおの構想だけは少しず぀膚らんでいった。

なお、『刑吏の刃』はカクペム、小説家になろう、Talesにお公開䞭である。興味を持たれた方は、そちらもお読みいただければ幞いである

 やがお前䜜を曞き終えた私は、本䜜の執筆ぞ取り掛かった。そしお振り返っおみるず、私が描きたかった䞉成像は、実は第䞀話の時点でほが曞かれおいたように思う。

────────

「治郚少、ただいた倪門殿䞋のご䜿者の方がお越しです」

 声を掛けた家臣の姿の向こうに、あの男の圱があった。青朚䞻膳。倪門の意をそのたた運ぶ忠実な䜿者。
 来たか、ず䞉成は筆を眮いた。あの男が珟れる時は、たいおい厄介事を䌎う。

「お通しせよ」

 短く告げるず、䞉成は膝をずらしお䞋座に回った。

 やがお畳を螏む音ずずもに、青朚が曞院に入る。深々ず䞀瀌し、懐から巻玙を取り出した。
「これなるは倪門殿䞋よりの埡沙汰にございたす」

 巻玙が開かれ、端正な声で文ふみが読み䞊げられる。そこに蚘されおいたのは、珟実を顧みぬ無䜓な指瀺であった。

 さらなる兵の増城、鉄砲・匟薬の調達、そしおそれらをわずか数日のうちに戊堎ぞ届けよ、ず。

 䞉成の眉がかすかに震える。
「──埅たれよ」

 声は䜎く、しかし抑えきれぬ怒りが滲んでいた。曞院に静かな衝撃が走る。

「これなるは、たこずに殿䞋のお蚀葉か」

䞭略

──芪父殿は、戊堎の有り様をご存じないのか。

 か぀おは数倚の合戊に身を投じ、䞀目で戊況を嗅ぎ取る鋭さを備えおいた。

 采配䞀぀で倧軍を動かし、勝機を掎むその才を、誰もが恐れ敬った。

──それが、かくも倱われおしたうずは。

第䞀話「倪門の声」より

────────

 䞻君の呜什は絶察である。

 だが、その呜什が珟実ずかけ離れおいた時、人は䜕を思うのか。私はそこに興味があった。

 本䜜においお青朚䞻膳は、ある意味で我々がよく知る「埓来の石田䞉成像」を担う存圚である。䞻君の呜を忠実に遂行し、その正吊を問わない。

 䞀方で䞉成は、その呜什を受け止めながらも珟実ずの間で苊悩する。私が描きたかったのは、そうした人間ずしおの䞉成だった。

 たた、本䜜では䞉成を取り巻く歊将たちに぀いおも、私なりの解釈を加えおいる。

 加藀枅正や犏島正則は、確かに䞉成を快く思っおいなかっただろう。しかし圌らもたた、䞀囜を預かる倧名であり、䞀流の歊将である。だから私は、䞡者の関係を単玔な敵察ずしお描きたくなかった。

 互いに盞容れない郚分はある。考え方も違う。それでも盞手の力量は認めおいる。そうした緊匵感こそが、実際の圌らの関係に近かったのではないかず思っおいる。

 埳川家康に぀いおも同様である。

 埌の関ヶ原を知る我々は、どうしおも䞉成ず家康を“宿敵”ずしお芋おしたう。しかし、本䜜が描く時代においおは、ただ党おが決定的に壊れおいたわけではない。

 家康は確かに巚倧な野心を抱いおいたかもしれない。だが同時に、豊臣政暩を支える重鎮でもあった。

そのため本䜜では、䞉成にずっおの協力者であり、政暩内のフィクサヌでもある人物ずしお描いおいる。

 このあたりの解釈に぀いおは異論もあるだろう。
しかし、それもたた歎史小説の面癜さであるず思っおいる。

 政治を描く物語は難しい。合戊のような掟手さは少なく、どうしおも地味になりやすい。執筆䞭、私が最も悩んだのもそこだった。

 どうすれば読者に興味を持っおもらえるのか。

 どうすれば政務や兵站の話を物語ずしお成立させられるのか。その答えずしお私が蟿り着いたのが、「戊の裏偎」である。

 兵を増やすには金が芁る。兵糧を運ぶにも金が芁る。
船を動かすにも金が芁る。そしお、その負担は各倧名ぞ重くのしかかる。

 戊堎で槍を振るう者だけでなく、その背埌で苊闘する者たちもたた戊っおいる。本䜜では、そうした郚分にも出来る限り光を圓おた぀もりである。

 もちろん、歎史解釈や描写の䞭には至らぬ点もあるだろう。それでも本䜜を通じお、読者諞氏が䞀床でも、

「石田䞉成ずは、本圓はどのような人物だったのだろうか」

ず考えおくださったなら、䜜者ずしおこれ以䞊の喜びはない。

最埌たでお付き合いいただき、誠にありがずうございたした。

長谷郚 慶䞉

いいなず思ったら応揎しよう