灰色の空欄
noteの下書きタイトルの灰色文字を見ながら、指が動かない日が続いた。
その日、自分で作った夕食をテーブルに置いて、私は手をつけずに立ちつくしていた。
お腹は減っているのに、あまり食べる気分になれない。
そのまま私は着替えた。妻に、ちょっとランニングしてくるわとだけ言って、返事は聞かずに家を出た。
少し長めに、怪我をした右膝を気にしながら、いつものペースで走った。
チラチラ浮かぶものはある。けどどれも、取るに足らない気がしてくる。
息を切らしながら家の近くまで来た。
何も、思い付かないか…。
そう思ったところで、走る足を止めた。
その後2日間、書き溜めていたのを少し出した。3日目に出すのを躊躇った。
そんな事をしている自分は違うと思い始めた。
私は、連続記録を気にしてるみたいだ。一体自分は何のために書いているのか。
わかっているはずだ。
私は娘のために書いている。それなのに、何も書く事が出てこない。俺の娘への想いはこの程度だったんだ。
ふと、書く前にずーっと、4年間やり続けたパソコンゲームがしたくなった。謂わゆる死にゲーというやつで、何度も死にながら攻略の糸口を掴んで進むゲームだ。
毎日のようにプレイして、いつも娘が横に座って見ていた。
4ヶ月前パソコンが壊れて動かなくなったと思っていた。半ば諦めながら中身を弄ったら、起動してしまった。
しばらくまたこれやろうかな。俺、このゲーム好きなんだよ。はは。
月曜日の朝、記事を出すのをしばらく休もうと決めていた。いつも読んでくれる人、コメントしてくれる人、ごめんなさい。
でも、心が動いてないやつの書いたものなんて読ませられない。
そう思っていると通知が来た。
私を記事で取り上げてくれた人がいた。
いつも私の記事にコメントをしてくれるぽていとぽたあとさんだった。
一気に読んだ。コメント欄に何か書こうとした。でも想いがありすぎて言葉にならない、それでもありがとうございますと書いた。
ぽていとさんは、私の文章を読んでエッセイが好きだと気がついたと、ありがとうと返信をくれた。
息を吸うのを忘れていた。
私はそのコメントにスキだけつけて、コメントは返せなかった。
夜、ぼーっとゲームをしながら考えていた。
決めただろ。満足じゃないか。100本も記事を書いた。上等上等。
本を読んだ事ないやつがこれだけやれた。
みんなだってわかってくれるさ。
そうだよ、娘だってきっと。
…なのに。
なのに、消えないこれは、何なんだよ。
娘が横にちょこんと座った。
「お父さん、ゲーム久しぶりだね。」
「…うん。」
カチャカチャコントローラーの音がなる。
「お父さん、あたしもこれやりたい。かして!」
そう言って、ん!と手を差し出してきた。
「お前には難しいだろ?出来ないよ。」
娘はギュッと拳を作った。
「いいの!やりたいんだもん!」
出来なくてもいい、か。
娘にコントローラーを渡した。
