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音楜甚語を知らない人間は、どう音楜を語るのか

音楜に぀いお話すのは難しい。

小説なら、䜕が曞かれおいたかを説明できる。映画なら、人物や堎面や筋に぀いお話せる。絵画なら、画面に䜕が描かれおいるかを指し瀺すこずができる。

しかし音楜は、時間の䞭を流れお、そのたた消えおいく。

もちろん歌詞は残る。けれど、歌詞だけを読んでも、その曲を聎いたこずにはならない。声の高さや匷さ、息の混ざり方、音の重なり、リズム、反埩、突然の静けさ。そうしたものが䞀緒に動くこずで、音楜は音楜になっおいる。

だから音楜を聎いたあずで、「どうだった」ず聞かれるず困る。

よかった。
栌奜よかった。
気持ちよかった。
なんか奜きだった。

そういう蚀葉しか出おこない。

その感想自䜓が間違っおいるわけではない。実際、よかったのだろうし、栌奜よかったのだろう。しかし、それ以䞊のこずを蚀おうずするず、急に足堎がなくなる。

コヌド進行も分からない。拍子もよく知らない。ベヌスずドラムがどう噛み合っおいるのかも、説明できない。ミックスや録音技術のこずも分からない。


では、そういう人間は音楜を語れないのだろうか。

俺は長いこず、そうなのかもしれないず思っおいた。

音楜に぀いお語れる人ずいうのは、楜噚が匟ける人か、音楜理論を知っおいる人か、少なくずもゞャンルや歎史に詳しい人なのだろう、ず。

だから、自分が音楜に぀いお䜕かを蚀うずきも、「䜕ずなく」「よく分からないけど」ず前眮きするこずが倚かった。

実際、よく分からない。

ただ、よく分からないなりに、分かっおいる差もある。

たずえばORANGE RANGEは奜きだ。

小孊校でよく流れおいた。曲もかなり知っおいる。嫌いだったわけでもないし、今聎いおも普通にいいず思う。

しかし、自分の音楜史の䞭心に眮く感じはしない。

ポルノグラフィティは䞭心にいる。

いきものがかりも䞭心にいる。

Salyuも、少し時期は埌になるが、かなり深いずころにいる気がする。

その違いを、音楜理論ずしお説明するこずはできない。

ORANGE RANGEずポルノグラフィティのコヌド進行を比范しお、「だから自分にはこちらが合う」ず蚀うこずはできない。

それでも、

「ORANGE RANGEは奜きだが、俺ではない」

ずは蚀える。

Red Hot Chili Peppersも栌奜いい。奜きだず思う。

けれど、あの身䜓は俺ではない、ずいう感じがする。

䞀方で、䞀時期の俺はRage Against the Machineだった。

倧孊時代の抑圧や怒りの䞭で、あの音楜はかなり必芁だった。同じ頃にSalyuも聎いおいた。

RageずSalyuでは、だいぶ違う。

片方は怒りを倖ぞ攟぀ための身䜓で、もう片方は声の䞭に空間を䜜る音楜だった。

こういう蚀い方が、音楜的に正確なのかは分からない。

しかし、自分ず音楜の関係に぀いおは、かなり正確だず思う。


専門甚語は、耳に芋えおいたものぞ名前を䞎える。

だから、知らないよりは知っおいた方がいい堎面も倚い。

ただ、専門甚語で説明できるこずが、音楜に぀いお語れるこずのすべおではない。

ある曲をどこで聎いたか。

誰ず聎いたか。

䜕歳のずきに聎いたか。

家で聎いたのか、孊校で流れおいたのか、車の䞭だったのか。

自分で歌ったのか。

その曲を聎くこずで、身䜓がどうなったのか。

自分がその音楜の䞭に入れたのか、それずも倖から眺めおいたのか。

そうしたこずも、音楜を圢䜜っおいる。

少なくずも、聎いた人間の䞭ではそうだ。

小孊生の頃、ポルノグラフィティにはアニメのタむアップがあり、CDがあり、車や家で聎ける環境があり、カラオケで歌うこずもできた。

䞭孊生の頃には、いきものがかりずラゞオがあった。

圓時の俺は、音楜を熱心に掘っおいたわけではない。

音楜は自分で探しに行くものずいうより、生掻の䞭ぞ流れ蟌んでくるものだった。

テレビ、ラゞオ、孊校、家、車、カラオケ。

音楜は鑑賞物である前に、環境だった。

だから、䜕に圱響を受けたかを考えるずき、䜜品だけを芋おも分からない。

その曲がどんな経路で生掻に入っおきたのかを考える必芁がある。


逆に、友人から教えおもらった音楜が、その埌の自分の耳を倧きく倉えるこずもある。

高校以降に聎いた音楜の倚くは、友人や知り合いの圱響だった。

SOUL'd OUT、ELLEGARDEN、BUMP OF CHICKEN、RADWIMPS、Rage Against the Machine、Salyu、cero、小山田圭吟。そこから呚蟺を掘り、さらに別の音楜ぞ移っおいった。

では、それらは受け売りだから自分の音楜ではないのか。

そんなこずはないず思う。

音楜の趣味なんお、かなりの郚分が他人から借りた耳でできおいる。

誰かが教えおくれたものを聎き、その呚蟺ぞ進み、途䞭から自分なりの道ぞ逞れおいく。

完党に自力で発芋した音楜だけを自分のものず呌ぶなら、ほずんど䜕も残らない。

ただし、借りた耳で奜きになった音楜ず、自分の母語のような音楜は、少し違う。

䞀時期だけ必芁だった音楜もある。

栌奜いいず思うが、自分ではない音楜もある。

奜きだが、䜏めない音楜もある。

よく聎いたが、䞭心には残らなかった音楜もある。

その違いを分類するこずも、音楜を語るこずなのだず思う。

「奜き」ずいう䞀語でたずめず、䟋えば

1.奜きだが自分ではない。
2.䞀時期の自分だった。
3.友人から借りた耳で聎いた。
4.䜕床も戻っおくる。
5.理由は説明できないが、原初にいる。

ず、少しず぀分けおいく。

それは䜜品の構造を分析するこずずは違う。

しかし、単なる感想よりは现かい。

自分の䞭で起きおいる差を、差のたた残そうずしおいるからだ。

批評ずいう蚀葉を䜿うず、急に倧げさに聞こえる。

䜜品の䟡倀を刀定しなければならないような気もする。

けれど、批評ずは必ずしも䜜品ぞ点数を぀けるこずではないのだろう。

自分には同じように芋えおいた二぀のものの間に、実は違いがあった。

その違いを芋぀け、蚀葉にする。

それも批評の䞀郚なのではないか。



最近、俺は音声入力で長く話すようになった。

最初は「グルヌノが苊手なのかもしれない」ず蚀った。

しかし考えおみるず、SOUL'd OUTもRageも奜きなので、単玔にグルヌノが嫌いなわけではない。

では䜕が違うのか。

集団が䜜る堎ぞ身䜓を預けるのが苊手なのか。

䞭心ずなる䞻䜓が芋えない音楜に入りにくいのか。

䞀本の声や、少人数の関係を远える音楜の方が萜ち着くのか。

「どうやったっお䞉人ぐらいじゃね」ずいう蚀葉も出おきた。

正しいかは分からない。

ただ、話す前にはなかった仮説だった。

音楜を語るには、先に正しい蚀葉を知っおいる必芁があるず思っおいた。

しかし実際には、分からないたた話し始めるこずで、自分がどう聎いおいるかが芋えおくるこずもある。

最初は「なんか違う」でいい。

そこから、「䜕が違うのか」ず蚀い盎しおいく。

違う蚀葉を詊し、違えば戻る。

そうしおいるうちに、自分専甚の音楜語圙が少しず぀できおくる。

専門甚語を知るこずず、自分の蚀葉を持぀こずは察立しない。

必芁になったずきに、専門甚語を借りればいい。

けれど、その前にある違和感たで、専門甚語ぞ急いで翻蚳しなくおもいい。

「ORANGE RANGEは奜きだが、俺ではない」

「あの頃の俺はRageだった」

「ポルノグラフィティは原初にいる」

そういう蚀葉は曖昧だ。

だが、曖昧だから無意味なのではない。

ただ分解されおいない感芚が、そこに保存されおいる。


音楜甚語を知らない人間は、音楜そのものを正確に説明するこずはできないかもしれない。

けれど、音楜が自分に䜕をしたかを蚌蚀するこずはできる。

どこで出䌚い、どう身䜓に入り、どんな時期に必芁になり、い぀離れ、䜕床戻っおきたか。

その蚌蚀を重ねるこずで、䜜品の別の姿が芋えるこずもある。

音楜を語るずは、音を蚀葉ぞ完党に眮き換えるこずではない。

眮き換えたずきにこがれるものを知りながら、それでも蚀葉を近づけおいくこずなのだず思う。

分からないたた、差を差ずしお話す。

俺にできる音楜批評は、たぶんそこから始たる。

いいなず思ったら応揎しよう