手の鳴る方へ
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」
何も見えない世界で、私はいつも「手の鳴る方」へ歩いていた。
良く言えば好奇心旺盛。
悪く言えば無謀やお節介。
近くで手を鳴らす音が聴こえると、衝動を抑えきれずに突っ込んでしまう。
必ずしもそれが、私に向けられた音ではなくとも。
駅前を歩いていて、
「手相の勉強をしているので、手相を見てもいいですか?」
そんなふうに声を掛けられたことがある。
その時、私の頭の中では「ぱんっぱんっ」と音が鳴った。
私は特に急いでいたわけでもなく、初めて体験するそのシチュエーションに興味が湧いたため申し出を快諾。
手を差し出すと、男は私の手のひらをじっと見つめた。
数十秒の間、私の手のひらに触れながら見つめた後「ありがとうございました」と男は笑顔で私の前から立ち去ろうとした。
頭の中ではまだ「ぱんっぱんっ」と響き続けている。
すっかり目隠しされた鬼となっていた私は、満足げに去ろうとする「音の鳴る男」を呼び止め尋ねた。
手相を見た結果は教えてくれないのか、本当に手相を勉強することが目的なのか、誰かに命令されてやっているのか、周囲に同じようなことをしている人間がいるようだが仲間なのか、人を選んで声を掛けているように見えるがどこで区別しているのか、この後私を何かに勧誘してはくれないのか、あなたは幸せですか。
やや誇張したが、概ね私はそのようなことを男に尋ねた。
しかし、男は苦笑いをするばかりで何も答えてはくれない。
後ずさりしながらだんだんと体の向きを変え、早歩きで駅前の雑踏へ混ざっていった。
日常に潜む「非日常」、それが私の好物だ。
そんな突如湧き起こるエッセンスが、私の心を揺さぶってくれることに期待して生きている。それは時に楽しいこともあるし、悲しいこともつらいこともある。それでも、より深く「人の心」に触れること、その対象が他者であっても自分自身であっても、本質に触れられる機会というものはそう出会えるものではない。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」
今日も私は鬼となり、手の鳴る音を探し求めている。
KAWAI
エッセイしりとり
今回、相互フォローの 和田ゆか さんから「#エッセイしりとり」のバトンをいただきました。
和田さんは、強い信念を持って温かみのあるエッセイやイラストなどを創作しているクリエイター。創作だけではなく、コメントでもいつも温かい言葉をかけてくださる素敵な方です。そして私と生活圏が近いこともあり、近所のおすすめカフェなんかも教えてくれる優しい人。
素敵なバトン、私に回していただきありがとうございます。
「エッセイしりとり」は、前の人が書いたエッセイのタイトル最後の一文字を受け取り、次の人がその文字から始まるタイトルでエッセイを書くという企画です。
企画されたのは、マイキーさん。
マイキーさん、この度は楽しい企画をご用意いただき、ありがとうございます。
今回、私のところには和田ゆかさんのエッセイタイトル『風に吹かれて』の最後の一文字「て」が回ってきたため『手の鳴る方へ』というタイトルで書かせていただきました。
本企画のルールにつきましては、和田ゆかさんの記事より引用させていただきます。
・2026年8月12日〜8月31日23時59分まで
・本文140字以上3000字以内
・前の人のタイトルの最後の一文字から始まるタイトルでエッセイを書く
・「#エッセイしりとり」のハッシュタグをつける
・次の人(2名まで)にバトンを回す
※回さなくてもOK
さらに詳しいルールや企画につきましてはマイキーさんの記事をご確認ください。
こちらの企画ですが、締切が「8月31日23時59分まで」ということで、バトンを次に回すかどうかとても悩みました。
こちらの記事を書きながらも悩みに悩んで、結果として、せっかく回していただいたバトンではありますが私のところで止めさせていただきます。
私の性格上、どうも昔からこういったバトンが回ってきても、気軽に誰かへつなぐということが苦手なようで。
企画してくださったマイキーさん、バトンを回してくださった和田ゆかさん、流れを止めてしまい申し訳ございません。
改めて、素晴らしい企画をご用意くださったマイキーさん、私に参加のきっかけをくださった和田ゆかさん、そしてここまで読んでいただいた皆様、本当にありがとうございます。
皆様、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
KAWAI
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