一人だったら、たぶん行かなかった。
仕事で寝不足。
天気予報は雨のち曇り。
正直、今日はやめてもいい……。
そんな朝もありました。
でも、チームメイトが待っている。
だから荷物を積んで出発する。
サーキット走行日の朝は早く、出発が4時前ということもあります。
しかも、朝起きてバイクだけ積めばいいというものでもありません。
マシンの整備。
工具の確認。
タイヤや装備の準備。
忘れ物がないかのチェック。
前日からある程度やっておかないと、とても間に合いません。
仕事が立て込んで寝不足のまま準備をして、ようやく全部積み終えたころには、
「まだサーキットにも着いていないのに、もう疲れたなあ」
なんてこともあります笑
それでも、毎回出発できました。
一緒に走るパートナーがいたからです。
写真は、HRC GROMで初めてサーキットを走った日です。
ここから、二人の耐久レースが始まりました。
私たちが出場しているのは、1台のバイクを複数のライダーが交代しながら走る耐久レースです。
そもそも一人では出場できません。
自分が体調を崩したら、相方がどれだけ準備万端でも出場できない。
レース中に転倒してマシンを壊してしまえば、相方が走るはずだった時間を失ってしまうかもしれません。
一人で走っているように見えて、実はずっと二人で走っている。
耐久レースには、そんな不思議な感覚があります。
もしこれが、自分一人で出場するスプリントレースだったらどうだったでしょう。
レースそのものは楽しいと思います。
でも、
仕事で寝不足。
外を見ると雨。
まだ暗いうちに家を出なければならない。
そんな朝に、
「今日はやめておこうかな」
と思ったことも、きっとあったと思います。
自分一人のことなら、休んでも誰にも迷惑はかかりません。
また次に走ればいい。
そう考えていたかもしれません。
でも耐久レースには、相方がいます。
自分が行かなければ、その人も走れない。
「今日はちょっと眠いからやめます」
とは、なかなか言えません笑
もちろん、それを義務のように感じていたわけではありません。
むしろ不思議なのは、
「相方も来るんだから、自分も行こう」
と思って荷物を積み、車を走らせてしまえば、気持ちがだんだん前向きになってくることです。
サーキットに着けば、もう眠いとか雨だとか言っていられません。
バイクを降ろす。
タイヤウォーマーを巻く。
工具を並べる。
受付へ行く。
そして走行が始まるころには、
「せっかく来たんだから、少しでも速くなりたい」
になっています。
我ながら単純です笑
人は、自分のためだけでは頑張れない日があるのかもしれません。
でも、誰かと約束していたり、一緒に目指すものがあったりすると、普段なら出せない力が出ることがあります。
耐久レースを始めて、それを何度も感じました。
相方が走っているときは、
転ばないで帰ってきてくれ。
少しでもいい順位で戻ってきてくれ。
いや、順位はいいから、とにかく無事に帰ってきてくれ。
いろいろなことを考えながら待っています。
そしてピットインしてきたバイクを受け取り、今度は自分が走る。
自分が戻れば、また相方が待っています。
一人でタイムを出す楽しさとは、少し違います。
自分の走りが、そのまま次の人へつながっていく。
それが耐久レースの面白さなのだと思います。
振り返ってみると、
「今日はちょっと厳しいな」
と思った日は何度もありました。
それでもサーキットへ行きました。
行けば走りました。
走れば、やっぱり楽しかった。
そして少しずつ、できなかったことができるようになりました。
もし一人だったら。
たぶん、何度か行かなかったと思います。
スプリントレースだけだったら、ここまで続いていなかったかもしれません。
耐久レースだから続けられた。
というより、
一緒に走る人がいたから、続けられたのだと思います。
一人では行かなかった朝に、
誰かが待っていたから出発できた。
それだけのことなのですが、
その積み重ねが、今の自分をずいぶん遠くまで連れてきてくれました。
