優績店、事故を出さない店、人が辞めにくい店に共通していた支店長の心得とは
教科書に出てくる支店長像と、現場で本当に店を持たせられる支店長は、まったく別物です。
「風通しの良い支店をつくる人」
「一人ひとりに寄り添い、悩みを共有する人」
本にも研修にも、だいたいこう書いてあります。
きれいです。正しいようにも聞こえます。
ただ、現場を知っている人間から見ると、あれは聞こえの良い嘘です。
飲み会を拒否する若手がいる。
それは今の時代として普通です。
その若手に対して、支店長が「何でも話してくれ」「悩みは全部聞く」と構えても、現実は動きません。
若手が支店長の前で本音を出す場面は、ほとんどありません。
出せる空気をつくったつもりでも、役職の壁は残ります。
だからこそ、役割分担がある。
若手の小さな悩み、人間関係、仕事の詰まり。
これは係長、代理、身近な先輩が拾う仕事です。
そこを支店長が全部抱え込もうとする店は、かえって歪みます。
中間層が機能しなくなり、支店長だけが「いい人」を演じて、現場の情報は上がってこない。
では、有能な支店長とは何か。私が見てきた優績店、事故を出さない店、人が辞めにくい店に共通していたのは、たった一つです。
「この人は騙せない」と思われていること。
カリスマでも、人情味でも、飲み会の上手さでもない。
行員の一人ひとりが、無意識にこう感じている。
「この支店長の前では、取り繕っても無駄だ」これです。
支店長は、毎日の中で人を見ています。
朝の表情。窓口の立ち方。電話の声のトーン。
書類の出し方。席を立つ頻度。同僚との距離感。
数字の前に、まず人の状態がある。
昨日まで普通だった人間が、今日だけ少し違う。
その「少し」に気づけるかどうか。違和感は、最初は小さい。
挨拶が短い。目が合わない。報告が遅い。
些細なことです。
だからこそ、誰よりも早く気づいた人間が、店を守る。
気づいたら、どうするか。
まずは当人に直接、軽く声をかける。
「最近、少し忙しそうだな」
それだけで十分です。問い詰める必要はない。
あるいは、担当の上司に聞く。
「あの子、何かあったか」 大事なのは内容そのものより、
「支店長は見ている」という印象を店全体に残すことです。
悩みを直接、支店長に話してくる行員は少ない。
それは当然です。
それでも、見られている感覚がある店では、人は簡単に一線を越えません。着服、横領、顧客対応のごまかし。
不祥事の多くは、ある日突然起きるものではありません。
日常の違和感を、誰も拾わなかった結果です。
「まあ、大丈夫だろう」が積み重なった先に事故がある。
だから支店長の仕事の本質は、理念を語ることでも、若手と仲良くなることでもない。 一人ひとりの行員を、よく見ること。
表情を見る。態度を見る。変化を見る。 そして「この人には隠せない」と思わせること。
それが、店を守り、人を守り、結果として数字も守る。
きれいな言葉より、こちらのほうがよほど大切なことなのです。
