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ねえ、満ちたのは本当にお腹なの?【創作】

俺の名前はジジ。今日、こいつがつけた。
俺は気がついたらこいつの手のひらの上にいた。

こいつの名前は知らない。だが、画像はある。
男で小動物を連れていた。最近は見ない。
俺が定期散雨を降らせると空に七色の帯が出る。
高架橋のいつもの場所にこの男は決まっている。
男の顔の下半分が形を変える画像がいくつも残っている。

目の前の男はパーツは同じだがいつもと違う。眉が下がったまま、戻らない。

深陰刻02時16分34秒、爆発落下により、断面が片側、ごっそり無くなった。細い線が何本かはみ出して、風に揺れている。残ったプラグを足に使う。真っ直ぐ移動出来ない。動かすたびにかちゃかちゃ鳴る。何故か上に、引かれる感じがある。何に、かは分からない。高いところ。解析を試みる。

ジジ……ジジ……解析不能。

男がしゃがんだ。四角い何かを近づけてきた。断面を開いてガリガリ噛む。

内部の回路の一部が繋がった。

男の眉は下がったままだ。顔の下半分、ほんの少し画像に近づいた。ほんの少し。

これはいい。

俺は決めた。こいつから餌をもらって修復する。早く、画像の顔に戻す。

翌日、男は同じ時間に来た。
決まった時刻に来るのは規則的で良い。
周囲に落ちている電子部品は、暗いうちにあらかた食べ尽くしてしまった。
抉れた部分はだいぶ塞がった。今日は音もなく進める。真っ直ぐに。男は俺を両手で抱えた後、壊れた時計をくれた。
相変わらず眉は下がったままだけど、下半分はあの感じが戻ってきた。俺はジジッと鳴いてぐるぐる回った。

それから毎日、橋の下に男は来た。
死んだリモコン、古いイヤホン、壊れた充電器。
日に日に男の眉の形が戻ってきた。丸くなった体で男に飛びついた。顔の下半分のこの形、画像に近い。俺は多分これが好きみたいだ。
傷は完全に塞がった。
でも、最近変だ。腹一杯食べた後、思考が途切れる。気がつくと、散雨塔の抉れた部分を見つめている。

今日もあの男が近づいてくる。
身体、変換、89%、自己、修復、92%、…違う、復旧日時予…違う。違う違う。
餌だ。あれを食べて俺はあいつとずっといたい。
でも本当はそれだけじゃダメなんだ。
散雨の降り出した後、虹が出る時に見せてくれる。
そう、あの顔。笑顔だ。
俺はあいつのあの顔が見たい。
俺の名前は…ジジ。
そう、ジジだ…。

消陽刻の後、散雨塔を見上げた。
身体変換96%、自己修復98%、復旧日時予測、翌日深陰刻03時48分12秒。
これより散雨塔修復作業開始。
何かに引っ張られ、軸を失ったように動く。重心を戻すために勝手に脚の出力が上がる。
カン、カンカンと不規則に金属同士が触れる音。

——あの時。
『不要領域検出。深陰刻02時16分34秒、パージ完了。』
そうだ。俺が自我に目覚めた時。要らないと言われて、ここに落ちた。流されて、あいつに出会った。

あいつ…?あいつって誰だ。俺?俺って…

止まる。風が流れる。

名称:天候監視ターミナ…
ガキンと音が響く。
散雨塔の金属の壁が僅かに凹む。
ー頭部表面損傷軽微自己修復開…

うるせぇ黙ってろ!
俺の…俺の名前はジジだ。
あいつがつけてくれた名前だ。
いいか、俺は絶対に忘れない。
絶対に忘れるんじゃねーぞ。

ガンと一歩踏み出す。
行かされるんじゃない。俺の意思で行く。
一歩。
あいつに笑顔を取り戻す。
また一歩。
俺があいつに、虹を見せるんだ。
力強く、ぶれないよう。踏み外さないよう。速度を上げる。

俺はあいつの笑顔が見たいんだ。


翌朝、男はいつもの時間に来た。
ふらふらした後、男はしゃがんだ。持ってきた餌を、いつもの場所に置いた。コンクリートの上に、ぽつんと。

男は口を動かした。

定時散雨が降り出して、そこに朝日が差し込む。
男は立ち上がって見上げた。

空に、虹が掛かっていた。


この創作の逆視点に挑戦してみました。
SF感維持できてるでしょうか…。


すみません。
同じ話の視点が違うという都合上、題名を少し変えてしまいました。ルール逸脱かもしれません。

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