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映画レビュー『タレンタイム 優しい歌』 また、君とこの映画が観たい

2009年に亡くなったマレーシアの女性監督ヤスミン・アフマドの遺作を、製作から8年を経て劇場公開。ピアノの上手な女子学生、二胡を演奏する優等生など高校生たちが、宗教や民族の違いによる葛藤を抱えながら、音楽コンクール“タレンタイム”を目指す。ドビュッシーの『月の光』、バッハの『ゴールドベルク変奏曲』などのクラシックに加え、マレーシアの人気アーティスト、ピート・テオが作曲したオリジナル曲など、多彩な音楽が物語を彩る。

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素晴らしい映画体験だった。
本作との出会いは2021年の僥倖となるだろう。


マレーシア映画は初見だが、台湾映画『牯嶺街少年殺人事件』『恋恋風塵』や香港映画『藍色夏恋』に通じるテイストを感じた。
マレーシアの民族や宗教など国情は殆ど分からないもののDNAレベルに作用する懐かしさを抱いた。

ピアノの得意な女学生ムルーと聴覚障害者マヘシュの淡いラブストーリーがメインとなるが、他の生徒やその家族までも網羅した壮大な群像劇である。
無駄なエピソードがなく全てのシーンに意味がある。
生老病死。
人が人生で避け得ない全ての要素を織り込んだ脚本が見事。
いつの時代のどの国でも共感出来る普遍性を内包している。
あらゆる感情を映しとる流麗なカメラワークも印象に残った。

ムルーの歌う「エンジェル」のメロディに乗せたマヘシュへの恋心の移ろいが心に染みる。
ムルーにヘルメットを被せるマヘシュ、
露天街でそっと手を繋ぐふたり、
公園で天使を見るふたり。
「彼女を忘れる方法を教えて欲しい」と愛する母親に懇願するマヘシュ。
青春の残滓が込み上げる宝物のようなシーンが凝縮されている。

凡庸な監督ならクライマックスに持ってくる筈の音楽コンクール、タレンタイム。
しかし、勝者が明らかにされないどころか、ムルーは「エンジェル」を披露しないままステージを降りる。
対立していた優等生ふたりの友情で幕。
鳥肌が立つほど完璧な終わり方だった。
崇高な何かを目にしたように自然に涙が滲んだ。


どんな美辞麗句を書き連ねても私の拙い文章力ではこの映画の魅力は伝え切れない。
未見の方は是非ご覧下さい。
必見の価値ある名作です。


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