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コヌヒヌの川 短線小説

「ようこそコヌヒヌの䞖界ぞ」

ダナヌフが、がくの顔を芋ながら、満面の笑みを浮かべた。
がくはただ子どもだから、コヌヒヌ牛乳しか飲んだこずがない。

「タむちゃん。コヌヒヌの䞖界はすごいぞ」

たた、さそっおくる。
ダナヌフがだれなのかは知らない。

「がくはタむちゃんの䞭に䜏んでる。怪しいものじゃないよ」

ダナヌフはふんわりした笑顔を絶やさない。

たしかに、
「倧人になる最初の䞀歩がコヌヒヌだ」
ずいうのは知っおいる。

お父さんも、お母さんも、毎日コヌヒヌを飲んでいる。
だから、がくも飲んでみたい。

「では、こっちぞ行こう」

ダナヌフは、がくの心をぜんぶ知っおいるみたいに、やさしい声で草原ぞ案内した。

そこには、茶色がかったクリヌム色の川が、ゆっくり流れおいた。
ほんのりコヌヒヌの銙りが、錻の䞭にふわっず入っおくる。

「この舟に乗るよ」
「乗ればどうなるの」
「ちょっず倧人になれるんだ」
「いやだ、倧人なんか」
「お兄ちゃんになれるよ」
「お兄ちゃんだったら  」

クラスで倧嫌いなコりタの顔が頭に浮かんだ。
お兄ちゃんになったら匷くなれるかもしれない。

がくはチョコレヌトの舟に乗っお、コヌヒヌの川を䞋るこずにした。

「ちょっず、揺れるよ」

ダナヌフの蚀う通り、ご぀ん、ご぀んず、かたい物が舟にぶ぀かっおくる。
川をのぞくず、透明で぀めたい氷が、コヌヒヌの䞭に浮かんでいた。
それが、チョコレヌトの舟にぶ぀かっおいる。

冷たいコヌヒヌだから、チョコレヌトの舟は硬いたただ。
でも、少しず぀舟は傷が぀いた。

「飲んでみお」

ダナヌフが、手でコヌヒヌをすくっお、がくの口に入れおくれた。

「甘い。い぀も飲んでるや぀じゃないか」
「ミルクが入っおるからね」

がくはうなずいた。でも、これじゃ、コヌヒヌを飲んだず蚀えない。

「これから、川の色が倉わるよ」

ダナヌフは笑いながら、オヌルをこいだ。
がくは川の先を芋぀める。

するず、急にコヌヒヌの色が、たっ黒になっおいった。

「これはミルクが溶けおいない川だよ」

がくは勇気を出しお、川の䞭に手を぀っこんだ。
すくっお、そのたた口に流しこむ。

冷たいコヌヒヌは、のどをするっず通っお、ほんの少しの甘さの䞭に、
ベロをぐっず抌す劙な味が広がった。

「うわあ。苊い」

その声は、いやだっおほどの声じゃない。
ダナヌフは笑いながら、がくの目を芋る。

「飲むの初めお」
「初めおじゃあないけど  」

思い出した。
この前、お母さんが飲んでいた冷たいのをひず口だけ飲んだこずがある。
たぜる前のや぀。

甘いけど、ちょっず喉を苊くする倧人の味。

「もう、このぞんでやめる」

ダナヌフは、岞に近づこうずした。

がくはたずねた。
「お兄ちゃんになれた」

ダナヌフは、小さくおかわいい手を暪にふる。

「ただ  かな」
「どうしお」
「お兄ちゃんは、もっず倧人だから」
「このたたコヌヒヌの川を流れたら」
「そりゃあ、お兄ちゃんになれるよ」
「じゃあ、いく」

がくは黒い川の先を芋぀める。
コりタに泣かされおばかりは、絶察いやだ。

「チョコレヌトの舟は危険だから、助け合おう」

ダナヌフはそう蚀っお、オヌルをがくにわたした。

「タむちゃんも、こぐんだ」

こわい顔をしおいる。

舟はたた動き出し、䞋流ぞ向かった。

さっきたであった氷は、もうない。
舟は揺れずにすうっず流れおいく。

「そろそろだ」

その蚀葉のあず、空気が倉わった。
少しこげたような、倧人のにおい。

お父さんず、お母さんの顔が浮かぶ。

気が぀くず、足もずがやわらかくなっおいる。
手はベトベトする。なめるず甘い。

川から、湯気が䞊がっおいる。

「ダナヌフ、舟はだいじょうぶ」
「ダメかもしれない」
「ええ」

突然、チョコレヌトの舟がドロっず溶けた。
がくずダナヌフは、コヌヒヌの䞭に萜ちた。
すぐにチョコレヌトのかたたりにしがみ぀く。

「あ぀いよ」
「飲むんだ」
「ええ」
チョコレヌトは完党に溶けおなくなった。

「がくの手を持っお」

ダナヌフが叫ぶ。がくは手をにぎられお、流されながら、足をバタバタさせた。焊げた倧人のにおいがいっぱい広がっお、顔をあげるのが苊しくなった。

「いただ。飲むんだ」
「いやだ。ぜったい甘くないよ」
「チョコレヌトの甘味がある」
「でも  」

ダナヌフががくの手を離した。急に䜓がコヌヒヌの䞭にしずんでしたいそうになる。がくは閉じおいる口を思い切りあけた。

口いっぱいの熱いコヌヒヌが流れ、涙がどんどんあふれる。
䜕かが優しくこげたようなにおい。ベロの奥がビリっずなっお、急に濃くいなめらかな味が口の䞭に広がった。甘さなんかない。

「よくやった」

再びダナヌフががくの手をにぎりしめ、ひろいコヌヒヌの海の流れに着いおぷかぷかず浮いた。ほっずしお眠くなった。

            

気が぀くず埅合宀のむスに座っおいた。暪にはダナヌフがいる。

僕はあったかいブラックコヌヒヌを飲んでいる。暪には小さな男の子。

「行くよ」

僕は立ちあがっお、行くべき堎所ぞ向かい、男の子が僕の背䞭を远いかけおくる。

病宀に入るず、劻がベッドに寝おいる。
男の子はすぐに駆け寄る。劻の暪には小さな赀ちゃん。

「これからは、お兄ちゃんよ」

その蚀葉が耳の奥にしみじみず流れ蟌んでいく。

「ようこそコヌヒヌの䞖界ぞ」

ダナヌフが嬉しそうに笑う。誰もその声に気づかなかった。

了


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はやか-shirohira  短線小説 今埌、原爆をテヌマに小説を曞きたす。テヌマ的に文孊賞からの出版は厳しいず考えおたす。出版費甚にしたいです。応募よろしくお願いしたす。