#36万葉集の生活史 万葉人も鮎が好き
■鵜飼に託す鮎への期待
海の魚は、あまり詠まれない。
鯛のように「食べたい」と願われることはあっても、
それをどう取るか、どうやって食べるかは、あまり歌にならない。
けれど、鮎は違う。
年のはに
鮎し走らば
辟田川
鵜八つ潜けて
川瀬尋ねむ
鵜川立て
取らさむ鮎の
しが鰭は
我にかき向け
思ひし思はば
どちらも大伴家持の歌だが、
ここには魚そのものよりも、鵜飼の様子が残っている。
万葉集では魚はそれほど多く詠まれない。
それでも鮎だけが、こうして繰り返し現れるのは、
それが川の中で、人の手の届く場所にあったからだろう。
■古代の鮎の加工品
鮎は取ったからには、食べられなければならない。
『延喜式』には、鮎を加工した食品がいくつも記されている。
煮塩年魚、塩漬年魚、押年魚、火乾年魚。
「年魚」は鮎のことだ。
川で捕られた魚は、その場で食べられるだけではない。
塩で煮て、干し、形を変えながら、別の場所へと運ばれていく。
これらは税として各国から納められたという記録が残る。
歌には残らない鮎の加工方法が、こんな所からもわかるのだ。
