見出し画像

元駐在地ベネズエラで今、起きていること。実体験に基づくFact Baseの考察


「Hermano, sí, todos bien en casa. Ayer no dormí, pero estamos bien, gracias」(兄弟、ああ、家のみんなは大丈夫だよ。昨日は一睡もできなかったけれど、俺たちは元気だ。ありがとう。)。

ベネズエラの首都カラカスに住む友人に電話し、
安否を確認しました。
結論から言いますと、
突然の軍事行動に不安を感じつつも、
数日が経過した今、
私の知人や友人は皆、
マドゥロ大統領の身柄拘束と、
独裁体制の終焉に強い期待を寄せています。

「チャベス独裁から続く数十年もの地獄を経験したことがない人間は、
黙っていてほしい」。

あるベネズエラ人女性インフルエンサーは、
X(旧Twitter)でそう強く発信しました。
これは「主権を侵害されて黙っているのか」という、
外部からの批判に対し、
当事者として放った言葉です。

そしてその他SNSで投稿されている、
ベネズエラの国旗を持ち米国に抗議をする集団。
メキシコでもいました。
しかしその中に、
ベネズエラ人は居ないと、
私の複数のべネズエラ友人は言います。

私はここで政治思想を披露するつもりはありません。

しかし、日本のメディアは相変わらず、
一方的なトランプ政権への糾弾など、
偏った報道が目立ちます。
チャベス政権からマドゥロ政権へと、
体制が引き継がれた激動期に、
現地で駐在員として過ごした身として、
可能な限り事実(Fact)と、
実体験に基づいた背景をお伝えしたいと思います。

ベネズエラが直面してきた凄まじい現実

  • 国民の流出: 2013年のマドゥロ政権誕生後、国民の約3割(700万〜800万人)が国を脱出しました。1日に約2万人もの人々が隣国コロンビアへ逃れた記録もあります。

  • 人道危機: 国境移動や移住先では深刻な迫害があり、特に子供たちは人身売買の標的となっています。これは近年で「世界最悪の人道危機」の一つとされています。

  • ハイパーインフレ: IMFの推定では、ピーク時の年率インフレ率は130万%に達しました。自国通貨は文字通り「紙くず」と化しました。

かつての「南米の宝石」の面影

資源国ベネズエラは、
かつて中南米で最も裕福な国でした。
特に1950年代から70年代にかけては、
「南米の宝石」と称されるほどの繁栄を誇っています。
1953年に開通したカラカスの高速道路は、
当時の世界最先端の土木技術を駆使したものでした。
1964年の東京オリンピックに向けた日本の首都高速建設の際、
設計者たちがそのダイナミックなジャンクションを視察・研究し、
参考にしたという逸話もあります。
当時は、一般的な家庭が、
週末にマイアミへ家族旅行へ行くことも珍しくありませんでした。
米国とは極めて良好な関係にあり、
その交流の中で野球文化が深く根付く。
中南米で中心のサッカーではなく、
ベネズエラが、
野球大国として際立つのは、
この時代の親米路線の名残です。

崩壊を肌で感じた駐在生活

私が駐在していたのは、
まさにこの国が衰退から崩壊へと向かう変革期でした。
赴任当時、1ドルは約10ボリバル(闇レート)でした。
しかし、2013年以降マドゥロ政権下で経済悪化は加速。
ハイパーインフレ時には、
タクシー代を支払うだけで、
ゴムで束ねた10cm厚の札束を、
5つも手渡すような状況になります。
小学生の頃、世界史の教科書で見た、
「リヤカーで紙幣を運ぶアフリカのハイパーインフレ」の写真を、
現実の光景として目の当たりにした衝撃は今も忘れられません。
現在は米ドルやユーロ、
コロンビアペソが混在して流通していますが、
基軸通貨がないため、
価値が日々変動し、生活は安定しません。

「一日一食」という戦後さながらの暮らし

平均月給では鶏一羽すら買えず、
国民の3分の1が飢えを逃れるために国外へ脱出しました。
しかし、脱出できる人はまだ運が良い方かもしれません。
残された人々はどう暮らしているか。
私の友人の例を紹介します。
3人の子供を持つシングルファザーの彼は、
こう言いました。
「起きているとお腹が空くから、朝10時頃に起きてパンなどの質素な食事を一度だけ取り、17時には子供たちを寝かしつける」
これは誇張ではなく、
現代に起きている「戦後」そのものの光景です。
一方で、前チャベス大統領の家族は、
隠れ資産を含めると、
当時世界一の富豪とも言われ、
マドゥロ氏とその家族も、
国民の飢えとは対照的に肥え続けていました。

変化の兆しと「自由」への期待

米国へ目を向けると、
前バイデン政権下での国境管理の緩和により、
数千万人の移民が流入しました。
問題は治安だけでなく、人身売買の急増です。
映画『サウンド・オブ・フリーダム』に描かれた児童誘拐の実態は、
決してフィクションではありません。

トランプ氏はその主人公のモデルをホワイトハウスへ招き、
メキシコとの国境の壁建設によって、
人身売買や麻薬(フェンタニル)の流入を、
第一期目から阻止しようと動いてきました。

マドゥロ氏は、
こうした麻薬カルテルとの深い結びつきが長年疑われています。
そして、その背後で独裁政権を懸命に支えてきた中国。

確かに、米国には資源利権という思惑もあるでしょう。

しかし、ベネズエラ国民が今、
心から期待を寄せているのは、
命がけで国のために活動し、
先日ノーベル平和賞を受賞した、
マリア・コリーナ・マチャド氏です。
彼女は2024年の選挙でも圧倒的な支持を得ながら、
不正によって阻まれてきました。
マドゥロ氏拘束を受け、彼女はこう発信しました。

「ベネズエラは必ず自由になる」

日本のニュースだけを見ていては、
決して見えない景色があります。
かつて日本の手本にさえなった国が、
なぜここまで崩壊したのか。
そして今、
彼らが何を望んでいるのか。

この記事が、
報道のバイアスを少しだけ取り払い、
ベネズエラの真実の姿に思いを馳せるきっかけになれば幸いです。

いいなと思ったら応援しよう!