職場のバグ|物語を通じて子供の心を育む話〜「息を引き取る」を加えてみたら?
オフィスで昼食を終えて、自席で珈琲を飲みながら考え事をしていると、後輩社員のミヤケさんがやってきた。
「ケイメイさん、郵便物が来てましたよ」
「わざわざ、ありがとう。ねぇ、ちょっと聞いていい?」
「なんですか?」
「『病院で息をひきとりました』ってフレーズって、結構、強烈なものがあると思わない︖」
「えっ︖」
「今ね、こどもの情操教育について考えてたんだよ。ほら、ミヤケさんの⼦供ってまだ小さかったよね。『本読んでー』ってせがまれたりするでしょ︖ 『戦争と平和』とかさ」
「そんなの読まないよ︕ ふつーのお話︕」
「まぁまぁ、例えばさ。⼦供にお話をせがまれたときにね、話の最後に、このフレーズをつけてあげるんだよ」
「なんですか?」
「そうだな。『桃太郎』だったら、話の結びは『桃太郎は⻤を退治して、平和に暮らしましたとさ。…その夜、⻤たちは病院で息をひきとりました』みたいに使うわけ」
「…」
「鬼たちにしてみれば、ひどいめにあってるわけでしょ。殴られて血だらけだったり、キジに目玉をくりぬかれたり。でも、『病院で息をひきとった』ということは、緊急搬送で、ちゃんと病院に運ばれて、手を尽くしてもらったんだよ。桃太郎が笑ってる裏で、消えていく命のドラマがあるんだ」
「それは…」
「『⾦太郎』だったら、『⾦太郎はクマと相撲をして勝ちました。…その夜、クマは病院で息をひきとりました』みたいな感じかな。⾦太郎としても『オレ、ちょっとやりすぎちゃった』みたいに。物語に微妙な余韻が残るんだけど、どう︖」
「ちょっと待って! クマはたしか、仲良くなるんだよ」
「でも、脳が受けたダメージは、あとからくるからね。金太郎が笑ってるときに、クマは手術台で戦ってたんだ」
「イヤだよ︕ ヘンな⼦になっちゃうじゃん︕」
「でも、相⼿のことも考えるやさしい⼦にならないかな︖」
「トラウマになる!! そういえば、この前、絵本を指さして『この⼈、死んでるの︖』って⾔うからびっくりしたよ」
「えぇっー︕ そんな気味の悪い絵本なんてあるの︖ リアルで息をひきとってる」
「違うの! 『シンデレラ』って⾔えなくて、『死んでるの』ってなっちゃったのよ」
「あぁ、なるほどね。シンデレラのことか。それは、かわいい言い間違いだね。『シンデレラは王⼦さまと結婚して、いつまでも幸せに暮らしましたとさ…という夢を見ながら、病院で息を…」
「ひきとらないよ︕︕」
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