ドイツ大連立にみるポピュリズムとの戦い方:まずは既存政党は1つになることだ。
ドイツの連邦議会で、次期首相を選ぶ投票があった。今年2月の総選挙で野党だった中道右派「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」が勝利した。ただし、単独過半数に達しなかったため、中道左派「社会民主党(SPD)」と連立交渉に入り、4月に合意に達した。
そして、CDU・CSU党首のフリードリヒ・メルツ氏が首相に選出された。ただし、選出は2回目の投票で、戦後ドイツ(西ドイツ時代含む)で1回目の投票で首相が選ばれなかったのは初めてだという。
定数630の連邦議会で、CDU・CSUにSPDの票を合わせると328票になるため、メルツ氏は1回目の投票で首相選出に十分な票を確保していたはずだった。だが、18人が造反したとみられている。
SPDの一部議員が造反した可能性がある。今年1月、メルツ氏が「移民政策の厳格化を求める決議案」を極右団体「ドイツのための選択肢」と協力して国会で可決させたことに反発したのだという。
このようなことはあったが、2回目の投票ではメルツ氏が半数より9票多い325票を得て、首相に選ばれた。
不安な船出となったメルツ政権だが、1つ言えることはある。それは「大連立」は、世の中を席巻する「ポピュリズム」に対抗する手段であるということ。
いろんなところに書いてきた持論だが、ポピュリズムに対抗する手段は
「包括政党化」
だ。端的に言えば、これまでポピュリズムを抑えてきた日本の自民党のようになることだ。
自民党とは、まさにドイツの「CDU・CSU+SPD」や、英国の「保守党+労働党」を合わせたような政策・イデオロギー的に幅広く、柔軟な政党だ。
まあ、「なんでもあり」「なんにもない」「いい加減」ということなんだけどね(笑)。それがよかった。
まあ、これまで既存政党の保守とリベラルは1980年代くらいから、それぞれのコアな支持層は脇に置いて、都市部の票を取り合ってきた。しかし、その結果が、コアな支持層の怒りによる、ポピュリズムの台頭だ。
そういう意味では、保守もリベラルも、そんなに政策的に変わらない。特に今は、どの政党も利益再分配、要はバラマキに集中しているので、違いはわからない。
イデオロギー?「貧しき者には分け与えよ」「労働者の権利拡大」と、真逆のようだが、これを現実に実行すると、どちらもバラマキになるじゃないか(笑)。
もう、一緒になっちゃったらどうかね?まあ、保守政党側はいいんだろうな。イデオロギーは何でもありだから。リベラル側がこだわっちゃうんだろう。
要は、これ自民党になれってことでしょ?これからの既存政党のモデルは、自民党だったのだ。
過去形でいうのは、当の自民党が「包括政党」でなくなりつつあるからね。日本のポピュリズムは、他国に遅れてこれからかもしれない。
いずれにせよ、ドイツの既存政党は「大連立」を選択し、極右ポピュリズムに対抗する構えをとった。
最初の課題は、まさに首相選出時に露わになった、SPD内の反発を抑えられるか。大連立内でごちゃごちゃしたら、なんにもならないからね。
次に、極右支持に走っている人を取り込めるか。
大事なことは、コアな極右支持層を狙うのではないということだ。前回も述べたが、現在既存政党を頼りなく思い、極右に投票した
中道の「静かな多数派(サイレント・マジョリティ)」
を取り戻すことだ。これは、この間長々と書いたことに含まれている。
このnoteでよく言う「サイレント・マジョリティ」だが、日本ではいわゆる「無党派層」を包み込むより大きな層があると言った。
ドイツの場合は、少し違っていて、たぶんコアなリベラル(SPD)、保守(CDU/CSU)支持者が左右にいて、その外側と真ん中を包むような感じじゃないかと思う。
そこには、ドイツ自由民主党(FD)や緑の党など小政党を支持する人もいて、ややこしいんだけど、基本は強い政党支持はない穏健な層といおうか。
こういう層が、移民の問題などで既存政党に不満を持って、極右に投票しているのが、極右政党の台頭だということだ。
ポピュリズムを抑え込もうとするとき、例えば前述の1月のメルツCDU/CSU党首が極右政党と組んで「移民政策の厳格化」を実現したような、ポピュリズムに媚びることをしてはいけない。
極右の支持者は、媚を売っても既存政党を支持してくれないからだ。
極右のコアな支持者は声が大きい。だけど、数は多くない。「ノイジー・マイノリティ」にすぎないのだ。彼らに引きずられる必要はない。
それよりも重要なのことがある。静かで穏健な多数派「サイレント・マジョリティ」から、極右に投票した人が、いったい何に不満を持っているのかを聞くことだ。
それは、極右の主張とは異なるはずだ。もっと日々の生活に関する、等身大の不満だ。それに丁寧に応えていくことだ。
まあ、なかなかそれは難しいことではある。ともかく、まずは「大連立」を組むことが、ポピュリズムに対抗する第一歩だ。それができたことでよしとすることだ。
