【Kindle出版】第4話 AIを使っても"自分の本"になる——執筆は「足す」より「削ぎ落とす」だった
前回までで、企画と読者、そして本の構成が決まりました。 ここからは、いよいよ原稿を書いていきます。
正直に打ち明けると、原稿の下ごしらえには、AIを使いました。 そう聞くと、「AIに書かせた本なのか」と思われるかもしれません。でも、伝えたいことも、そこに込めた体験も、考え抜いたのは全部自分です。AIにお願いしたのは、頭の中にすでにあるものを、文章の形に起こす手伝いだけでした。
というのも、中身までAIに任せてしまうと、本当に伝えたいことがぼやけて、誰にでも書ける本になってしまう。それだけは、避けたかったんです。 だから実際に力を注いだのは、AIが出した文章を、自分の手で削って、書き直していく作業のほうでした。
第4話は、AIを使いながら、それでも"自分の本"にするための執筆の話です。
ゼロから書き始めない。AIで土台を作る
章ごとの下書きは、AI(GeminiのCanvas機能)に出してもらいました。 渡したのは、自分で組んだ構成と、ジャーナルに残してきた体験です。何を書くかを決めるのは、いつも自分。AIは、その中身を文章の形に整えてくれる相棒でした。
作業は、基本的に毎日1〜2時間。その下書きを、自分の言葉で直していく。3月のはじめに書き始めて、4月の頭には、ひととおり書き上がっていました。
ただ、AIが出すのは、あくまで下ごしらえ。まだ"僕の本"ではありません。ここからが、本番でした。
足そうとしない。ひたすら削ぎ落とす
AIの文章には、はっきりした弱点があります。 とにかく、語りすぎるんです。説明を足したがるし、きれいな話でまとめたがる。
だから執筆の実作業は、「足す」より「削ぎ落とす」ほうが、ずっと多くなりました。
・専門用語が出てきたら、小学生でも分かる言葉や、身近なたとえに置き換える
・話が急に飛んでいるところに、つなぎの一文を入れる
・同じことを二度説明しているところは、片方をまるごと落とす
削るときの基準は、ひとつだけ。「この一文がなくても、読者は次に進めるか?」。 進めるなら、思いきって消す。残った言葉のほうが、ずっと強い。
そして、AIにはどうしても書けない部分がある。 顔面神経麻痺で、仕事を離れて療養に入った日のことや、人前で言葉が出なくなった感覚。こうした体験の中身は、実際に味わった本人にしか出せません。基本的にAIに文章にしてもらうのは、あくまで僕が渡したものまでにしていました。
水増しで埋めない。一次情報で勝負する
書いていると、どうしても字数が足りない章が出てきます。 そこでやりがちなのが、読者への問いかけを増やしたり、コラムを差し込んだりして、かさ増しすること。でも、これがかえって読まれない構成でした。
字数が足りないときこそ、薄めるのではなく、自分にしか書けない一次情報を足す。 「やってみたけど、うまくいかなかった」「これは、やらなくてよかった」。専門家には書けないこの実体験だけが、唯一、勝てる武器なんだと思います。
正直に言うと、いちばん時間がかかったのは、この最後の推敲でした。 構成が固まってからも、公開の直前まで、削って、直して、を静かに繰り返していました。
最後に、完璧を目指しすぎないこと。 Kindleは出版後も、何度でも直せます。だから「完璧にしてから出す」より、「出してから、よくしていく」。そう決めたら、ずいぶん肩の力が抜けました。
第4話のポイントをまとめます。
・ゼロから書かず、AIで章ごとの土台を作る(毎日1〜2時間)
・実作業は「足す」より「削ぐ」。基準は「この一文がなくても読者は次に進めるか」
・水増しせず、一次情報(うまくいかなかった実体験)で埋める。完璧にせず、出してから直す
第5話は、「タイトルと表紙」。読者のみなさんを巻き込みながら決めていった、舞台裏の話です。
あなたが最近、思いきって減らして、かえってよかったと思えるものはありますか。 予定でも、持ち物でも、ひと言でも。
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