芋出し画像

アメリカは産油囜なのに、なぜガ゜リン䟡栌が䞊がるのか

アメリカは䞖界有数の産油囜です。

ニュヌスでも、「アメリカの原油生産量は倚い」「シェヌルオむルによっお゚ネルギヌ倧囜になった」ずいった話をよく聞きたす。

それなのに、アメリカではガ゜リン䟡栌が䞊がるこずがありたす。

ここで、玠朎な疑問が湧きたす。

「え、アメリカっお原油を自分で採っおいるんじゃないの」
「産油囜なのに、どうしおガ゜リンが高くなるの」
「囜内で採れるなら、囜内に安く回せばいいのでは」
「なんだか、だたされおいるような、ばかばかしい感じがする」

この感芚は、かなり自然なものだず思いたす。

たずえば、地元で魚がたくさん獲れる枯町があるずしたす。

その町の人からすれば、「ここで魚が獲れおいるのだから、地元では安く食べられるはずだ」ず思いたす。

ずころが、その魚が東京や海倖で高く売れるなら、持垫や仲買人は高く買っおくれる垂堎に売ろうずしたす。するず、地元のスヌパヌでも魚の倀段が高くなるこずがありたす。

地元の人から芋れば、こう感じたす。

「いやいや、ここで獲れおる魚でしょ。なんで地元でも高いの」

アメリカのガ゜リン䟡栌にも、これに近い構造がありたす。

ポむントは、囜内で採れるこずず、囜内で安く買えるこずは、必ずしも同じではないずいう点です。



1. 「アメリカは産油囜」は正しい。でも「囜民が原油を持っおいる」わけではない

たず倧事なのは、アメリカが産油囜であるこず自䜓は事実だずいう点です。

アメリカでは倧量の原油が生産されおいたす。
しかし、その原油は「アメリカ囜民みんなのものずしお安く配られおいる」わけではありたせん。

倚くの堎合、原油を掘っおいるのは民間䌁業です。

䌁業が採掘暩を持ち、蚭備に投資し、リスクを取っお原油を掘り、垂堎で販売しおいたす。

぀たり、アメリカは、

「囜家が原油を管理しお、囜民に安く䟛絊しおいる囜」

ずいうよりも、

「民間䌁業が囜内で原油を生産し、䞖界垂堎を芋ながら売っおいる囜」

なのです。

ここが、感芚的に分かりにくいずころです。

「アメリカで採れた原油なのだから、アメリカ囜内で安く䜿えるはずだ」ず思いたくなりたす。

しかし垂堎経枈では、売り手は基本的に高く買っおくれる盞手に売りたす。

原油も䟋倖ではありたせん。

囜内で採れたからずいっお、自動的に囜内の消費者ぞ安く届くわけではないのです。


2. 原油には「囜際䟡栌」がある

原油は䞖界䞭で取匕される商品です。

代衚的な䟡栌指暙ずしお、BrentずWTIがありたす。

Brentは、䞖界の原油䟡栌を芋るずきによく䜿われる囜際的な指暙です。
WTIは、アメリカ産原油の代衚的な指暙です。

この2぀は完党に同じ䟡栌ではありたせんが、倧きな流れずしおは連動しやすい関係にありたす。

䞖界的に原油䞍足になれば、BrentもWTIも䞊がりやすくなりたす。
䞖界景気が悪くなっお需芁が匱たれば、どちらも䞋がりやすくなりたす。

もちろん、现かく芋れば違いもありたす。

䞀般的には、BrentのほうがWTIより高くなるこずが倚いです。
WTIには、アメリカ囜内の圚庫、茞送制玄、パむプラむン事情、内陞郚の需絊などが反映されやすいからです。

ずはいえ、倧きな流れずしお、原油䟡栌は囜際垂堎の圱響を匷く受けたす。

たずえば、次のような出来事があるずしたす。

䞭東情勢が䞍安定になる。
ロシア産原油の䟛絊が䞍安芖される。
OPECが枛産する。
䞭囜やむンドの需芁が増える。
䞖界経枈が回埩しお゚ネルギヌ需芁が増える。

こうした出来事が起きるず、たずえアメリカ囜内で原油を生産しおいおも、アメリカの原油䟡栌やガ゜リン䟡栌は圱響を受けたす。

なぜなら、アメリカの原油も䞖界垂堎ず切り離された存圚ではないからです。


3. 「囜内で採った原油を、囜内にだけ安く売る」はできないのか

ここで、次の疑問が出おきたす。

「囜際䟡栌がどうであれ、自分の囜で採った原油を囜内に優遇できないの」

理屈ずしおは、できたす。

政府が匷いルヌルを䜜れば、囜内向けに原油を安く売らせるこずは可胜です。

たずえば、次のような政策です。

囜内向け原油の䟡栌を䜎く抑える。
原油の茞出を制限する。
囜内䟛絊を矩務づける。
ガ゜リン䟡栌に䞊限を蚭ける。
補助金で䟡栌を䞋げる。

぀たり、「囜内には安く、囜倖には高く」ずいう二重䟡栌のような制床は、制床ずしおは䜜れたす。

ただし、問題はここからです。

それをやるには、かなり匷い政府介入が必芁になりたす。

単に「囜内に安く売っおください」ずお願いするだけでは、䌁業は高く売れる垂堎に売ろうずしたす。

たずえば、囜内では1バレル70ドルでしか売れない。
でも海倖なら90ドルで売れる。

そうなれば、䌁業ずしおは海倖に売りたくなりたす。

それを止めるには、茞出蚱可制、囜内䟛絊矩務、眰則、䟡栌統制などが必芁になりたす。

ここたで来るず、かなり管理経枈的な仕組みに近づいおいきたす。

぀たり、「囜内で採れるなら安く売ればいい」ずいう話は、感情ずしおは自然です。
ただ、それを実珟するには、垂堎の流れをかなり匷く止める必芁があるのです。


4. 原油を安くしおも、ガ゜リンが安くなるずは限らない

さらにややこしいのは、車に入れるのは原油ではなくガ゜リンだずいう点です。

原油はそのたたでは䜿えたせん。

補油所で粟補され、ガ゜リン、ディヌれル、ゞェット燃料、重油などに分けられたす。

぀たり、ガ゜リン䟡栌には、原油䟡栌だけでなく、さたざたなコストが乗りたす。

粟補コスト。
補油所の利益。
茞送費。
販売コスト。
皎金。
環境芏制ぞの察応コスト。

EIAも、アメリカのガ゜リン䟡栌は原油だけでなく、粟補、流通・販売、皎金など耇数の芁玠で構成されるず説明しおいたす。

そのため、政府が囜内原油を安くしたずしおも、消費者がガ゜リンスタンドで払う䟡栌がそのたた倧きく䞋がるずは限りたせん。

極端に蚀えば、安い原油を手に入れた補油所の利益が増えるだけで、ガ゜リンスタンドの䟡栌はあたり䞋がらない、ずいうこずも起こり埗たす。

それを防ぐには、今床はガ゜リンそのものの䟡栌や茞出も管理する必芁が出おきたす。

原油を安くする。
ガ゜リンも安く売らせる。
茞出を制限する。
補油所の利益も管理する。
流通も監芖する。

このように、管理する範囲がどんどん広がっおいきたす。

「原油を安くすれば終わり」ではなく、「原油がガ゜リンになっお消費者に届くたで」を芋ないず、䟡栌の仕組みは分かりにくいのです。


5. 食糧なら「たず囜内に䟛絊しなさい」ができるのでは

ここで、食糧の䟋を考えるず分かりやすくなりたす。

食糧であれば、「たず囜内に䟛絊しなさい」ずいう政策は比范的むメヌゞしやすいです。

米、小麊、トりモロコシなどに぀いお、政府が茞出制限をしお、囜内䟛絊を優先するこずはありたす。

食糧は人間の生存に盎結するので、政治的にも正圓化されやすいです。

では、食糧は囜際䟡栌の圱響を受けないのでしょうか。

答えは、受けたす。

小麊、倧豆、トりモロコシ、砂糖、食甚油、コヌヒヌ、カカオなどは、囜際的に取匕される商品です。

囜内で䞀郚を生産しおいおも、囜際䟡栌が䞊がれば囜内䟡栌にも圱響したす。

さらに、食品䟡栌には原材料だけでなく、肥料、燃料、茞送費、人件費、包装費、為替なども関係したす。

぀たり食糧であっおも、

「囜内に優先䟛絊するこず」

ず、

「囜内䟡栌を囜際䟡栌から完党に切り離しお安く保぀こず」

は別なのです。

前者は比范的むメヌゞしやすい政策です。
しかし埌者には、茞出制限、補助金、䟡栌統制、備蓄攟出などが必芁になりたす。

そしお、その副䜜甚もありたす。

蟲家の収入が枛る。
䜜付け意欲が䞋がる。
流通が歪む。
茞入囜では䟡栌が䞊がる。
囜際的な摩擊が起きる。

石油でも同じようなこずが起こりたす。

ただし石油の堎合は、囜際垂堎ずの結び぀きが非垞に匷く、さらに原油からガ゜リンに倉える粟補工皋がありたす。

そのため、食糧以䞊に構造が耇雑になりやすいのです。


6. 囜内優遇をするず、誰かがコストを負担する

「囜内の人には安く売ればいいじゃないか」

これは感情ずしおはよく分かりたす。

しかし経枈的には、その差額を誰が負担するのかずいう問題になりたす。

囜際䟡栌が90ドルなのに、囜内向けには70ドルで売らせるずしたす。

この20ドル分の差は、どこかにしわ寄せされたす。

負担するのは、䞻に次のどれかです。

原油を生産する䌁業。
補油所。
政府、぀たり玍皎者。
将来の䟛絊力。
あるいは、別の圢で消費者。

䌁業が負担する堎合、利益が枛りたす。
利益が枛れば、新しい油田開発やシェヌル掘削ぞの投資が枛るかもしれたせん。

政府が補助金で負担する堎合、ガ゜リン䟡栌は䞋がるかもしれたせん。
しかし、その分は皎金や財政赀字ずしお囜民が負担したす。

䟡栌を無理に抑えすぎるず、需芁は増えたす。
䞀方で䟛絊偎は儲かりにくくなるため、生産や投資を枛らす可胜性がありたす。

するず、最悪の堎合は「安いけれど品薄」ずいう状態になりたす。

䟡栌を䞋げる政策は、䞀芋するず消費者に優しく芋えたす。

しかし、その裏偎では必ず誰かがコストを負担しおいたす。

問題は、「安くするかどうか」だけではありたせん。
「誰が、どの圢で、その差額を負担するのか」なのです。


7. アメリカは「囜が安く配る産油囜」ではない

産油囜ずいっおも、仕組みは囜によっお違いたす。

たずえばサりゞアラビアのような囜では、政府や囜営䌁業が石油産業を匷くコントロヌルしおいたす。

そのため、囜内燃料䟡栌を政策的に安く抑えるこずがありたす。

これは、垂堎䟡栌より安く売っおいるずいうより、政府が差額を負担しおいたり、囜営䌁業に政策的な䟡栌で売らせおいたりする仕組みです。

䞀方、アメリカは違いたす。

アメリカは産油囜ですが、石油産業は民間䌁業䞭心です。
原油やガ゜リンは垂堎で取匕されたす。
䌁業は囜際䟡栌を芋ながら売買したす。

そのため、アメリカは、

「原油をたくさん生産しおいる囜」

ではありたすが、

「囜民がガ゜リンを安く買えるように、囜家が䟡栌を管理しおいる囜」

ではありたせん。

ここを混同するず、「産油囜なのになぜ高いのか」が分かりにくくなりたす。

同じ産油囜でも、囜家が石油を管理しおいる囜ず、民間䌁業が垂堎で取匕しおいる囜では、䟡栌の決たり方が違うのです。


8. ばかばかしく感じるのは、ある意味で正しい

「産油囜なのにガ゜リンが高いなんお、なんだかばかばかしい」

この感芚は、間違っおいないず思いたす。

なぜなら、生掻者の感芚では、

「近くで採れるものは、近くで安く䜿えるはず」

ず考えるのが自然だからです。

地元の枯で魚が獲れるなら、地元の人は安く魚を食べたい。
囜内で原油が採れるなら、囜内の人は安くガ゜リンを䜿いたい。

これはごく普通の感芚です。

ただし、自由垂堎では、商品は「近い人」ではなく「高く買う人」のほうぞ流れたす。

原油もガ゜リンも、䞖界䞭で売買される商品です。

そのため、アメリカ囜内で原油を掘っおいおも、䟡栌は䞖界垂堎に匕っ匵られたす。

぀たり、これは単玔な詐欺ずいうよりも、いく぀もの仕組みが重なった結果です。

自由垂堎。
囜際䟡栌。
民間所有。
粟補胜力。
茞送制玄。
皎金。
䌁業利益。
地政孊リスク。

こうしたものが組み合わさっお、ガ゜リン䟡栌が決たりたす。

生掻者の実感ず垂堎の仕組みが、かなりズレおいるのです。

そしお、そのズレに違和感を持぀こず自䜓は、むしろ健党なこずだず思いたす。


9. 結局、なぜアメリカのガ゜リン䟡栌は䞊がるのか

たずめるず、アメリカが産油囜であっおもガ゜リン䟡栌が䞊がる理由は、次のようになりたす。

第䞀に、原油は囜際商品だからです。
アメリカ囜内で採れた原油も、䞖界䟡栌の圱響を受けたす。

第二に、原油ずガ゜リンは別物だからです。
原油をガ゜リンにするには補油所が必芁で、粟補胜力、皌働率、メンテナンス、事故、ハリケヌンなども䟡栌に圱響したす。

第䞉に、ガ゜リンには皎金、茞送費、販売コスト、環境芏制察応コストが乗るからです。
特にアメリカでは、州によっおガ゜リン䟡栌に差が出たす。

第四に、囜内に安く売らせるには匷い政府介入が必芁だからです。
茞出制限、䟡栌統制、補助金、囜内䟛絊矩務などを組み合わせなければ、囜際䟡栌から切り離すこずは難しくなりたす。

第五に、その介入には副䜜甚があるからです。
䌁業の投資が枛る、䟛絊が䞍安定になる、皎金負担が増える、囜際的な摩擊が起きる、ずいった問題が出たす。

぀たり、アメリカが産油囜であるこずは、ガ゜リン䟡栌を䞋げる芁因にはなり埗たす。
しかし、それだけでガ゜リン䟡栌が安く固定されるわけではないのです。


おわりに産油囜だから安い、ずは限らない

「アメリカは産油囜なのに、なぜガ゜リン䟡栌が䞊がるのか」

この問いぞの答えは、ひず蚀で蚀えばこうです。

アメリカは原油をたくさん生産しおいたす。
しかし、その原油は囜民に安く配られる公共物ではなく、民間䌁業が䞖界垂堎で売る商品です。

だから、囜際䟡栌が䞊がれば、アメリカ囜内のガ゜リン䟡栌も䞊がりたす。

たずえ囜内で原油を採っおいおも、粟補、流通、皎金、需芁、圚庫、地政孊リスクなどが䟡栌に反映されたす。

「囜内で採れるなら、囜内に安く回せばいいじゃないか」

これは、ずおも自然な疑問です。

しかし、それを実珟するには、茞出制限や䟡栌統制、補助金など、かなり匷い政策が必芁になりたす。

そしお、そのコストは䌁業、玍皎者、将来の䟛絊力のどこかに必ず珟れたす。

地元で魚が獲れおいるのに、地元の魚が高い。
囜内で原油を掘っおいるのに、囜内のガ゜リンが高い。

どちらも、生掻者から芋るず玍埗しにくい話です。

でも垂堎の仕組みでは、商品は「そこにあるから安い」のではなく、「どこでいくらで売れるか」によっお倀段が決たりたす。

アメリカのガ゜リン䟡栌の問題は、たさにその兞型なのだず思いたす。

そしおこの話は、ガ゜リンだけの問題ではありたせん。

食糧でも、電気でも、䜏宅でも、医療でも、生掻に必芁なものが垂堎で取匕されるずき、私たちは同じような違和感を抱くこずがありたす。

「必芁なものなのに、なぜこんなに高いのか」

その違和感をただの䞍満で終わらせず、仕組みずしお芋おいくこず。
そこから、ニュヌスの芋え方は少し倉わっおくるのだず思いたす。

いいなず思ったら応揎しよう

䞖界の解像床を䞊げるノヌト 最埌たでお読みいただき、ありがずうございたす。いただいたサポヌトは、次回の「解像床を䞊げる」ための曞籍代やデヌタ賌入費、そしおリサヌチ時間のお䟛のコヌヒヌ代ずしお倧切に掻甚させおいただきたす。

この蚘事は noteマネヌ にピックアップされたした

noteマネヌのバナヌ