人見知り警戒センサー、モードチェンジ!
オレは警戒センサーを「仕事モード」に切り替える。
前方に知り合いの背中発見! ヨシ!
追い付かないように、歩調を緩める。
最寄り駅から会社までは、まだオレのターン。
改札口を一歩出ると、オレは変わる。
都会の朝に紛れて、心にグラデーションをかけていく
誰だってそうだろう?
「ヒツジの皮を被ったオオカミ」のつもりかって?
そんなんじゃない。
オレが隠すのは、「人見知り」。
オレは、「ギョウザの皮をかぶったワンタン」。
ワンタンだけど、餃子のフリしてる。
見た目はたいして変わらない。
執務室に入ると、明るく同僚に声をかける。
「おはようー! 元気?」
彼は、笑いを嚙み殺した顔で、返してくる。
「役員会での話、聞きましたよ。あれ、ホントですか?」
「早いね、結果オーライだよ。予算はとれたから!」
これはワンタンから、ちょっと具がはみでた案件のこと。
役員会で、プロジェクト予算獲得のためのプレゼンをやった。
オレは、作りこんだスライドで、ひととおりの説明を終えると、
唐草模様の風呂敷に包んだ300ページの資料を、
バンと机に叩きつけて、結び目をほどきながら言った。
「これはスクリーンだけでは伝わらない、チームの思いなんです。
スライドの裏側には、これだけの思いがあるんです」
そんなことは、これっぽっちも思ってない。
「ロジック」のあとに、「感情」でひと押しすることが目的。
分厚い資料だって、関連資料の寄せ集めを、
大きなフォントと片面印刷で分厚くみせたモノだ。
ポカンとする役員たち。
間をおいて、専務が言った。
「せっかくだから、その資料を回覧してくれないか?」
この時ほどホっとしたことはない。
風呂敷から出した資料が、役員の間を回っていく。
危ないところだった。
見られるとは思ってなかったから、
当初は、白紙のコピー束に、表紙だけを載せる予定だった。
オレは餃子になりたいわけじゃない。
ワンタンのままでいる。だから、餃子のフリをする。
ときどき具がはみ出しても。
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