Photo by
pinkcat009
俳句鑑賞 ひらくヨムヨム010
ギロチンの後にゼリーの生まれけり
作者:髙田祥聖
第43回兜太現代俳句新人賞受賞作「ゐしころ」より
おそらく人間の首を落とす刑具「ギロチン」と、ゼリーの材料である「ゼラチン」を掛けているので、言葉の落差も含めてダジャレなのだが、くすっと笑うのも、背筋に冷たいものを感じるのも読者次第である。
ギロチンもゼリーもフランス生まれのものだ。掲句で「後に」と順序にふれている効果は二つある。
一つは歴史的なことで、ギロチンはフランス革命以降の政治的曲折において頻繁に用いられたものの、原型はその数世紀前から存在したという中世の記録がある。このことも含め、取り合わせられた現代的な季語「ゼリー」はイメージを変容させられて、ローマ時代には既に動物の肉から抽出して料理に使われていたというゼラチン(煮凝り)の野趣を思い起こさせるのだ。途端、それまでなんの関係もなかったギロチンとゼリーの言葉の距離は奇妙なほど縮まってしまう。
もう一つの効果は詩的な因果関係で、まるでギロチンにより斬首された死体の断面から、ゼラチンが生まれるというスプラッタなイメージを抱いてしまうことだ。気付くのにほんのすこし時間がかかるのが却って恐ろしい。
残虐な印象のあるギロチンが、実際には絞首刑のように受刑者を苦しませることがないよう、人道的な配慮で用いられたというのは有名な話であるが、掲句はギロチンの矛盾とゼリーの矛盾の二物衝撃とも言える。赤や青や緑や黄、鮮やかで甘いゼリーが今は人々の目や舌を楽しませているように、かつてギロチンによる公開処刑は、人々にとって娯楽であったという。
