映画レビュー『シェイプ・オブ・ウォーター』 映画を好きで良かったと心底、思える珠玉の逸品
「パシフィック・リム」のギレルモ・デル・トロによる第74回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞のファンタジー・ロマンス。1962年、アメリカ。声を出せない清掃員イライザは、勤務する政府の極秘研究所で不思議な生きものと出会い、その姿に魅了される。出演は、「ブルージャスミン」のサリー・ホーキンス、「ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気」のマイケル・シャノン、「ジャッキー・コーガン」のリチャード・ジェンキンス、「パンズ・ラビリンス」のダグ・ジョーンズ、「メッセージ」のマイケル・スツールバーグ、「ドリーム」のオクタヴィア・スペンサー。第90回アカデミー賞において作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞を受賞。
美麗な色彩で構成された水中撮影、変幻自在なカメラワーク、洒落たタップの靴音…冒頭から名画の予感がした。
発話障害の孤独なイライザ(サリー・ホーキンス)とアマゾンから移送された異形の神(半魚人)の奇跡的な邂逅から物語は始まる。殺処分寸前の研究所からのスリリングな脱走劇に手に汗を握る。東西冷戦下のプロトタイプな善悪描写も巧みに様式美へ昇華される。大きな期待と共に後半へ。
神が猫を食い千切る衝撃的なシーンの意味を問う間に、本作の白眉と言える水中での性愛シーンの神々しさに言葉を失う。映画の可能性と素晴らしさが凝縮されたミュージカルシーン。隠匿場所からのサスペンスフルな脱出に再び、手に汗。桟橋でのストリックランド(マイケル・シャノン)との闘いを制した神がイライザと水の中へ消えていく結末に充ち溢れるカタルシスは最早、言葉に出来ない…
エンディングに向けてどんどん美しくなるサリー・ホーキンスにプロフェッショナル女優の凄みを見た。悪役らしく憎々しいマイケル・シャノンも好演。差別や偏見を受ける社会的弱者への慈愛と励ましに満ちたピュアなラブ・ストーリーであり、映画に必要な要素の全てを完璧な形で封じ込めた珠玉の名作。
半魚人の造形に疑念はあるかもしれないし、獣姦と見れば嫌悪感を抱くかもしれない。しかし、映画鑑賞に必要なことは「表面に現れず」「言葉に出来ない」行間を読み取ることではないだろうか。
本作をキモいと嘲笑する人とは価値観が合わないような気がする。
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