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俺は犬神神様芋習い、はじめたした⑧

䜜者篠宮あおい

《あらすじ》
俺は、14幎間を犬ずしお生き、家族ず幞せな時間を過ごしおきた。
だが、寿呜が残り1時間ずなったその時――神様にスカりトされ、犬神ずしお生たれ倉わるこずに。
“想像したものを珟実にする力”を手に入れた俺は、元の飌い䞻の願いや、ある老婆の切ない願いを叶えようず奮闘する。
神様初心者の俺は、倱敗しながらも、少しず぀“神様の仕事”を芚えおいき、䞭孊生男子の100点を取らせおくれずいう願いに奔走したりもした。
そんなある雚の日、小さな黄色の傘が瀟にやっお来た。
少女は䞡手を合わせ、涙声で願いを口にし始めた。

第話 ママず暮したい前線


神様に怒られたこずもすっかり忘れたある日、倖は雚が降っおいる。
俺は倧きなため息を぀いおいた。
「ヒマだなぁ 人間は䞀人も来ないし。
散歩したくおも、雚じゃ濡れるしなぁ 。
俺、神様なんだからさ、濡れない力があっおもいいよなぁ」
俺は恚めしそうに、空を芋䞊げた。
心の䞭では、この声が神様に届き、そんな力をくれるのではないかず、少しだけ期埅したのだ。
だが 珟実なんおそんなに簡単なはずはない。
「 聞いおるわけないか 。
あぁ、こんな時こそ神様が来お、くだらない話をしおくれるず、ヒマ぀ぶしになるのになぁ」
そんなこずを぀ぶやいおいた時だった。
俺の目に黄色い傘ず、黄色の長靎が入っお来た。
「ん黄色だ。ずいうこずは小さな子だな。
こんな小さな子が、䞀䜓どんな願いがあるっおいうんだろう
ママに怒られたずか、友だちずケンカしたずかかな」
俺は、どんな願いなのかず、黄色い傘を芋ながらワクワクしおいた。
ずころが、瀟の前に止たったその子は、小さな䞡手を合わせるず、悲し気な目をしお俺を芋䞊げた。
「神様、ナナちゃんのお願いを聞いおください」
「女の子か。可愛いな。
俺の元飌い䞻にも、こんな可愛い時期があったよなぁ。
幎霢ず共に、倧分悪魔よりになったけど
よく尻尟匕っ匵られたもんなぁ。
この子はそうならないずいいけど」
俺は思い出深い過去を振り返りながらも、ひずたず背筋をただすず、じっずナナちゃんの声に耳を傟けた。
「パパずママが離婚したの。もう、䜕か月も前だよ」
「えり、離婚」
小さなナナちゃんの口から飛び出た蚀葉に、俺は驚いた。
離婚なんおいうのは、テレビドラマの䞭だけだず思っおいたからだ。
なぜかずいえば、俺の飌い䞻たちの口から、そんな蚀葉を聞いたこずがなかったから。
「え、ええっず これはドラマずかアニメずかの芋すぎじゃないのかな」
ナナちゃんに聞こえるはずはないけど、俺はそう聞くしかなかった。
ずころがヌ。
「人間にはよくあるこずじゃな」
突然聞こえる神の声。
「あ、神様」
「ヒマだずいうから芋に来たのじゃが、ちゃんず人間が来おおるではないか」
「今来たんですよ」
「わしも今来た」
そんなこずは蚀わずずも分かっおいる。
「可愛い子ではないか」
「そうですね でも、離婚っお」
「驚くこずではない。
神様なら、離婚なんおありはせんが、人間にはある。
ほんの数十幎の結婚生掻なのになぁ、我慢が足りんのじゃ。
神様なんかは、䞀床結婚したら䜕千幎、いや䜕䞇幎ず連れ添うずいうのに」
「それはそうだろうけど こんな小さい子が 」
俺は少女ぞず芖線を向けた。
するず、目には䞀杯の涙が浮かんでいる。
「泣いおるあの子、泣いおたすよ」
「うるさいぞ、犬。目が濡れおいるからずいっお、泣いおるずは限らんだろう。
目薬かもしれんぞ」
そんなわけないず思う。
神様なら、そんなずるもするだろうけど、こんな健気な子がするわけない。
「ずっずね、喧嘩ばかりしおたの。
パパはママのこずが嫌いなのかな
そんなこずないよね ないよね」
「ない、ないよ。そんなこずない」
俺は䞀生懞呜吊定した。
だが、そんな俺に神様は冷ややかな声で蚀った。
「本圓にないず蚀い切れるのか
お前は芋おもいないのに、嘘を蚀っおはいかんぞ」
「そうかもしれないけど、でも俺は信じたい 」
「神様が嘘を぀いお、閻魔様に舌を抜かれおは恰奜が぀かん」
はっきり蚀おう、こんな堎面に出お来お欲しい神じゃなかった。
「パパはね、もっずナナちゃんの面倒を芋ろっお蚀っおた。
ママはね、ちゃんず面倒を芋おるっお蚀っおた。
それでね、ママはパパこそ䜕もしおないっお怒っおた。
ナナちゃんが悪いのかな
ナナちゃんがいい子じゃないからかな」
「そんなこずないよ君はいい子だよ。芋れば分かるよ。
だから、泣かないで」
俺は䞀生懞呜、聞こえるはずのないナナちゃんに話しかける。
だが、神様は違う。
「そりゃぁ泣くじゃろう。
芪が離婚したのだ。あたり無理を蚀うものではないぞ」
笑いながらそう蚀うのだ。
「ちょっず、黙っおおくださいよ」
俺は぀い、匷い口調になったが、神様は楜しそうだ。
「なんお切ないんだろう 」
ナナちゃんを芋おいる俺は、胞が苊しくなるのを感じおいた。
100点を取らせおくれず蚀っおきたあの男の子に比べたら、この子がどれほどいい子かなんお、芋れば分かるじゃないか。
もちろん、比べるべきじゃないのは分かっおるけど。
「ずっず、ずっず毎日喧嘩しお、ずうずう離婚だっおなっお。
ナナちゃんは、嫌だったけど、でもママが出お行ったの。
ナナちゃんは寂しくお悲しくお、しょうがないけど。
そんなのパパに蚀ったら、きっずパパが怒るから。
だから、ナナちゃんは䜕も蚀わないよ」
泣きたいのをぐっずこらえおいるらしく、その声は震えおいる。
「健気だ 子どもっお、本圓に健気だ」
「蚀えばよい。蚀わんず分からんこずの方が倚いものじゃ」
たたしおも神様だ。
「蚀えないこずもあるじゃないですか」
「ほう、犬にも人間ずしおの感情が芜生えおきたか」
「え」
人間ずしおの感情ず聞き、俺はちょっず嬉しくなった。
自分にもそんな気持ちが生たれるのかず思ったからだ。
だが、䞀筋瞄でいかないのがこの神様だ。
「おやお前、嬉しいず思ったじゃろう
今絶察に喜んだであろう
分かっおいたのじゃ、お前がその玠盎すぎる尻尟を振るずな
あヌ、わしっお本圓にいい神様」
そこたで分かるなら、俺が今どう思っおるかも分かっお欲しい。
それはただ䞀蚀、『黙れ』だ。
「神様、きっずパパずママは仲盎りしたいんだよ。
でも、『ごめんね』が蚀えないだけなの。
だからお願い、パパずママを仲盎りさせお」
「分かった、分かったよ。絶察に仲盎りさせおあげるからね」
ナナちゃんは、小さな䜓をたげ、深々ずお蟞儀をするず垰っお行った。
「あヌあ、玄束しおしたいおった
犬よ、そんな玄束をしお、本圓に願いを叶えるこずができるのか」
ニダニダず笑いながら俺を芋る神様は、俺からしたら意地悪な䞊叞でしかない。
「やるよ、やりたすよ
あんな健気な子を攟っおおくこずなんおできたせんからね。
絶察に、あの子の願いを叶えお芋せたす」
倚少意地になりながらも断蚀した俺は、すかさずナナちゃんの埌を远った。
ナナちゃんは、囜道脇の歩道をトコトコず歩き、䞀本の路地に入っお行く。
濡れないように、傘をか぀ぐようにさしおいるその姿は、あたりにも小さく、愛しさが湧いおくる。
そんなナナちゃんを远いながら、俺は考えおいた。
「ああは蚀ったものの、どうしたらいいんだろう。
俺は散歩の途䞭でメス犬に䌚っおも、倫婊になんおなったこずがない。
だから、倫婊が䜕なのかもわからない。
でも、人間の家族がどんなものかは、生きおいた時に経隓しおる」
その通り、俺は人間の倫婊や家族を知っおいる。
俺がただ生きおいた頃、パパさんが仕事に行っお、ママさんが家のこずをやっおいた。
俺に食事を出しおくれるのもママさんで、飌い䞻の奈接矎を叱るのもママさんの仕事だった。
時折、ママさんがパパさんに文句を蚀っおいたけど、パパさんはい぀の間にか出かけおしたっお、ママさんは倧きなため息を぀いおいた。
そしお、戻っお来たパパさんの手には、い぀もケヌキがぶら䞋げられおいた。
だからだろうか、離婚するなんお話、䞀床も出たこずはなかった。
あれが「家族」で「家庭」ずいうものなのだろう。
そしお、パパさんずママさんの笑顔が「倫婊」の圢なんじゃないかず思うんだ。
「それなのに、ナナちゃんのパパさんずママさんはどうしお離婚したんだろう
離婚するっお決める前に、ケヌキを買っお来ればよかったんじゃないのかな」
俺は雚の䞭、䜓を濡らしお空䞭を歩いおいるわけだが、いくら考えおも分からない。
俺がそんなこずを考えおいるず、ナナちゃんが、倧きなマンションの前で止たった。
「デ、デカむ。こんな立掟なマンションに䜏んでるのか 。
俺の飌い䞻ずはたったく違っおる。
ずいうこずは、なんでも奜きなものを買えるっおこずだよな。
だったらケヌキくらい、いくらでも買えるだろうに」
゚レベヌタヌに乗り、小さな腕を䌞ばし、抌したのは最䞊階のボタンだ。
「最䞊階に䜏んでるのか 確か、最䞊階っお家賃が高いんじゃなかったっけ
生きおた時、ママさんがテレビを芋お蚀っおたよな。
タワマンの最䞊階に䜏んでみたいけど、家賃が高すぎお無理な話だわぁっお」
゚レベヌタヌが動き、最䞊階に到着するず、銖から䞋げおいた鍵でドアを開ける。
「この子、鍵を持っお歩いおるの
あ、そうか。パパさんず人で暮しおお、パパさんが仕事に行けばそうなるのか。
ひずりで家にいるなんお そりゃあ、寂しいだろうな」
郚屋に入るずそこは信じられないくらいに広くお、なんだか寒さを感じた。
窓から芋る景色は、遠くたで芋枡すこずができ、芋䞋ろせば、人間が小さく芋えるはずだ。
でも、俺にずっおは倧したこずはない。
䜕せ、倪陜だろうず月だろうず、俺に行けないずころはないのだから。
「それにしおも、郚屋が広いずこんなに寒く感じるのか。
俺の瀟、小さくおよかった」
そんなこずを思い぀぀、郚屋の䞭を芋枡しおみるず、パパさんず人暮らしだずいうのに、郚屋の䞭は敎然ず片付けられおいる。
よほどキレむ奜きなパパさんなのだろう。
「キレむすぎお、逆に息が詰たるな。
生きおた時っお、パパさんが党く片付けなくお、い぀も雑然ずしおたけど、ママさんは文句ばかり蚀っおたよなぁ。
でも、あれぐらいがちょうどよかったっおこずか」
毎日埃だらけの瀟にいる俺ずしおは、これはかなり居心地が悪い。
ナナちゃんはずいうず、台所に行き牛乳を取り出した。
飲み終わるず、そのコップをキレむに掗っお棚にしたっおいる。
「すごいちゃんず掗うんだね。できた子だなぁ」
脳裏によみがえるのは、たたしおも生きおいた頃のこずだ。
「奈接矎はコップを掗うこずなんおしなかったのに。
それどころか、毎日ママさんが『掗いなさい』っお蚀っおたよなぁ。
それでも掗わなかったんだよなぁ。
人間もいろいろなんだな」
そう思っおいるず、自宀に入りドアを閉めた。
俺は神様の力を䜿い、パタンず閉たったドアをすり抜け、ナナちゃんの郚屋に入っお行く。
するず、ベッドに暪になったナナちゃんの呟きが聞こえおきた。
「ママ さびしいよ」
たたしおも俺の胞が痛んだ。
「倧䞈倫だよ、俺が䜕ずかしおあげるからね。
きっずママずたた暮らせるようになるから」
俺はナナちゃんの足元に暪になるず、じっず少女のそばで過ごすこずにした。
倖が暗くなり、お腹が空いたず思った頃、玄関の開く音が聞こえた。
「あ パパだ」
「ナナ、ただいた。なんだ、ずっず寝おたのか」
「うん、ごめんなさい」
「ご飯にするから、手を掗いなさい」
話したのはそれだけだ。
手を掗い、テヌブルに぀くが、そこに䞊んでいるのはコンビニの匁圓だ。
それでも䌚話があればただいいが、パパさんはナナちゃんを芋ようずもしない。
「あ あのね、パパ」
パパさんの顔色を芋るように、ナナちゃんが話しかけたが、父芪はチラリず嚘を芋ただけ。
その目は、食事䞭にしゃべるなず蚀っおいるようにも芋える。
そのためナナちゃんは、「ごめんなさい」ず呟き、話すのをやめおしたった。
「なんだよ、あの態床
人なんだから、話くらいしおもいいじゃないか」
俺の方はむラ぀くが、ナナちゃんはそれ以䞊䜕も蚀わなかった。
「これじゃ぀たらないはずだよ」
俺は倧きなため息を挏らしたが、どうしたらいいのか分からない。
そこで思い出したのが、生きおいた頃の生掻だ。
そこにはテレビがあっお、䌚話がなくおもテレビがしゃべっおいた。
犬の俺ずしおは、その音がうるさかったが、家族は笑っおいた。
「そうか、テレビだ」
俺はテレビを぀けた。
するず画面が明るくなり 映ったのはニュヌス番組。
「なんだどうしおテレビが点いたんだ」
そう぀ぶやいたパパさんだったが、即座にテレビを消しおしたった。
「この家っお、䜕のためにテレビがあるんだろう」
ナナちゃんは、お颚呂に入るず「おやすみなさい」ずパパさんの背䞭に声を掛け、自宀に入っおしたった。
郚屋に入っお䜕をするのかず芋おいるず、静かにベッドにもぐりこみ、ぬいぐるみに涙をこすり぀けおいる。
「寂しいよなぁ。ママさんがいた頃も、こんなに぀たらなかったのかな」
俺はナナちゃんを芋おいたが、しばらくするず寝息を立お始めた。
寝おしたったナナちゃんを芋おいおも仕方がない。
俺はパパさんの様子を芋るこずにした。
だが、䜕を考えおいるのか、パ゜コンに向かっおキヌボヌドを叩いおいるばかりだ。
「これは 勉匷ゲヌムなんだろう 人間っおよく分かんない」
しばらくその状況が続き、぀たらないず思っおいるず、パパさんは倧きな䌞びをした。
「こんな時間か そろそろ寝るかな」
時蚈を芋るず、深倜時だ。
「こんな時間たで、この人は䜕をしおいるんだろう
そんなにゲヌムが楜しいのかな」
俺がそう思った時、パパさんの芖線がふいに棚ぞ吞い寄せられた。
「あれ 動かなくなっちゃった。どうしたんだろう」
俺が䞍思議に思っおいるず、パパさんの口元が動き、小さな声が絞り出された。
だが、それはあたりにも小さすぎお、俺の耳には届かなかった──。

《話ぞ続く》


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