私に「かるぱっちょ」とささやかないで
オトナになってから随分と経つけど、ようやく「克服できたかな」と思うことのひとつが、「カルパッチョ」。あの油漬けの刺身のこと。
味はおいしいから好きなんだけど、「発音」がキツイわけ。恥ずかしくてずっと口にできなかった。
「カルパッチョ」の持つ独特で異様な語感。
「か・る・ぱっ・ちょ」、このなんかバカにした感じ。大阪の売れない芸人さんが、コントのオチで、両手を前に開いて「カルパッチョ!」と強引に終わらせる言葉みたいだ。
子供の頃から、この言葉に馴染んでいれば抵抗はなかったのかもしれない。
でも、「カルパッチョ」はある日、突然に現れた。
日本語の「かな」であれば絶体に並ばない順番。まともなヒトが不用意に口にする言葉じゃない。
想像してみてほしい。
例えば電車で座っていて、隣の知らない人が、突然、耳元で、「カルパッチョ」とささやいてきたら?
あるいは道を歩いていたら、やたらガタイのいい外人が指さしてきて、「カルパッチョ!」と怒鳴りながら、追いかけてきたら?
コンビニのレジで会計しようとしたら、店員さんが、あきれるように肩をすくめて、「カルパッチョ」と言ってきたら?
嫌でしょう? イヤなんだよ。「カルパッチョ」っていうのは、そういう異質な言葉なの。「語感」の暴力だと思う。
それほど嫌だった「カルパッチョ」。
人前で「カルパッチョ」と発音するときは、「笑われないかしら」って、ドキドキする。だからレストランでは、「これ」ってメニューを指さした。料理界のキラキラネーム。
いまでは馴染んでいるから、誰かを指差して「カルパッチョ」と呼ぶこともできるし、「おまえのかーちゃん、カルパッチョ!」と囃すことだってできる。
でもね、きっと自分と同じように、悩み苦しんでいるヒトがたくさんいるんじゃないかと思うんだよ。だから、そういう方たちへのアドバイスのためにこれを書いてます。
悩んでいるヒトに伝えたい。
そのうち慣れるよ。
じゃ、カルパッチョ!!
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