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映画「グラン・ブルー」

映画「グラン・ブルー(Le Grand Bleu)」(1988年)を最近久しぶりに見ました。当時の思い出とともに、この作品への思いを綴ってみたいと思います。

私がこの映画を初めて知ったのは20代後半の頃。当時一緒に組んでいたバンドのキーボーディストの女の子に勧められたのがきっかけでした。彼女は芸術的な感性に溢れ、特に音楽の才能がずば抜けていました。ピアノは初見で弾きこなし、クラシック・ギターを始めればあっという間に上達。語学も堪能で、いつも英語のペーパーバックを持ち歩いているような子でした。

「大学で勉強したの?留学したことがあるの?」と尋ねると、「ううん、大学には行ってないし、外国にも行ったことがないんだけど、興味があって自分で勉強したの」と、自慢する風でもなく自然に答えていた姿を今でも覚えています。誕生日が同じだったこともあり、意気投合してよく一緒に飲みに行きました。しかし、バンド解散後に疎遠になってしまい、風の便りに彼女が亡くなったことを知りました。あまりに突然のことで、大きなショックを受けました。

映画そのものの素晴らしさ、映像の美しさはもちろんですが、彼女に勧められたという背景もあり、私の中で「グラン・ブルー」は特別な一作として刻まれています。今でも見返すたびに、海の青さと当時の記憶が重なり、切ない気持ちが込み上げます。

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■ジャック・マイヨール
物語は、実在したフリーダイビングの天才、ジャック・マイヨールにリュック・ベッソン監督が敬意を表して作り上げたフィクションです。

ベッソン監督の両親はスキューバダイビングのインストラクターで、彼自身も幼少期から海に親しんでいました。しかし17歳のときに、潜水事故によりダイバーへの道を断念。その失意の中で出会ったのがジャックの記録フィルムだったそうです。監督はそこから映画制作者の道を志し、長年の夢であった「イルカに魅了されたダイバーの物語」を、ジャック本人の協力を得て完成させました。

ライバルのエンゾ・モリナーリも、実在のダイバーであるエンゾ・マイオルカがモデルです。本作では少々コミカルで粗野な人物として描かれていますが、実際のエンゾも数々の記録を塗り替えたフリーダイビング界のレジェンドです。

ジャック本人は、人類史上初めて素潜りで水深100メートルを超える記録を打ち立てた人物です。日本で暮らした経験もある親日家で、トレーニングにヨガや禅を取り入れていたことでも知られています。晩年はうつ病を患い、2001年に自ら命を絶つという悲劇的な最期を迎えましたが、ジャックは生涯この映画「グラン・ブルー」を愛し続けていたといいます。

▼映画「グランブルー」(予告編)

■映画「グランブルー」の音楽
音楽を担当したのは、「レオン(Léon)」(1994年)など多くのベッソン作品を手掛けるエリック・セラ。セラは伝統的なオーケストラ編成よりも、独特のリズム感やエレクトロニックな音作りを得意とする作曲家として知られています。

サントラはすべてが素晴らしく、シームレスに続く音楽を聴いていると、映画のシーンが次々と浮かんでくるようです。

特に、深海の静寂を表すようなフレットレス・ベースの音色が、全編を通して非常に重要な役割を担っています。あの低い、独特のうねりがあるベース・ラインが、海の底の孤独と美しさを象徴しているように感じます。また、全体的にシンセサイザーのコードが鳴っているのも海の雄大さを表していると思います。

当時、私は知り合いの劇団の演劇音楽を作っていたのですが、この作品の音作りをすごく参考にしたのを覚えています。

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■イルカになりたい
よく「生まれ変わったら何になりたい?」と友人同士で話したりしますが、私はいつも「イルカになりたい」と言います。鳥のように空ではなく、イルカのように自由に海を泳ぎたいといつも思っています。なぜかイルカに憧れてしまうのですよね……。なので、映画のジャックの気持ちが痛いほど分かります。

エンゾは名声などに拘っていた傾向がありますが、ジャックはただ海に潜りたいだけ、イルカと仲良くしたいだけだったのではないでしょうか。結局、名声を得たいがためにやる人は、ただやりたいだけの人には敵わないと思います。

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今で例えるなら、ただ野球がやりたいだけの、ドジャースの大谷翔平と一緒です。何か見返りを求めてやるのではなく、自分がやりたいからやる(純粋な動機)という考え方は、哲学者・カントの考え方に近いと思います。私を含め、なかなかできることではないですが、なるべく「そう生きたい」と思っています。ナカナカね……。

でも、映画を見て、そんなことを改めて思わせてもらいました。青い海へ帰っていったジャックのように、私もまた、損得勘定のない『純粋な情熱』を大切に生きていきたい。あの時この映画を教えてくれたあの子の、自由な感性を思いながら……。

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