どすこい
気付けば、この2年で体重が9kg増えていた。
9kgの新参者は、堂々とした様子で現れた。
もともと私は痩せ型の体型なのだが、その9kgは細い腕や脚には目もくれず、顔と腹に分け合って住み着いた。
なんと容赦のない侵略か。
友人と久し振りに会うと、
「なんかまるくなった?」
「太った?」
などと言う。
ぐさり。
と、心に太い棘が刺さり、どろりと黒い何かがじわり。
しかし、私は開き直った様子で、おちゃらけて言うのだ。
「どすこい」
深く腰を落とし、両手のひらを正面に構えながら。
左手は右手よりも少し前方へ突き出しておくのがポイントだ。
どすこいとは何なのだろうか。
唐突にそんな疑問が頭に浮かぶ。
どすこい、不思議な響きだ。
どすこい、といえばお相撲さん。
もちろん、私は力士ではない。
これまでの人生で、誰かと相撲をとったことも数えるほどしかない。
誤解のないように言っておくと、私は力士を太っているとも思っていない。
あの体は凄まじい節制と鍛錬の末にたどり着く、筋肉を覆う鎧。
戦うために作り上げる、研ぎ澄まされた身体だ。
それは、運動不足とカロリー過多という怠惰の末にたどり着いた、私の体とは全くの別物である。
どすこい、などと自分のだらしない体を誤魔化すような目的で使用するのは極めて失礼だろう。
改めて、どすこいとは何か。
・「どすこい」とは「どっこい」が転じたもので稽古中はおろか、日常でも使うことはなく、相撲甚句を歌う時の掛け声でいう程度
・甚句は七、七、七、五の四句で構成される伝統的な民謡の形式で、相撲甚句もその形式を踏襲しており、独特な節回しで歌われています。
力士が余興で歌ったものが江戸末期から明治にかけて流行し、次第に今日のように「相撲甚句」と呼ばれる形になり、 「ドスコイ〜ドスコイ!」の囃子(はやし)が入るようになりました。
巡業や引退相撲興行の際に披露される事が多いです!
なるほど、「どすこい」とは力士でも日常的に使う言葉ではなく「どっこい」が訛った言葉だと。
体重が増え、一つ知識も増えた。
日常あまり意味を知らず、なんとなくのニュアンスで使っているような言葉は意外に多い。
もしかすると、そのなんとなくの言葉は、本来の意味や使い方と大きく異なっているかもしれない。
知らないうちに増える脂肪。
知らないくせに使っている言葉。
どちらも気をつけねばなるまい。
最近、そんなことを考えながら過ごしていた。
今回はここまで。
ごっつぁんです。
KAWAI
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