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エッセイ😌|夏のプールで貝殻を拾ってる

気温は30℃を越えてた。

「空色」とラベルが貼られた絵の具をそのまま塗りたくった空に、白いチューブを絞った入道雲が浮かんでる。Tシャツに、水着のパンツを履いて、じりじりと肌を焼かれながら、ペダルを漕いだ。

蝉の鳴き声に囲まれて、建長寺の坂を上がり切ったら、八幡宮へと続く急な下り坂は惰性で降りていく。江ノ電の線路を越えて、由比ガ浜に出ると、もう夏の絵に入り込んでる。

ヴィーナス・カフェでハンドルを切ったら、「鎌倉海浜公園水泳プール」だ。僕はこのプールを馴染みきった「鎌倉市民プール」と呼んでいる。プールの奥には切り立った崖があり、目の前は国道を隔てた海だ。

かつて国体会場だったプールの面影は、もう殆ど残っていない。

展望台みたいに高い飛び込み台があったプールはとっくになくなり、バスタオルを敷いて日向ぼっこしてたコンクリート製の広い観客席も消えた。

50mプールも児童プールも崖崩れのために利用不可。受付と脱衣所があった建物も取り壊されて、団子を買ってた売店も消えた。

今では受付と脱衣所は簡易プレハブ。使えるプールは、25mプールと幼児プールだけだ。4つのうちの2つだけ。「いつか」の閉鎖が訪れるまで、それほど時間もなさそうだ。

ロッカールームもなくなったから、受付を終えて着替えたら、Tシャツと履物をリュックに詰め込んでプールサイドへと進む。そして、人影もまばらな25mプールを、ゆっくりと平泳ぎで進む。水は暑さに負けて、冷たさを忘れかけてる。

プールの底は空色に塗られている。ゴーグルで水に潜ると、空色の上で太陽の波紋が不規則に揺れている。

誰にでも、地層みたいに記憶が重なっている場所がある。僕にとっては、このプールがそうだ。

親に連れられてきたこと、好きな人といたこと、子供と一緒に遊んだこと。そこには、さまざまな記憶が貝殻の化石みたいに埋まっている。

たくさんの貝殻が埋まっている層もあれば、何もない層もある。消えた飛び込み台も、使えなくなった50mプールも、貧血になったことも、化石の貝殻になって埋まってる。大きさも種類もばらばらだ。

プールを泳ぎながら、僕は貝殻を掘り起こしてる。拾い上げて、少し眺めて、またそこに沈める。そして水の中を進んでいく。

新しい地層は、来年もここに重なるのかな。
埋もれて化石になっていく貝殻は、まだあるのかな。

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ケイメイ 最後までお読みいただきありがとうございました。チップしちゃおうかなと思ったら、迷わなくていいんです。私がそっと背中を押しますからね!