【ショートショート】自供
「おい! お前がやったんだろう!」
打ちっぱなしのコンクリートで囲われた部屋。
木製の机には、ドラマで見たようなデスクライトが俺の顔を照らしている。
俺の前には、いかつい顔をした刑事。
なるほど、こんな顔の男に責められたら、あまりの怖さに黙っているなんてできやしないだろう。
「被害者は、犯人はお前だってしっかり言ってんだよ!」
「そんなこと言われても、刑事さん。
俺には身に覚えがないんですから」
「何が身に覚えがねぇだ!
いいか、被害者はなあ。痛くて震えるほど苦しんでるんだ。
身体中を振るわせて、血反吐を吐いて、しゃべることも出来ねぇってんだ!」
「あのぉ、血反吐はないと思いますが。
それにしゃべることもできないのに、どうして俺が犯人だと言ってるんですか?
それはおかしいでしょう」
「上げ足とってんじゃねぇぞ!」
「でも、事実でしょ?」
「事実なんかじゃねぇや!
そんなことより、おまえが犯人なんだろうが!
はっきりゲロしちまえば、楽になるんだぜ」
「ゲロとか言われても、俺は何も悪いことなんてしてませんってば。
いつも通りに……」
「そうか。どうしても吐かねぇか。
だったら聞くがよ、おまえはこの害者の中に何を突っ込んだんだ?」
一枚の写真が俺の目の前に置かれた。
白黒の写真だ。
「なにって……プリンパフェとハンバーガーが2個。
それにポテトのLとコーラのL。
その後、食後にコンビニのコーヒーと唐揚げ棒ですね」
「なんだと?!
そんなに突っ込んだのかよ! なんて野郎だ!
そんなことしたら、コイツがどれほど苦しむかって分からねぇのかよ?!」
「そうは言われても刑事さん。
コイツは、俺の腹の中の胃袋ですよね?
自分の胃袋に何を突っ込もうと、それは俺の勝手でしょう?」
「バカ野郎!
そんなことをしたから、コイツは病院送りになったんだろうが!」
「病院に行ったのは俺自身ですから」
「いいか、コイツはなぁ。
おまえが突っ込むたびに、必死に食い物を溶かしてるんだ。
頑張って毎日仕事してるってぇのに、まだ溶けてもいねぇところに、唐揚げ棒なんか突っ込まれたら。苦しいに決まってんだろうが!
テメエは、ブラック企業の社長かよ!」
「そんなこと言われても、俺だって苦しみたくてやったわけじゃないですし」
デスクライトの熱が俺の顔を焼いてくる。
昨夜の苦しみが蘇り、俺は眉をしかめた。
食い過ぎたと思いながら、胃のくすりを飲んだが効果はなく、今回ばかりは病院に行くしかないと救急車を呼んだのだ。
「この写真には、全てがシッカリ写ってんだよ!
テメエが犯人だってな!」
いつからこの世界は、胃を被害者と呼ぶようになったのか。
俺は大きなため息をつきながら、刑事の顔を眺めていた。
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