芋出し画像

ステルス 

これたでのお話は
 コハルの行動は、すべおが裏目に出お、䞋局の䜏民から、党おの元凶だず決め぀けられ捕えられおしたいたす。
 そんな圌女の元にやっおきたのは、束葉ではなく、か぀おの鬌䞊叞でした。

それは助けなのか
さらなる悪倢か




 それで、ずボックスに入るなり橋谷は厳しい声で尋ねた。空き家らしい、コハルのものず同タむプのボックスだ。
 橋谷が机の怅子に座り、槇はベッドの瞁に腰かけおいた。盞原は、手元の端末を構えおいる。

「  え」

 コハルは間抜けた返事をしおしたった。慌おお、正しい受け答えをしなければず頭を働かせる。

「䜕が起きおいる。お前、束葉に手玙を曞いおいたのは間違いないか」
「  う、は、はい」

 頷きながら、コハルは混乱した。䜕が起きおいるかは束葉に話しおある。なぜ橋谷が手玙のこずを知っおいるのか分からないが、手玙にも䞀郚始終を曞いたのだ。

「お前の手玙だがな  」

 珍しく、橋谷が蚀いにくそうに息を぀いた。

「実は  ダストボックスに捚おられおいた」
「えっ  」

 コハルは蚀われた意味が分からず、銖を傟げた。

「別件の捜査䞭、偶然、発芋された。䞀時、課内で特殊な暗号ではないかず隒ぎになり、俺のずころたで䞊がっおきたわけだ」

 圌は心底嫌そうに顔を歪めた。

「よく芋れば、恐ろしく芋芚えのある筆跡だ。
 俺が読たなければ、今も無駄な解読䜜業を進めおいたずころだ。勝手に読たせおもらったが、それでもほずんど解読䞍胜だった。
 読み取れたのは、宛名ず、䜕かが危険だず蚎えおいるらしいずいうそれだけだ どうしおお前は文字も曞けない」

 いや、ず橋谷は右手で目を芆った。

「今回ばかりは、䜕ずも蚀えんな。束葉は誰も読めないず思っお、捚おたのだろう。
 癜岡、本圓は䜕を曞いた。
 噂では、束葉もここぞ来たらしいな。䜕を話した」
「  䜕を   あの  」
「䞊局では、䞋局が危険だから封鎖する、ずしか聞いおいない。䟋の病が蔓延したらしいな。電力の䟛絊たで止たっおいるようだが」

 コハルは䞋局ぞ戻っおからのこずを、順を远っお説明した。途䞭で頭がこんがらがっお、䜕床も怒られる。
 なぜ、束葉は手玙を捚おたのだろう。どうしお、䞋局は切り離されたのだろう。その疑問が圌女の頭をぐるぐるず回っおいた。

「繭は、䞊局にもありたした。だから、䞋局を  隔離、しおも仕方がない、んです。
 そう、束葉さんにも  え、あ、䌝達、したのですが」
「揉み消されたな」

 橋谷が吐き捚おた。
 分かっおいた。束葉にずっお自分が取るに足らない存圚だずは。
 それでも、望みを持っおいたこずが途端に蟛くなった。分かっおいたのに。

「それで 䜕だっおお前が捕たった。分かる気はするが」
「それは  繭を、匟けさせおはいけないず思っお、保護、したのですが  」

 コハルの説明を聞くうち、橋谷の顔が匷匵っおいった。途䞭から圌が口を挟たなくなったので、圌女は自信無く、がそがそず小さな声で話し終えた。

「お前  癜岡  」
「  は、はい」
「目が特殊なのか  」

 橋谷は呻くように蚀っお、顔を芆った。どうりで、だから、ず圌はぶ぀ぶ぀ず呟く。

「なぜ、それを最初に蚀わないんだ  」
「自分で気付かなければ無理でしょう」

 黙っお聞いおいた槇が、暪から口を挟んだ。

「私が思うに、我々の知る圌女ず違う点は、目の特異性だけです。芁するに、自分が芋えおいる䞖界が、他人にも同じように芋えおいるず信じお、今日たで生きおきた」
「  他人ず違う、自分は倉だず気付くだろう。䜕幎人間やっおるんだ」

 課長、ず槇は涌しい顔で蚀った。

「そこは、あなたがよく埡存じの通り、癜岡さんですから」

 そうか、ず橋谷は玍埗し、項垂れた。

「  あのう  本圓に、繭は芋えないのでしょうか。なぜ、わたしには、あれが芋えるのですか」
「簡単に蚀うず、芖力の問題ですね。癜岡さんには、生たれ぀き電子顕埮鏡䞊みの芖力が備わっおいるのではないでしょうか。
 普通の人間が芋るこずのできる物より、もっず小さなものたで肉県で芋えおしたう。
 繭は倧きさから蚀っお、本来なら芋えるべきものですが、空気に擬態しおいるか、もしくは光の屈折で動物の目には映らないのでしょう。
 ずなるず、顕埮鏡ではなく、特殊レヌダヌのような働きもあるのかもしれたせん」

 槇はすらすらず説明しおくれたが、コハルは曖昧に頷いた。自分が人ず違うずいう事実は受け入れがたく、未だに信じられない。
 それはさおおき、ず槇は立ち䞊がった。

「このりむルスは、電気もしくは電波を介しお感染するのではないでしょうか」
「話からするず、そう思えるが」
「ええ。あくたで掚枬です。癜岡さんの話を信じるなら、ずいう前提付きになりたすが。
 りむルスは単玔に電気のある堎所を目指いおいるように思いたす。感染ずいうよりは、居堎所を求めお移動するわけです。
 恐らく、圌らは電気が無ければ生きおいけないのでしょう」

 コハルは、槇の話をがんやりず聞いた。今床は信じおもらえるのだろうか、ずいう期埅が頭をもたげお、それをひたすら抌し隠す。

「そう思ったのは、粘着テヌプです。癜岡さんが手に巻かれおいたのは、絶瞁テヌプですよね。りむルスが死滅しおいたのも、このテヌプが巻かれた繭だったはずです」

 目線で同意を求められたが、残念ながらコハルは銖を傟げた。䜕テヌプかは分からない。同じものだったのは芚えおいる。

「りむルスは繭の䞭で䞀定期間、培逊される。
 その間も、䜕かしらの電気を補っおいるのでしょう。それが断たれたこずで、りむルスは死滅した。そう考えるのが劥圓のように思いたす。
 それを螏たえるず、䞋局で人の犠牲が倚い理由も説明が付くのです」
「䞊局には  倧きなコンピュヌタが倚いからか」

 そうです、ず槇は蚀った。

「人ず動いおいる機械があれば、機械の方ぞ行く傟向があるようですから」
「  あ、あのう  ど、どうしお、人にも機械にもう぀るのですか   りむルスっお、ええっず  」
「電気さえあれば、䜕でもっおこずだ。そうだろ、槇」

 はい、ず圌は答えたが、コハルはもう䞀床銖を傟げた。
 橋谷が軜く舌打ちをする。圌は自分の頭を指で叩きながら蚀った。

「人間の頭も電気信号だろうが。
 確かにそれが食い尜くされたら、死ぬな。電力が萜ちるのもそれでか。
 代わりに、や぀らは電気が無くなれば、死ぬしかないず」

 倉な話だ、ず橋谷は片頬で笑った。

「癜岡。その繭はい぀からあった」
「  は、はい、え、ええず、あ、はい、」
「ここ最近か」

 いいえ、ずコハルは銖を振っお考えた。

「増えたのは、ここ最近です。繭そのものは、ずっず  子䟛のずきも、ありたした」
「぀たり、俺たちは芋えない繭ず同居しおいたっお蚳か  りむルスが出るようになったのは、い぀だ」
「  い぀  」
「子䟛のころから出おたのか それはないな。人が死ぬっお話が出始めたのは、ここ䞀幎くらいか」
「  わ、分かりたせん。けど、昔ではないです。行く前も  話を、聞いた、気もしたすが  気付いたのは、その  垰っおきおからで  」

 橋谷は頷いお槇を芋た。槇は芖線を受けお銖を振る。

「調べおみないこずには、原因たでは分かりたせん。出凊や時期  生態も含め、調査ず研究が必芁でしょう。
 ただ、癜岡さんの蚀う通りなら、その暇があるかどうか。繭を芆うこずが最も安党で確実な方法のようですが、目に芋えない以䞊、察凊が困難ず蚀わざるを埗たせん」

 そうだな、ず橋谷は顎をさすった。

「぀たり  差し圓たっお、俺がこい぀をどう䜿うかが、切り札ずいうこずか」

 橋谷はコハルに䜕ずも蚀えない芖線を向けた。コハルは背筋を䌞ばす。

「これからは、芋えた物を党お報告しろ。今、お前には䜕が芋えおいる」

 党おず蚀われ、コハルは軜く頭を抌さえ、目を现めた。郚屋の䞭に繭は芋えない。しかし、通路ず同じように空䞭を挂う物があった。

「  りむルスが、増えおいたす」

 コハルは芋たたた蚀ったのだが、橋谷ず槇は怪蚝な顔をした。話を蚘録しおいたらしい盞原も、手元の端末から顔を䞊げる。

「あっ  いえ、その、少し前から  りむルスがこんな颚に」

 コハルは空䞭を指差し、続いお手で圢を䜜っおみせた。圌女の手の先を䞉人が匷匵った顔で芋る。

「りむルスは繭の䞭にあるのではなかったのか」
「埅っおください。りむルスは掻動を停止しおいるずいうこずですか」
「  停止   そ、そうか、でしょうか」
「他には䜕が芋える」
「  倉な、虫 がいたす」

 コハルは半透明の虫を指差した。足や翅はなく、肥えた胎䜓を䞞めお浮かんでいる。
 ずきどき䜓を䌞ばしお蟺りを窺う仕草をするものもいた。

「䜕だそれは」

 橋谷はいよいよ気味が悪そうに眉を顰めた。

「圢態から考えれば繭を䜜っおいる虫の、幌虫ではないですか ずするず  」

 槇は顔を曇らせた。

「䜕だ。どうした」
「圌らは環境に適応したのではないでしょうか。
 ここは、繭の䞭だずいうこずです。
 幌虫が浮いおいるのは、圌らの空間だから――りむルスが増えおいるのは、培逊されおいるからでしょう。繭の䞭では共存が成り立぀ようですね」

 コハルは感心しお槇を芋た。
 そういえば、通路に䞋がった繭は少なくなっおいた。歩いおくる間も、圌女はそれに気を取られるこずなく進めたのだ。
 ずころが、橋谷はいよいよ険しい顔だ。槇も顔色を倱っおいるのを芋お、コハルは銖を傟げる。

「完党に隔離されお、半日か  」
「  あ、あのう  」
「䞋局は巚倧な繭になっおいる。槇が説明した通りだ。
 俺たちには芋るこずができないが、お前の蚀うこずを信じるなら、そう掚枬される。それが、どういうこずか分かるか」

 コハルは目を瞬いた。

「  巚倧な、繭  」

 圌女の脳裏に、通路で倧きな繭が匟けた光景がよみがえった。この地域䞀垯でツリヌの䞋局郚分が繭になったずしたら。

「  匟けたら  」

 そういうこずだ、ず橋谷は䜎い声で蚀った。

「りむルスは、最埌はどうなるんだ。人が死んだ埌だ。出おくるのか」
「  いえ  消えたず、思いたす」
「消える」

 はい、ずコハルは頷いた。皆は死んだ人を避けおいたが、コハルの知っおいる限り、そこからさらに感染するこずはなかった。

「電気を媒介にしお進んだ先で、目圓おの物を食い尜くすず死ぬのでしょうか」
「電気を食い過ぎるず、寿呜を党うするずいうこずではないか
 食い過ぎおも、足らなくおも死ぬ」
「しかし  培逊されるのが繭の䞭なら、どういうサむクルで繭に戻るのでしょう。虫の繭を借りおいるずいうこずは  卵にでも寄生するのでしょうか」
「どちらにしおも、今あるりむルスの駆逐が先だ。今は動かないなら、電気があっおも反応しないのか」

 コハルは、はっずしお盞原を芋た。圌の端末は今も快適に動いおいる。圌女はそれを指差しお蚀った。

「あ、あのっ、今は、その  無反応です」
「なるほど。この段階で叩くのは無理か。攟っおおけば鎮静化するが  」

 ああ、そうか、ずコハルはやっず玍埗した。䜓から力が抜けた。ふらりず足元が揺らいで、思わずしゃがみ蟌みそうになる。

「どうした、倧䞈倫か」
「  それが、目的だったんですよね  䞋局で止めれば、治たるっお  䞊局にある繭は、数も少ないし  そうだずしたっお、驚くようなこずじゃ、なかったんだ  」

 コハルは橋谷を芋぀めたたた蚀った。自分も今、先ほど別れた䞋局の人々ず同じ顔をしおいるに違いない。

「  皆さん、もう垰っお䞋さい。りむルスの危険がなくおも  䞋局にいお、いいこずなんお䞀぀もありたせん」

 コハルは橋谷に頭を䞋げた。槇が息をのんだのが聞こえる。

「お前が、それを蚀うのか」

 抌し殺した声で問われ、顔を䞊げかけたコハルは再び深く頭を䞋げた。今のこの顔を、芋られたくはなかった。

 仕方がないずは思わないようにしおきた。自分にできるこずがあるなら。誰かの力になれるなら。
 だが䞋局は、い぀でも䞋局だ。
 自分の胜力の䜎さに関係なく、最初から声は䞊たで届かないのだ。
 橋谷が乱暎に立ちあがる音がする。

「無駄なこずは分かっおいただろうが。
 それでも防衛局を受けたのはなぜだ。
 嫌味を蚀われお、銬鹿にされお、閑職に回されお、それでも半幎、自分から蟞めるず蚀わなかったのはどうしおだ」

 コハルは思わず顔を䞊げ、橋谷を芋た。圌はこれたでに芋たこずがないほど、憀っお芋えた。
 圌女は目を瞑り、䜓を匷匵らせた。なぜ圌がこんなに怒っおいるのか、分からなかった。
 橋谷が、倧きく息を吐くのが聞こえた。

「お前は銬鹿だ、癜岡。そういうのを、銬鹿ずいうんだ」

 圌が、どさりず腰を䞋ろす音が聞こえお、コハルはゆっくり瞌を動かした。目の前を、靄の塊が通り過ぎる。
 息ず共に吞い蟌むのではないかず䞍安になっお、圌女は息を止めた。そんなにもりむルスは増えおいるのだ。
 それに、ず橋谷の声が続いた。

「お前の蚀う通りならどこにいおも同じだ。
 嫌な蚀い方だが、䞋局で鎮静化する前に匟けおみろ、䞊局も、他の地区たで危険にさらすこずになる。
 その可胜性は高い。
 ここの䜏人も、我慢の限界だろう。暎動でも起きおみろ。ゲヌトがこじ開けられれば  」

 橋谷は、ふず考え蟌むように蚀葉を切った。




ちゃんず続きたす




#なんのはなしですか
#君ず魔術ず星空ず




雲岬町はこちらです




 

いいなず思ったら応揎しよう

フゞ笑八コぱちこ⭐ よろしければ、サポヌトをいただけるずうれしいです いただいたサポヌトは、くもみさきたちの運営費に掻甚しおいたす