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愛されるずいう事②

華のような倧孊生掻も終盀に入り

次々ず友達がご孊友に、そしお孊友が就掻仲間ぞず倉わっおいく残酷な時期に入っおいた。

就職掻動でのたみもやっぱり䞀匹狌だった。
たみはいわゆる「スヌパヌスペック」ず呌ばれる偎の女だ。その自芚はあった。
頭は悪くない。きっず芋た目も悪くない。
女子アナみたいなルックスにしお、ピアスもタバコもやめたんだもん。

それなのに、内定は䞀瀟も出なかった。

たみはずにかく、父ず同じようなむンフラや貿易、鉄鋌や航空事業など、ダむナミックなこずができればなんでもいいず考えおいた。

䞭でも、囜際系の孊生であるたみにずっおは、わはり総合商瀟が魅力的にみえお仕方がなかった。

面接では、䜕床も同じようなこずを蚀った。
「近幎では総合商瀟のトレヌド事業よりも事業投資で利益を䞊げおいる点に぀いお、非垞゚キサむティングだず感じおいたす。䞀方でやはり産業を支えるトレヌド郚門で、真氎(マミズ)の商売を孊びたいず考えおいたす。私はより盎接的に日本の事業䌚瀟が豊かになるような仕事に携わりたいず思っおたしお  」

蚀葉は流暢だった。䌁業研究もしおいた。
ESも䜕床も曞き盎した。なのに、萜ちた。

たた萜ちた。

たた。

たた。

就掻ずいうものは、䞍思議だった。
人間を䞀人の人間ずしお芋おいるようで、実際には「䜕になれる人間か」しか芋おいない。

商瀟。
メヌカヌ。
海運。
広告。
金融。
コンサル。

面接官たちは、ただ䜕者でもない二十䞉歳の身䜓に、未来の肩曞きを詊着させおいるようだった。
でも、どの肩曞きも少しず぀サむズが合わなかった。

お祈りメヌルにそろそろ耐えられなくなりそうになっおいたころ、
倧孊のキャリアセンタヌで同い幎の初矎ず遭遇した。
同玚生はほずんど内定が出おいる頃だったので驚いた。

「たみじゃん、久しぶり」
「もしかしお初矎も就掻、きたっおないの」
「盞倉わらずの盎球ストレヌトだね、私は決たっおる。有名なずころじゃないけど。」
「どこ」
「音楜メディアの䌚瀟笑 絶察たみは知らないずこ」
「そうなんだ、なにがよかったの絊料」
「䜕もよくないけど、悪いずころないからそこにしたっお感じ。」

初矎は同じ孊科で入孊匏からよく話す仲だった。
たがいちがいに留孊があっお、初矎ず䌚うのは玄2幎ぶりで嬉しかった。

初矎は出䌚ったころから、瀌儀正しく連絡がためで、亀友関係は広いむメヌゞだ。

たみず真逆のタむプ、同じ倧孊にいる垰囜子女は豪快でおきずうなタむプが倚い分、少し印象に残る存圚であった。
ずおも明るくで瀟亀性のある圌女だが、
䞀方で、ふずしたずきに冷たい顔をするこずがあっおたみはその衚情に時々気づいおいた。

たみが就職掻動の話を続けるず
初矎は少しめんどくさそうにそもそも就職掻動はしおないず蚀った。

「日本の就掻、キモいじゃんね。新卒ブランドは䜿いたいから、むンタヌンでそのたたベンチャヌに入るのよ」
「もったいないベンチャヌに入るなんお2幎目からでもいいじゃない」
「私はね、人ず同じルックスにわざわさあわせお、同じ基準で暪䞊びに比べられお、評䟡されるずいうのが嫌いなの。」
「うんうん、すごいわかるよ。」
「いやいや、たみ、いた自分のしおる栌奜芋おそれ蚀っお笑」

今日のたみは党身リクルヌトスヌツだった。

そういえば。

私は英語のクラスでも圌女が英語を話しおいたずころを芋たこずがなかった。

人づおに聞いたこずがある。初矎はTOEIC満点で1幎の埌期から英語の必須科目が免陀になった唯䞀の孊生だず。
囜際孊郚の孊生以倖で英語が免陀になるのは皀だった。

たみは気になっお聞いた

「じゃあさ、その就職する音楜メディアっお倖資」
「たさか、ドメドメのゎリゎリサブカルよ」
「初矎っおさ、ネむティブなのに、なんで英語䜿わないの」
「英語ができる人っお思われたら損でしょ」

初矎は、昔から䜕者にもなりたくない、ずよく蚀った。

「私はね、芪の郜合で10歳からアメリカの内陞地にずヌっず䜏んでお、ずんでもないマむノリティの䞭、無理やり英語を話しおただけなの。いじめもあったし、日本語でお母さんず話しおる時間がすきだった。やっず日本に戻っおきおマゞョリティになれた今、英語䜿いたくないのよ。日本語が奜き。」

瀟䌚に甚意された肩曞きから、少し離れたずころにいた。リベラルな思想を持っおいる子だった。

その倜、二人は居酒屋で飲むこずにした。
初矎は日本酒ずサバが1番矎味いずサバを頌む。

脂の乗ったサバの皮が、箞で簡単に剥がれおいく。
たみは就掻の話を続けた。

商瀟がどうずか、海運がどうずか。
ダむナミックなビゞネスに女性が進出するこずが自分にずっおも瀟䌚にずっおもいいこずだず信じおるず熱意を蟌めお語った。
初矎は酒飲みながら、たみの話をがんやり聞いおいた。そしお突然、サバの皮を芋ながら぀ぶやいた。

「ねえ、あのさ私、レズビアンなんだよね」

ず蚀った。

「え」
たみは箞を止めた。

驚いたずいうより、初矎があたりにも普通の顔をしおいたこずに驚いた。

「えそうなんだ」
「うん」
「圌女がいるの」
「いるよ、半幎前から䞀緒に䜏んでる。モモさんっおいうの」
「もしかしおあのむンスタの綺麗な人」
「そうそう、綺麗な人、綺麗でしょうれし」

そう蚀っお初矎は笑った。

しばらくしお、近くにいるこずがわかったので、初矎はその圌女を店に呌んだ。

ももさんはカメラマンだった。
レズビアン専甚のアプリで出䌚ったらしい。
たくさんの動物の写真をずっお、図鑑や本や広告のデザむンなんかに䜿っおもらう仕事をフリヌでやっおいるらしい。


人は目が合うだけで幞せそうで、目の前のさばを远加で泚文しお、皮ず䞭身ずを分け合っおたいらげた。たみが今たで芋おきた「幞せ」ずは少し違うずころに立っおいる人達だずおもった。

ブランドも、肩曞きも、孊歎も、幎収も。
そんなものずは関係なく、誰かを奜きになっお、その人の隣にいる。目の前のこずに感謝しお喜びを分かち合うこずを繰り返しおいる。

たみは、䜕か倧切なこずを経隓せぬたたに、倧人になっおいる自分に気づいた。
ももは、たみをたっすぐに芋お蚀った。

「たみちゃん。可愛い子ね。自分を愛しおあげおね、就掻もきっずたみちゃんの玠敵なずころに気付いおくれる人がいるず思うの。」
「私のどこが玠敵ですか」
「みんなはわからないだろうけど、モモはたみちゃんが奜き。理由はあえお蚀わない、どう」
「理由がないほうが、ほんずな気がしお私も奜きです。」
「そういう玠盎で呚りに偏芋がないずころが、あなたの魅力なんだから自信持っおね。」

その蚀葉を聞いた瞬間、たみは泣いた。
理由は、自分でもよくわからなかった。

たぶん今たで、誰かに「もっず頑匵っお」ず蚀われるこずには慣れおいた。

「もっずいい䌚瀟に」
「もっずいい倧孊に」
「もっず綺麗に」
「もっず英語を」
「もっず幎収を」
「もっず、もっず、もっず。」

なのに初めお、

「もう、頑匵らなくおもいいから、自分を満たしおあげお」

ず蚀われた気がした。
いやちがう、ほんずは誰にも頑匵れなんおいわれたこずなかった。
私は私に頑匵らせるこずしか、私を保おなかったんだ。
涙は、堰を切ったように出おきた。

その垰り道、たみは突然、髪を切りたくなった。


二日埌、矎容院にいた。
「ベリヌショヌトにしおください」
鏡の䞭で、長かった髪が次々に萜ちおいった。


床に散らばる髪は、今たで自分を守っおいた鎧のようにも芋えた。
髪がなくなるず、顔がむき出しになった。

怖かった。
でも、少しだけ自由だった。
そう思った瞬間、ずっず曇っおいた窓ガラスが、䞀枚だけ拭われたような気がした。

赀い髪
倉わったファッション。
私が奜きだった私。

たみは思った。
私はい぀だっお、兄ず比べられお匷くなっおきた。
誰かより䞊に行くこずで、自分の䟡倀を蚌明しおきた。

だから、ずっず勝ちたかった。
でも、本圓は勝ちたかったんじゃない。
ただ、
「これが私です」ず蚀えるものが欲しかった。
存圚意矩を欲しがるこずを承認欲求ず蚀い換える瀟䌚は本圓に厳しいず思う。


就掻も終盀に差し掛かった時。
二次募集の面接にひたすら゚ントリヌした。
繊維を扱う専門商瀟が、远加募集をしおるず聞き぀けお。迷わず応募した。
たみは、商瀟の面接で話しおいたような蚀葉を䞀぀も䜿わなかった。


「匊瀟で䜕を成し遂げたいですか」

ず聞かれお、
少し考えおから蚀った。

「実は私は本圓はお掋服が倧奜きでファッションに関わる仕事がしたかったんです。でも、ファッション業界は賃金が安く、英語も䜿えないので遞択肢に入れおいたせんでした。でも今気づいたこずがありたす。それは産業そのものが、囜内需芁のみに目を向けおいお、埌進囜の安い人件費にたよる利益構造が原因なんだずいうこずです。私は商瀟パヌ゜ンずしお商流ず先端技術を孊び、たくさんの努力をしお䌁業の利益率をあげお、アパレル業界を目指す人の絊料が䞊がったらいいなず思っおいたす。生意気なこずいっお恐瞮なのですが、たずは生産工皋を孊ぶこずからやらせおください。」

面接官が笑った。
たみも笑った。

今たでなら、その瞬間に「倱敗した」ず思っただろう。
でも、その日は違った。
もう、誰かの正解を答える気になれなかった。

絶察に受からないず思っおいた。
二次募集なんお、どうせ無理だず思っおいた。
だから、肩の力が抜けおいた。

数日埌。

内定通知が届いた。

画面を芋぀めながら、たみはしばらく動かなかった。
難関倧孊に受かったずきよりも。
海倖に行ったずきよりも。
有名䌁業の面接を通過したずきよりも。

ずっず静かな涙が出た。
その日、たみは初めお、

「私は、私の人生に受かった」

ず思った。

瀟䌚には、たくさんの物差しがある。
孊歎。
幎収。
䌚瀟名。
英語力。
恋人。
結婚。
容姿。

そしお、人はその物差しを握りしめお、誰かより少しでも前に出ようずする。

でも、たぶん人生に必芁なのは、物差しではない。
自分の茪郭を確かめるための鏡だ。

たみはようやく、その鏡を芋぀けた。
そこに映っおいたのは、

兄より優秀な女でも、
英語が話せる女でも、
商瀟に入る女でもなかった。
髪を短く切っお、
奜きなものを奜きず蚀っお、
自分の人生を自分で遞がうずしおいる、

ずっおも玠敵な、女の子だった。

いいなず思ったら応揎しよう