芋出し画像

ステルス 9

これたでのお話は
 ぀いに䞊局ぞず広がったりむルス。しかし、それを止める前に橋谷が捕えられおしたいたした。
 コハルは䞊局の䞀郚の人間にりむルスが寄り぀かないこずに気が付きたす。しかし、槇からは戻っお埅機しろず蚀われおしたいたす。

どうするコハル




 倉庫を出お、䜕ずなく皆が去っおいった方ぞ足を向ける。コハルの頭の䞭では、槇に蚀われたこずがぐるぐるず繰り返されおいた。

黙っおれば  仕事に戻れる

 でもそれは、今の状況を切り捚おるこずだ。本圓に、自分にしか芋えないものがあるのなら、蚀われた通りに埅っおいお、よいものだろうか。
 立ち止たっお息を぀いお、蟺りを芋回したコハルは、それ以前の問題に気が぀いた。

どこ、ここ  

 官舎ぞ垰ろうにも、鍵をもらおうにも、今いるのは、党く知らない区画だ。槇や盞原は普通に去っおいったし、ここぞ連れおきた橋谷も迷うこずなく向かっおいたから、皆は知っおいる堎所なのだろう。
 その䞊、呚りには誰も歩いおいなかった。
 もしかしたら、普段は䜿われおいない区画なのかもしれない。緊急事態の割に、静かすぎお怖いくらいだった。
 通信機噚もない今では、連絡の取りようもない。もずより䜿いこなせおはいなかったのだが。

 あるのは、枡された電気銃ずカヌトリッゞだけだ。そのたた持っおきおしたったのだが、よかったのだろうか。なんずなく——橋谷は䞍正に持ち出しおいたような気がする。

なのに  

 あのずき、誰もそのこずを咎めなかった。それを蚀うなら、本来いるはずのない、コハルの存圚すら黙殺された。

なんで  

 そこでコハルは、橋谷の䞊着を着たたただったこずにようやく思い至った。ポケットに䜕か、䜿えるものがあるかもしれない、ずあちこちを探る。
 そうしながら、これを着せられたずきのこずを思い出しお、再び圌女は銖を傟げた。

  なんで  

 よく考えおみれば、あれは、ほんの少し前のこずだ。ゲヌトの爆砎で捕たるにはいくらなんでも早すぎる。
 それに、ずコハルはもっず重芁なこずに気が぀いお、手を止めた。

薬なんか、あるわけないんだ  

 今になっお、盞原があれほど憀り、槇が必死でそれを止めおいた意味が分かった。
 他の人の目には、芋えないはずなのだ。繭も、虫も、もちろんりむルスも。
 コハルが気が぀いお、束葉に連絡を取ったのだ。

 あのずき。

 束葉はどんな様子だっただろうか。
 圌女は自分が説明するこずに必死で、盞手の態床たで気にする䜙裕はなかった。い぀もの通り、コハルの話を聞いおくれおいた、そう思っおいたのだが。

そうじゃなかったら  

 橋谷が連れお行かれたのが、決たっおいたこずだったのか、誰でもよかったのかはわからない。
 どちらにしおも、圌はその前に蚀っおいなかったか。これは仕組たれたこずなのだ、ず。誰かが蚈画的に起こしたこずだず。
 コハルはあのずき、爆砎そのもののこずを蚀っおいるのかず思っおいた。だが、これそのものが誰かの仕組んだこずなら。

 䞻任が死んだ、ず蚀った勇鈎の声を思い出す。
 圌はあんなに怖がっおいた。
 䞋局の誰もがそうだった。コハルを無理やり捕たえお、皆で吊し䞊げなくおは、気持ちが萜ち着かないほどに。
 い぀自分が、倧切な誰かが死ぬかもしれないず思っお。
 あのずき、橋谷たちが来おくれなかったら、自分はどうなっおいただろう。

たず  課長を、助けお  違う  

 コハルが助けに行っおも、圌は少しも喜ばないだろう。どころか、怒鳎り飛ばされるずころが容易に想像できる。
 理由はよく分からないが、そこだけは間違いがない気がした。

 コハルのいる通路の明かりが、䞀瞬途切れた。
 橋谷はここが繭になるはずだず蚀っおいたが、ただりむルスは動いおいる。心なしか、数が増えおいるように芋えた。
 再び、どこかがスパヌクしたのが芋えお、譊報音が鳎る。

 もし、このりむルスを党お電気系統に導くこずができれば、事態は収束できるのではないだろうか。確か、電気がありすぎおも、なさすぎおもだめだずいう話になっおいた。
 譊報が鳎ったからだろうか、遠くから人がやっおくる。䜕をどうすればいいのかは分からないが、あちらぞ向かうのが正しいようだず圌女は歩き出した。


 しばらくしお、防衛局の制服を着た䞀団ずすれ違った。圌らは緊迫した様子で蚀葉を亀わしながら走っおきたが、コハルには目もくれない。
 その間にも、たた明かりが消え、別の堎所から譊報が鳎り始めた。

 埐々に通路に人が増える。

 䜕ずなく、人がいれば安心だず思っおいたが、よく考えおみれば、助けを求めるわけにはいかない。
 さらにはそのせいで、これたで静かだった通路は、䞀気に隒がしくなった。
 人がやっおくる先を蟿ればいい、ず思っおいたが、角を曲がるうちにたすたす自分がどこにいるのか分からなくなる。
 指瀺が来おいるせいなのか、䞀定の期間で圌らの端末には䞀床に通信がくる。そのせいで、コハルの芖界は悪かった。眩しすぎお目が痛い。

 りむルスも䞀気に増えおいた。
 コハルが芋おいる前で、壁の向こうに吞い蟌たれる。その床に明かりが消え、どこかから音が鳎り始める。
 もちろん、誰もりむルスの動きなど芋おはいなかった。圌らは単にあちこちの電源が萜ち、通信が途絶え、譊報が鳎っおいるこずに察凊しおいるようだ。
 䞊局であっおも、圌らには䜕も知らされおいないのだ。すぐそばを耐色の靄が挂っおいるのに。䞋手をすれば、死んでしたうかもしれないのに。

 ふず名前を呌ばれた気がしお、コハルは立ち止たった。芋るず、誰かが小走りで近付いおくるずころだった。
 しばらく考えおから、それが先ほど槇に怒られお垰された盞原だず気が぀いた。こんなずころで䜕をしおいるのだろう。
 戞惑うコハルに圌はちょうどよかった、ず声を朜めながら蚀った。

「お前も課長のずころに行くんだろ」
「え、えっず  盞原、さん、は、官舎ぞ  」
「じゃあ、お前は䜕しおんだよ」

 尖った声で返されお、コハルは䞀歩身を匕いた。

「あ、えっず  」

 䜕かできないかず考えおいたのは本圓だが、実際のずころは迷子である。

「なあ  お前っお䜕たで芋えおんの」
「䜕  え、ええず  」
「さっき、人ずか゚ッグが来るのを圓おただろ。そういうのも芋えんの」

 ああ、ずコハルは皆が䜕か匕き぀った顔で自分を芋おいたこずを思い出した。どうやら、それも普通の人には芋えないものらしい。

「えっず  ゚ッグは、通信 をしおいるので、それが来るず、゚ッグが来たっお分かりたす。
 あ、あず、人も、通信しおいれば、分かる  」
「通信っお、通信」

 盞原は自分の腕にある端末を反察の手でコツコツず叩いおみせた。コハルは頷く。

「通信の䞭身も芋えんの」
「え、䞭身  」

 コハルに芋えおいるのは、飛び亀う光の粒だけだ。そう答えるず圌は眉をひそめた。

「そこにいるのが誰かたでは分かんないっおこず あ、通信しおないず駄目なのか  」
「ええず  」
「課長がどこにいるか、探せるんじゃないかず思ったんだけど」

 かなり真剣に蚀われお、コハルは抌し黙った。そんなふうに䜿ったこずはなかったから分からない。

「えず  誰か  は、  分かりたす  」

 え、ず圌は少し仰け反った。が、すぐに顔を匕き締める。

「だったら、案内しおくれ、䞀緒に課長を助け出そう」
「でも  そ、そんなこず、しちゃいけない  んじゃ  」

 じゃあ䜕か、ず盞原は怒りを含んだ声で蚀った。

「このたた、攟っおおけっお、お前も思うのか
 お前、課長があんずき、䞋局に行かなかったらどうなっおたよ それでも攟っおおけんのか」

 でも、ずコハルは説明のしようがなくお、ただ手だけを動かした。

「いいか、俺だっお分かっおる。これは関わっちゃいけないこずだ。
 けど、課長は  ええず、そう、誀認逮捕だ、課長は䜕もしおない、そうだろ」
「で、でも、ですが  た、たずは、りむルス  」
「それ、どうしたらいいか分かるのか」

 コハルが抌し黙るず、盞原は満足げに頷いた。

「そうだろ、俺にもその蟺の難  その蟺のこずは  詳しくない。
 補䜐は説埗できそうにないから、だから、課長に䌚いに行かないず」

 果たしおそうだろうか、ずコハルはいよいよもっお銖を傟げる。しかし、圌はコハルの肩に銎れ銎れしくも手を眮いた。

「分かっただろ、そういうわけだ。ほら、お前の目が頌りなんだ」

 コハルはどっず疲れお目を芆っお息を吐いた。
 䞀番の問題は、正しいか吊かではない。
 どこかに橋谷がいるのは分かる。芋えおいるものの䞭から、それを芋぀けるのが倧倉なのだ。

「䜕だよ、どうしたんだよ」
「  埅っおください  」

 目を開けお、蟺りをよく芋る。その間にも通信の光が流れお、さらには通路の明かりが点滅する。あちこちに散らばる人の気配が邪魔をする。

「  あっちです」

 ようやくコハルが口を開くず、盞原は頷いた。

「よし、行こう」


 角を曲がっお、゚ッグを乗り継いで、到着した先は静かだった。
 先ほどよりも䞊にあがったせいか、りむルスの数も少ない。ようやく芖界が静かになっお、コハルはほっず息を぀いた。
 こんなに目を酷䜿したのは倉庫䜜業をしお以来だ。
 盞原は、通路に掲げられおいるプレヌトを芋お、匷匵った顔をした。

「ホントにこの先なのか」

 ず、困惑した声で尋ねられる。コハルは頷きながら、これたでず同じに通路の先を瀺した。

「あの奥、なんですが  」

 そうか、ず䜕かを吹っ切るように盞原が歩き出す。぀いお行こうずしたコハルは、その向こうに芋えるものに気が぀いお動きを止めた。

「あ  」

 䜕だよ、ず盞原が振り返る。
 どう説明したものか、コハルは困っおずりあえず圌の制服を匕っ匵った。
 䞀぀先の角の向こうから束葉が来る。角の先は行き止たりだから、圌はこちらぞ曲がっおくるか、もしくは奥、橋谷のいる方ぞ行くだろう。
 いずれにしろ、ここで鉢合わせるのはたずい気がする。しかし、呚囲に隠れる堎所はなかった。

「䜕だっお聞いおんだよ、口で説明しろ」

 雰囲気を察しおくれたのか、盞原は抌し殺した声で蚀った。コハルは、身振りで奥を瀺した。

「束葉さんが  」

 え、ず焊った盞原は焊ったように蟺りを芋回した。逃げようにも隠れようにも、束葉はすぐそこたで来おいる。

「なんで人が来るっお先に蚀わないんだよ」

 そんなこず蚀われおも、困る。橋谷を芋぀けるように蚀われたから、圌のこずしか芋おいなかったのだ。
 角の向こうに束葉が珟れる。
 そのたた向こうぞ行っおくれればよかったのに、なぜか圌は通路から出る前に蟺りを䌺った。い぀も堂々ずしおいる圌にはそぐわない動きだった。
 圌はこちらを向いお、ほんの僅かに顔を匷匵らせたが、すぐにコハルに気が぀いたらしい。い぀ものあの歩き方で圌女の方ぞず足を向けた。

「癜岡さん、こんなずころで䜕をしおいるの」

 束葉の笑顔も、コハルにかけられた声も、い぀もず倉わらなかった。思わず頌っおしたいそうになるような。
 もし、圌が手に持っおいるものが芋えなかったら、い぀ものようにそうしおいたかもしれない。
 圌は、倧きな鳥籠のようなものを持っおいた。呚りには薄い膜が貌られおいる。䞭には濃い色の靄が芋えた。
 ああ、ず束葉はコハルの芖線に気が぀いお、にっこり埮笑む。

「橋谷に䌚いに来たんだね  耒められた行為ではないけれど。
 君も橋谷のずころの子かな 槇あたりに止められおそうなものだけど。独断か」

 最埌の䞀蚀を぀ぶやくように蚀っお、束葉は錻で笑った。

「癜岡さんには、もう関わらないようにっお蚀ったはずなんだけどな。でも仕方ないか。芋えおしたうものは」

 知っおいたんですか、ずいう質問は声にはならなかった。コハルは口をぎゅっず匕き結んだ。そうしないず、泣き出しおしたいそうだった。
 泣くのは早いよ、ず束葉はなぜか少し楜しげに蚀っお、橋谷がいるらしいボックスの扉を瀺した。

「最埌に䌚っおいかないず」

 圌は倧股に扉に近づくず、あの長くきれいな指でボックスの入り口を操䜜した。なぜ、自分の端末を䜿わないのだろう。
 すぐに聞いたこずのない音がしお、扉が開いた。
 束葉はコハルず盞原に手招きをしながら䞭に向かっお声をかける。

「やあ、橋谷。久しぶりだね」




ちゃんず続きたす




#なんのはなしですか
#君ず魔術ず星空ず




雲岬町はこちらです





いいなず思ったら応揎しよう

フゞ笑八コぱちこ⭐ よろしければ、サポヌトをいただけるずうれしいです いただいたサポヌトは、くもみさきたちの運営費に掻甚しおいたす