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【 心が先に動いた日 】── 好きな歌が引き出した、ある利用者さんの力 ──【 認知症 / 介護 / 家族 / エッセイ / 4コマ漫画 / AIイラスト / 画像生成AI / 創作日記 】

「できない」という言葉の奥には、まだ見えていない力が静かに眠っていることがあります。
心と身体がふっと動き出すきっかけは、案外、日常のすぐそばにあるのかもしれません。
これは、ある日の介護現場で生まれた、小さくて温かな出来事です。

4コマまんが 介護編#167


🎵「立てない」が、「動きたい」に変わる瞬間

「今日は足が痛くて、立てそうにないわ……」

そう話していた利用者さん。
職員はその言葉を受け止め、身体に負担をかけないよう、いつも以上に慎重に移乗介助を始めます。

ところが、そのとき。

廊下の向こうから、利用者さんの大好きな歌が聞こえてきました。

「……あら、この曲!」

沈んでいた表情が、ぱっと明るくなる。
そして次の瞬間、利用者さんは手すりにつかまりながら、楽しそうにリズムを取り始めます。

足より先に、心が立ち上がった。

このマンガで描きたかったのは、そんな小さくて大きな変化です。


「立てない」は、うそではない

ここで大切なのは、利用者さんが痛みを大げさに訴えていたわけでも、職員を困らせようとしていたわけでもないということです。

その瞬間、本当に足が痛かった。
不安があり、立つことが怖かった。

だからこそ職員は、無理をさせず、丁寧に支えようとしました。

本人の訴えを疑わず、まず受け止める。

介護において、この姿勢は欠かせません。

一方で、人の身体は気持ちと切り離せるものでもありません。
不安が強いと身体はこわばり、安心すると少し力が抜ける。好きなものに触れると、自然に表情が変わり、身体まで動き出すことがあります。

痛みが消えたのではなく、
痛み以外に心を向けられる力が生まれたのかもしれません。


「できる・できない」だけで見ない

介護の現場では、つい動作を基準に考えてしまいます。

立てるか。
歩けるか。
食べられるか。
着替えられるか。

もちろん、安全に支援するためには必要な視点です。

けれど、人は機械ではありません。
昨日できたことが今日は難しく、朝できなかったことが午後にはできる。相手や場所、体調、言葉のかけ方によっても反応は変わります。

だからこそ必要なのは、
「この人は何ができるか」だけでなく、「何なら心が動くのか」を知ること。

好きな歌。
懐かしい景色。
家族の話。
季節の香り。
昔から続けてきた習慣。

その人らしさにつながるものが、動き出すきっかけになることがあります。


音楽は、思い出の扉を開く

好きな歌を耳にすると、当時の風景や人の顔、感情まで一緒によみがえることがあります。

介護施設で流れる一曲も、利用者さんにとっては単なるBGMではありません。

青春時代に口ずさんだ歌かもしれない。
家族と一緒に聴いた歌かもしれない。
つらい時期を支えてくれた歌かもしれない。

音楽は言葉よりも早く、心の深い場所に届くことがあります。

今回の利用者さんも、「立たなくてはいけない」と言われたから動いたのではありません。

「この曲を聴いたら、じっとしていられない」

その純粋な気持ちが、自然な動きを引き出したのです。


支えるとは、その人の力を見つけること

介護は、できないことを代わりに行うだけではありません。

その人の中に残っている力や、本人さえ気づいていない意欲を見つけ、安心して発揮できるように支えることでもあります。

無理をさせない。
けれど、可能性まで決めつけない。

この二つの間で、その日の体調や表情を見ながら関わっていくことが大切です。

職員の「足より先に、心が立ち上がりましたね」という言葉には、驚きだけでなく、利用者さんの変化を喜ぶ温かさがあります。

笑いながらも、そっと見守る。
そんな関係があるからこそ、この場面は優しいユーモアになるのだと思います。


🌱心が動けば、身体も少し動き出す

人には、正しさや指示だけでは動けないときがあります。

けれど、好き、楽しい、懐かしい、うれしいという感情が生まれると、思いがけない力が湧いてくることがあります。

介護で向き合うのは、身体の状態だけではありません。
その人が歩んできた人生、好きだったもの、大切にしてきた記憶にも向き合います。

「できない」と聞いたとき、その言葉を尊重する。
同時に、その人の心が動くきっかけを探してみる。

好きな歌が聞こえた瞬間、表情が輝いたように。

人の可能性は、心が動く場所に隠れているのかもしれません。


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