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神話誕生~世界を滅ぼした言葉について語ろうか

黒い溶岩のような台地に、小さな赤い花が咲きだしていた。
温かい日差しが、小高い丘に立つ女性像に降り注いでいる。
それは、片手にトレーを持った若い女性の像

像の足元には、「長老」と呼ばれる老人が座っている。
丘のふもとから、彼のもとへと子供達が駆け上がってきた。

「ちょーろー、こんにちわ。おはなしをきかせてください」

「こどもたちよ。よく来たね。それじゃ、きょうは、この女性の話をしようか。この世界を作り変えることになった女性のお話じゃ。これこれ、土を食べてはいけないよ」


むかしむかし、このあたりは「トーキョー」と呼ばれていました。そこには最大級の「ファミレス」とよばれる場所があったのです。

ある日のこと、「ファミレス」が開くと二人の客がやってきました。注文をとりにいったのは、この女性、マミさんです。

「ご注文は何になさいますか?」と聞くと、二人のうち片方は、「オレ、おまえと同じでいいや」と言いました。

もう一人は、「じゃ、カレーライスふたつください!」とマミさんに注文します。

マミさんは気が利く女性でした。

だから「オレ、おまえと同じでいいや」と「カレーライスふたつ」をあわせて2皿×2人、すなわち4つのカレーライスがテーブルに並ぶことになりました。

次に、同窓会帰りの50人が訪れました。

そして同様に「おれ、幹事と同じでいいよ」と口々に言ったのです。
幹事は「じゃあ、カレーライス50皿ください」とマミさんに言いました。

気の利くマミさんによって、そのオーダーは、50人×50皿…計2500皿のカレーライスになりました。

しかし、偶然とは恐ろしいもので、その日はさらに50人ずつ5組の同窓会があり、しかも幹事同士が友達だったのです。

彼らは口々に「オレ、幹事と同じで」と言い、1組目の幹事が「じゃ、うちのグループはカレー50皿で!」とオーダーしました。

すると隣のグループの幹事も「あ、じゃあ、うちもあの幹事と同じで!」となり、連鎖的に5組の幹事全員が「前の幹事と同じで」と注文したのです。

こうして最初のグループとあわせ、6組300人の注文が、ひとつに繋がってしまったのです。

気の利くマミさんの脳内では、「1組目の50皿の注文が50人で、2組目の幹事も同じでしょ。50人の幹事に連携して、それが6乗になるから…」と気が利く処理がされました。

マミさんは無駄に計算が得意だったのです。
その時点でカレーライスの数は156億2500万皿になっていました。

地球の全人口の倍以上のカレー。それはもうファミレスのキッチンに収まりきるようなカレーの量ではありません。

オーダーが通って、しばらくすると厨房からフロアの床へとカレーのさざ波が流れ出してきました。

そして、大きな叫び声が聞こえたかと思うと、瞬く間にすごい勢いでカレーがあふれだし、店内の客を押し流していったのです。

人々は迫りくるカレーから逃げまどいました。
熱く煮えたぎったカレーは湯気を吹き出しながら、溶岩のようにゆっくりと店の外へとあふれ出しました。

それでも責任感の強いシェフはカレーを作り続けました。
店の裏口には、使命感に燃えた納品業者のトラックの列が次から次へと続きます。

流れだしたカレーは、民家を、車を、ビルを飲み込み、電柱をなぎ倒しながら街を黄土色に染めていきました。誰もカレーの侵攻を止めることはできません。

やがて「トーキョー」はカレーに飲み込まれてしまいました。
わずかに高層ビルだけをのこして。

関東平野、カレーに沈没。

しかし、それでもカレーの勢いは収まることなく、すべてを飲み込みながら海へと流れ込んでいきました。太平洋の海水は勢いよく湯気を吹き出しながら、塩水をカレー味へと変えていったのです。


人々は、カレーになった海のことを、「インド洋」と呼びました。

-完-

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