天才と精神医学(5): 神か悪魔か?神的天才と悪魔的天才〜精神科医が提案する新たな天才分類〜(後編)
<前編までのあらすじ>
天才の新たな分類方法として"神的天才"と"悪魔的天才"を精神科医である小生が提案いたしました。
前編では「神的天才」をご紹介いたしました。
あくまで個人的見解ですがアリストテレス、ダ・ヴィンチ、ライプニッツ、ゲーテは「神的天才」という呼び名がふさわしい天才だと小生は思います(異論は認める)!
後編では小生が思う「悪魔的天才」をご紹介いたします!
【悪魔的天才】
さて皆様お待ちかねの「悪魔的天才」について説明したいと思います。
”悪魔”という言葉はちょっと近寄りがたい雰囲気がありますかね?
まずは小生が提唱する「悪魔的天才の定義」をご覧ください。
<悪魔的天才の定義>
悪魔的天才の定義ですが、これは神的天才の概ね逆を考えれば容易です。
まず悪魔的天才とは神からの寵愛を受けない...、否、むしろ叛逆するかの様な行動をとる天才です。
要するに"人が神に取って代わろうとする"や"神を否定する"様な偉業を成し遂げた天才などが該当するのではないでしょうか。
また悪魔的天才の特徴として、真理・美を極めるなら如何なる犠牲も厭わないという姿勢があります。
これは、"神的天才"の①②に反する特徴ですね。
そして最後の条件としては不健康...、というか肉体的あるいは精神的に病んでいることも条件に入れましょう。
以上をまとめると「悪魔的天才」は以下のように定義されます。
①神を超えようとするあるいは神を否定する天才。
②目的の為なら如何なる犠牲も厭わない天才。
③不健康な天才。
【悪魔的天才の具体例】
<ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン: 1770-1827年: 56歳没>

天才音楽家と聞いて、ベートーヴェンを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
ベートーヴェンと言えば年末必ず耳にする「第九(交響曲第9番 ニ短調 作品125)」ですがこの曲のイメージは"歓喜"です。
従ってベートーヴェンをして"悪魔的天才"と呼ぶことに違和感を抱く方もいるでしょう。
しかし、ベートーヴェンが「月光」「英雄」「運命」「第九」など不朽の名作を完成させたのは、彼の天才的才能だけでなく”悪魔的”とも言える境遇が原因と小生は考えます。
ベートーヴェンは非常に苦労人で、若くして母親を亡くし家系を支えながら兄弟の面倒をみたそうです。
ベートーヴェン自身もすこし性格的に"難"があり、短気で傲慢で他の音楽家に対しても暴言を吐きまくり、「野獣」と呼ばれていたそうです。
なぜそこまで性格が捻じ曲がったのか...?
ベートーヴェンはその不幸の生い立ち以外も、肝機能障害や腎機能障害など健康面で大きな問題をもっておりました。
しかし、特に彼を絶望の淵に追いやったのは20代後半から始まった難聴です。
音楽家としては致命的と言えるこの障害に苦しんだベートーヴェンは…
~難聴という悲壮、偶然の苦しさ
私は何度も神を呪った。
神は自らが創り出したものを、
偶然のなすがままにして、かえりみないのだ。
そのために、最も美しい花でさえ、
ほろびてしまうことがある。
と、友人であるカール・アメンダ牧師に送ったそうです。
自らの障害に絶望し、「私は何度も神を呪った」と神を否定するのもわかる気が致しますが、その負のパワーこそが、彼の創造性の源泉だったのかも知れません。
30代のベートーヴェンはほぼ耳が聴こえなかったそうですが、このように鬼気迫る姿勢で名曲を作り続けたのはまさに”デーモニッシュ(悪魔的)”と言えるのではないでしょうか。
<フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ: 1844-1900: 55歳没>

有名な哲学者の中には「天才と〇〇」は紙一重...的な危うさを持っている人物がたくさんおりました。
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