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第27話(今宵の一杯)モヒートと One Last Farewel──熱い夜にさわやかな風をさがして

静かな夜に

ここ数日、シンガポールを思わせるような熱帯夜が続いている。
山形もそうだったが、東京に戻ってからも同じように蒸し暑い夜が続いていた。

窓を開けても風はほとんど入らず、街灯の灯りだけが静かに滲む。
こんな夜だからこそ、軽やかで、どこか救いのような一杯が欲しくなる。

「久しぶりに松岡直也 & ウィシングの One Last Farewel でも聴いて、 モヒートでも作るか。」

ちょうど BACARDI のホワイトラムがあり、いただいたフレッシュミントもある。 クラッシュドアイスの入ったグラスにホワイトラムとミントを合わせ、 過去恵比寿ガーデンプレイスで開催されたバカルディ公式イベントで憶えた あのレシピでモヒートを作ってみた。

確かスペイン語の mojar(濡らす) に由来すると以前きいたことがある。

私は BACARDI のホワイトラムが好きだが、知人は Havana Club のホワイトラムがいいという。 人それぞれ、こういう好みがあっていいのだと思う。


松岡直也 & ウィシングの One Last Farewel を聴きながらモヒートをいただく。 フレッシュミントの香りと、あの曲の透明なピアノが、同じリズムで熱い夜を冷やしてくれる。


1 モヒートの名前の由来

モヒートという名は、スペイン語の mojar(濡らす) を語源とする説が広く知られている。 “少し湿らせる、しっとりさせる”というニュアンスを含む言葉で、 熱い気候のキューバで、身体と気分を「湿らせる」ための一杯として生まれたとされる。

カリブ海に浮かぶキューバのハバナ発祥で、文豪ヘミングウェイも愛したとされるモヒート。 キューバでは国民的カクテルとも呼ばれ、今も広く愛され続けている。

ラムにライム、ミント、砂糖、ソーダ。 材料はいたってシンプルだが、ミントを軽く叩いた瞬間に立ち上がる香りは、 どんな高価な酒よりも、蒸し暑い夜の気配を一気に変えてくれるから不思議だ。

2 バカルディ(BACARDI)という物語

モヒートのベースとしてよく使われるのがバカルディ。
世界的なラムの名門だが、その歴史は決して平坦ではない。

19世紀、キューバで創業したバカルディは、 革命の波に飲まれ、資産を没収され、故郷を追われる。 それでも家族経営の精神を守りながら、 「軽やかで澄んだラム」というスタイルを世界に広めていった。

モヒートの透明感は、バカルディが“逃げずに残した伝統”の味でもある。
熱い夜に飲むと、どこか「耐えてきた人の強さ」がほんのり滲むのはなぜだろうか。

3 One Last Farewel の夜

ラテンミュージシャン(ピアニスト)である松岡直也の音楽は、都会の夜に風を通す。 その中でも One Last Farewel は、 別れの余韻を抱えながらも、前に進むための静かな光を持っている。

ピアノのフレーズが、ミントの香りと同じように、 胸の奥の熱をそっと冷ましてくれる。 そして、ウィシングのアグレッシブなアンサンブルが、 モヒートの炭酸のように、気持ちを少しだけ浮かせてくれる。

蒸し暑い夜に、冷たい酒と、涼しい音楽。 それだけで、部屋の空気がひとつ変わる。

モヒートをいただきながら聴く音楽といえば、キューバのサルサが思いつく。 ラテン音楽には「モントゥーノ」と呼ばれるピアノリフがあり、 これがラテンリズムを紡ぐ重要な要素になっている。

松岡直也 & ウィシングの頃の楽曲は、日本ではめずらしい本格的なラテンミュージックであり、 今夜のモヒートに似合ってしまうから不思議だ。

遠い昔に新宿のコタニで 松岡直也 & ウィシングの「A SEASON OF LOVE」をはじめて聴き、 一瞬で松岡直也& ウィシングが好きになった。

今でも思い出したように聴いている。そんなところがある。

4 今宵の余韻

モヒートを飲み終える頃、 グラスの底に残ったミントが、まるで夜の名残のように見える。

外はまだ蒸し暑い。 けれど、部屋の中には、 松岡直也のピアノと、バカルディのラムが作った “ひと晩だけの涼しさ”が残っている。

熱い夜だからこそ、こういう一杯がいい。 夏本番を迎えるこの時期、 まだまだ暑い夜は続きそうだ。

参考

今宵、静かな夜の時間を楽しむための小さな手がかりとして。


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