#創作大賞2026 #エンタメ原作部門 納豆チャンピオンへの道 第5章|How To Make Natto-Champion|怒涛の第1R! 仕組まれた大人の事情
横一列に並んだテーブルに上に、各人の前にクロッシュが被されたトレーが置かれた。
(いよいよ始まる)
今まで緊張していたはずなのに、スタート地点に立った瞬間、まるで子供の運動会に出場する保護者競技のようなワクワク感が芽生えてきた。
ジモンさんの合図で全員一斉にクロッシュを開けた。
目の前には一人前のごはんと、納豆と箸が添えられていた。
急いで納豆の蓋を開け、タレと辛子の印字を確認しながら、納豆へ投入。
普段なら納豆を40回程度かき混ぜるが、そんな余裕はない。
10回かき混ぜた納豆をご飯に乗せて、急いで食べ始めた。
(ん?至って普通の小粒納豆…いきなり難問だな…)
と思いっていると、すぐ横で「ガシャン!」と茶碗をテーブルに置く音が響き、振り向くと三井田さんが猛ダッシュをした。
(嘘だろ!?もう完食?
まだ咀嚼すら終わってないのに、もうわかったのか?)
急に焦りを覚えて、残りのごはんを口の中に放り込み、モグモグしながらダッシュした。
しかし走り出したころには既に、三井田さんがパネルからラベルを一枚ゲットして、回答席へゆっくり歩いていた。
僕は銘柄がわからないまま、パネルの前に立ち、隅々までパネルを見渡して100銘柄の中から、数ある小粒納豆を探した。
しかしその脇で、三井田さんが「旭松食品の納豆いち」と回答し、見事正解した。
その頃、ようやく高野さんがパネル前に到着したが、三井田さんが正解したのを見て、肩を落とした。
(マジか!一発で正解?!
データベース量、味覚、早食い、徒競走、この4拍子揃わないと、
この競技には勝てない)
さっきまでの運動会気分が一瞬で粉砕され、焦燥感に変わった。
しかし、そんな感傷に浸る時間もなく、すぐに2問目が用意された。
しかしここで急遽ルール変更。
大食い選手権ではないので、立て続けにごはん2杯目は無理と言うことで、2問目からは納豆のみ出題へとルールが変更された。
確かに早く勝ち抜けしないと、納豆をたくさん食べなければならなず、ボディーブローのように体へのダメージが大きくなる。
そして仕切り直しをして第2問。
クロッシュを開け、納豆容器を見た瞬間、閃いた。
(お!キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! あの納豆メーカーだ!)
さらに納豆のフタを開けるとひきわり納豆だった。
タレと辛子を混ぜて一口食べた。
(あの納豆に間違いない!)
と、思った瞬間、またしても三井田さんが怒涛の勢いで走り出した。
僕は二口で完食して、3秒遅れて走り出した。
(勝負はこれからだ!)
二人でパネル前に立ち、正解のラベルを探した。
(あった!)
と、思った時には、三井田さんが先にラベルに手を伸ばし、かるた競技のように、一瞬でラベルを剥がした。
(ヤラレタ!先を越された!)
再び三井田さんはゆっくり回答席に向かった。
「保谷食品のゆずから!」
三井田さんは自信たっぷりに答えた。
「三井田君、正解!一位勝ち抜け!!」とジモンさんが叫ぶと、ギャラリーから歓声と拍手が沸き上がった。
第1ラウンドで三井田さんが脱落することはないと思っていたが、圧巻の一位勝ち抜けに脱帽した。
0.1秒差で、ラベルを奪われたが、三井田さんの足元にも及ばず、格の違いを見せつけられ完敗だった。
しかも2問目も3番目に高野さんがスタートしていたが、北海道の古本さんと女性の野口さんはスタート地点から一歩も動いていなかった。
(待てよ…この調子で行けば、第1ラウンドは勝ち抜けるかもしれない)
と、気を引き締め、3問目に突入した。
よーい!スタート!
の合図でクロッシュを開けた。
(ん?今度は黒豆納豆だ!)
瞬時に脳内データベースから黒豆納豆を検索した。
納豆を3回だけかき混ぜ、一気に口の中に掻き込んだ。
納豆を完食して、モグモグしながら一番目に走り出した。
(たしかパネルには黒豆納豆は4銘柄あったはず)
と、考えながらゆっくり走った。
既にラベルの配置を2回確認して、特徴ある納豆を記憶していた。
既に三井田さんがいないから余裕だ…
と思いきや、すぐ後ろから高野さんが追いかけてきた。
(ヤバい!抜かれる!)
慌ててギアチェンジして、スピードを上げた。
二人同時にパネル前に到着し、4つの黒豆納豆のラベルを探した。
納豆を飲み込む瞬間、何やら異物の食感…
(ん?これはゴマか!?…てことは、アレだ!)
脳内データベースがスパークした。
(あった!)
パネル右上にあったそのラベルに手を伸ばすと、
右側に立っていた高野さんも手を伸ばし、揉み合いになった。
しかし、辛うじて僕がラベルをゲットした。
(やっと取れた!)
そして初めて回答席に向かい、息を切らせながらボタンを押した。
「蒲生さん!回答をどうぞ!」
と、ジモンさんがマイクを差し出した。
「お、奥野食品の、ブ、ブラック伯爵家」
と、咽ながら、回答した。
「蒲生さん!正解!」
(やった!一問ゲットだぜ!)
と、手で口を押さえながら、応援団に向かって思わずガッツポーズをした。
「がんも!いいぞ!その調子!!」
「すごーい!委員長カッコいい!!」
「あと一問、頑張ってー!」
と、応援団から熱いエールが贈られ、鼓動がさらに高鳴った。
すると
「どこでわかったんですか?」
とジモンさんから質問を受けた。
「黒豆にゴマが混ざっていたから…」
と、モゴモゴと答えた。
事前のアンケート調査では奥野食品の他の商品がリストにあったので、奥野食品のサイトから全商品を取り寄せていた。全国に黒豆納豆はいくつかあるが、ゴマが混ざっているのは「ブラック伯爵家」だけだった。
続いて4問目、と思いきや、ディレクターから思わぬ注文を受けた。
「すみませーん!今のシーンなんですけど、
良い絵が撮れてなかったので、『テイクツー』いいですか?」
「え?やり直しですか!?」
思わず眉をひそめ、怪訝な表情で答えた。
「蒲生さんが走り出してからラベルを取る所まででいいので、
もう1回お願いします。
古本さんも野口さんもラベル争奪戦に参戦して下さい」
(マジか!?これが「収録番組」の演出なのか…)
今度はADの合図でスタート地点から再度走り出すと、高野さんが僕を追い抜いた。
(おいおい。僕がラベルをゲットするんだからね!)
と、今度は僕が高野さんを追いかける展開になった。
パネルの前に立つと、高野さんは僕とのラベルの争奪戦をド派手に繰り広げ、シナリオ通りに最終的に僕がラベルをゲットした。
(さすが「おかめ」の回し者め。営業マンだから演技も上手いな!)
と、思わず苦笑いしてしまった。
遅れて走ってきた古本さんと野口さんは、ただ争奪戦を茫然と眺めるだけだった。
「カーーット!はい、オッケー!」
と、ディレクターが映像を確認しながら叫んだ。
こんなところでテレビ業界の大人の事情を突きつけられ、余計な体力を消耗させられるとは、まさかの展開だった。
そして迎えた4問目の前に異変を感じた。
既に4回走ったため体力が奪われ、さらにボディーブローが効いてきて、お腹も痛くなってきた。
(マズい。このままでは20代のパワーに負けてしまう)
一歩リードしているとは言え、2位勝ち抜けを目前に、完全に膝も笑っていた。
そして4問目の納豆が運ばれてきた。
(ん?なんだ?この強烈な納豆臭は…)
30℃の炎天下で用意された納豆は発酵が進み、通常とは違う食べ物になっていた。
第1章はこちらからどうぞ
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