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「任せる」ず「攟眮」はどこで分かれるのか

「任せた」ず口にした瞬間、本圓は䜕を手攟しおいるのか

先週、知人の経営者ず、駅前の小さい居酒屋で飲んでいた。

青朚さん(仮名)。45歳。郊倖の町工堎の2代目で、3幎前に父芪から事業を継いで、いた埓業員25人ほどを抱えおいる。私の支揎先ではない。幎に数回、別の䌚の集たりで顔を合わせるだけの、ゆるい間柄だ。

ビヌルが半分ほど枛った頃、青朚さんは箞を眮いお、こう切り出しおきた。

「あの、ちょっず盞談しおいいですか。番頭の山本に営業党郚任せおみたんですよ、3ヶ月前。そしたら、なんか動かないんですよね。任せたら任せたで、逆にぜんぜん回らなくお」

「任せた」。私はこの蚀葉を、頭の䞭で2回ほど繰り返しおいる。

200瀟の珟堎で、私はこの蚀葉を䜕床も聞いおきた。そしお同じ数だけ、同じ誀蚳を芋おきた蚀葉でもある。

今日あなたに読んでもらうのは、「任せた」ず「攟眮した」がどこで分かれるのか、その境目のあたりの話だ。営業の話ではなく、もう少し手前の、経営の話のほうになる。読みながら、あなたの頭の片隅に最近「あの件はもう任せた」ず曞かれた付箋がもし1枚でも貌っおあるのなら、その付箋のほうを少しだけ芋ながら読み進めおもらえるずうれしい。

念のために曞いおおくず、これは私が誰かを裁く話ではない。私自身、最初の起業のずきに「任せた」ず「攟眮した」の間で䜕床も぀たずいおきた経営者の䞀人で、今日の話は、そのずきの自分ぞの手玙のようなずころもある。

「任せた」ず「攟眮した」は、隣の垭に座っおいる

「任せる」は䟿利な蚀葉だ。䟿利すぎる、ず私は思っおいる。

経営者のほずんどは、「任せた」ず口に出した瞬間に、頭の䞭の仕事リストからその件をスッず消す。これは責めおいるわけじゃなくお、人間がそういう生き物だからだ。リストを軜くしないず、明日が回らない。私自身、最初の起業のずきに、この手の消し方を䜕床もやっおきた䞀人だ。

ただ、リストから消したものが、本圓に動いおいるかどうかは、たったく別の話になる。任せた盞手の机の䞊では、消した぀もりの仕事が、止たったたた静かにホコリをかぶっおいるこずがある。気付くのは、止たっおから3ヶ月埌だ。

「攟眮」ず「任せる」の違いは、蟞曞を匕いおも出おこない。実際の珟堎では、二぀はほずんど同じ顔をしおいる。同じ顔をしおいるからこそ、自分がいたどっちをやっおいるかが、自分でもよく分からなくなる。

青朚さんも、3ヶ月前に「任せた」ず蚀った瞬間たで、自分は確かに任せた぀もりだった。3ヶ月のあいだ、山本さんずは商談の話をほずんどしおいない。「任せたんだから、口を出すず倱瀌かなず思っお」ず青朚さんは蚀う。倱瀌かな、ずいう遠慮の裏偎で、たぶん青朚さんは少しだけ呌吞が深くなっおいた。営業のこずを考える時間が、頭から消えたからだ。

䞍安が消えるのは、任せたからじゃない。芋るのを、自分の方からやめたからだ。先週、自分の頭から急にスッず軜くなった案件のこずを、あなたは1぀でも思い出せるだろうか。その軜さの背埌で、いた誰が代わりに重さを背負っおいるのかも、できれば䞀緒に。

青朚さんの3ヶ月のあいだに起きおいたこず

居酒屋で、青朚さんにもう少し具䜓的に聞いおみた。

「3ヶ月のあいだに、山本さんず営業の話、䜕回したした?」

青朚さんは倩井を芋䞊げる。「えっず、月1の経営䌚議で1回ず぀だから、3回ですね」

「䌚議以倖で、廊䞋ずかで雑談したした?」
「雑談はしおないですね。あ、いや、1回だけ、トむレの前で『調子どう?』っお聞きたした」
「山本さんは䜕お?」
「『なんずかやっおたす』ず」
「それで青朚さんは?」
「『そっか、頑匵れよ』っお」

それで終わり、らしい。3ヶ月のあいだに、青朚さんが営業に぀いお山本さんず亀わした䌚話の総量は、月1の経営䌚議3回ぶんず、トむレの前の10秒。たぶん総時間は、合蚈で40分くらい。1日あたりに盎すず、1分にも届かない。それが、青朚さんが「任せた」ず衚珟しおいた3ヶ月の䞭身だった。

私はだし巻き卵を箞で半分にしながら、こう蚀った。「青朚さん、それは任せたんじゃなくお、たぶん攟眮したんですよ」

青朚さんは黙っお、ゞョッキをひず口飲む。それから、絞り出すように口を動かした。

「任せたっお、本圓に思っおたんですよ」

本圓に思っおいたずいうのは嘘じゃない。経営者は「任せた」ず思いながら攟眮するこずができる生き物で、私もその生き物の䞀員だ。あなたもたぶん、その䞀員だ。

問題は、思っおいたかどうかではなくお、そのあいだ盞手の机の䞊で䜕が止たっおいたか、そっちの偎にある。

境目は「䌚う頻床」じゃない

ここで青朚さんに、いちばん蚀いたかったこずを眮いた。

「任せるず攟眮の境目っお、たぶん『どれくらい䌚っおるか』じゃないんですよね」

青朚さんが顔を䞊げる。「じゃあ、䜕ですか」

「盞手の䞍安の茪郭が、い぀も自分の頭の䞭にあるかどうか、です。山本さんがいた䜕を怖がっおるか、どの提案を埌回しにしおるか。そこに名前が぀いおるかどうか」

䞍安に名前が぀いおいる、ずいうのが私の蚀い方になる。任せた盞手の䞍安が、「挠然ずした心配」のたただず、それは攟眮に近い。「来週の◯◯瀟の曎新提案で、たぶん倀段の話で詰たる」ずいうレベルたで具䜓になっおいれば、それは任せおいる状態だ。

䞍安に名前を぀けるためには、たぶん週1で15分でいい。「いた䜕が䞀番気持ち悪い?」ず聞く。問題解決はしなくおいいし、指瀺も出さなくおいい。聞いお、芚えおいれば足りる。

これは、よく蚀われるマむクロマネゞメントずは違う。マむクロマネゞメントは、盞手の手を動かす方向たで现かく指瀺する仕事のこずだ。私が話しおいるのは、盞手の頭の䞭の䞍安のほうにだけ、目盛りを぀けにいく仕事になる。手は出さない。目盛りだけ぀けにいく。

青朚さんはしばらく黙っおから、口の䞭で蚀葉を転がすようにしおこう蚀った。「目盛り、を、぀けにいく  なるほど。あヌ、僕、぀けおないですね、これ、山本さんの䞍安に。3ヶ月間、たぶんずっず」

ずっず、ずいう蚀葉のあずに、青朚さんは少しだけ芖線を萜ずしおいる。

それでも、任せ切らないず人は育たない

ここで終わるず、きれいな話になる。きれいな話で枈たせるず、たぶんこの蚘事は嘘になる。

任せるず攟眮のあいだに、もうひず぀厄介な事実がある。「任せ切る」こずの䞍可避さだ。

人は任せられなければ育たない。これも、200瀟で繰り返し芋おきたこずで、もう疑う気がない。1ミリも信じおもらえずに動いおいる人間が、自分の刀断で䜕かを動かせるようになる堎面を、私は1床も芋たこずがない。

䞍安に目盛りを぀け続けながら、それでもどこかで手綱を完党に離す日が、必ずやっおくる。完党に離すず、しばらく動かなくなる時期も来る。動かない時期に、「あ、これ、攟眮しおるかも」ずいう顔぀きの䞍安が、経営者の偎にじわじわ湧いおくる。湧いおきたずきに、もう䞀床目盛りを぀けに行くか、それずも本圓に手綱を握り盎すかで、経営者ずしおの緎床が出おくる。

私自身、最初の起業のずきに、たさにここで間違えた。最初に採甚した瀟員に「任せた」ず蚀ったあず、私は3ヶ月ほが䜕も話さず、4ヶ月目に「やっぱり俺がやる」ず党郚の手綱を持ち盎しおいる。あれはいた思い返すず、任せたわけでも攟眮したわけでもなくお、䞡方を順番にやっお、䞡方ずも雑だった。雑だったから、その瀟員は半幎埌に静かに蟞めおいく。蟞衚を受け取った朝の机のあたりの空気を、私はわりずよく芚えおいる。

任せ切れない経営者が悪いのではない。任せ切るのは怖い、ずいう事実をなかったこずにする経営者だけが、たぶん少し危ない。あなたは最近、任せ切るのが怖いずいう話を、誰かに口にしおみただろうか。話しおいい話だ。

居酒屋の領収曞

青朚さんはそのあず、ゞョッキをもう䞀杯頌んでから、こう蚀った。

「じゃあ、月曜日、山本さんず15分だけ時間取りたす。指瀺はしないで、聞きたす」

私は䜕も返さなかった。返す代わりに、生姜焌きを箞で半分にしお、青朚さんの皿のほうにそっず寄せた。

垰り際、青朚さんが領収曞を受け取りながら、がそっず蚀った。「任せるず攟眮っお、ほんずに隣の垭に座っおるんですね」

隣の垭。私はその倜、駅たでの倜道を歩きながら、青朚さんが眮いおいったその蚀葉だけを、頭の䞭で䜕床も䜕床も転がしおいた。たぶん、青朚さんも家たでの道で、同じ蚀葉を持っお歩いおいる。倜の駅前で、東京の冬みたいな冷たい颚が、銖のあたりだけ通り抜けおいった。

家に垰っおからも、その蚀葉は机の䞊にぜ぀んず残ったたただった。

あなたが最近「任せた」ず口にした盞手の名前を、いた、心の䞭で1人だけ静かに思い浮かべおみおほしい。その人の䞍安に、あなたは目盛りを぀けられおいるだろうか。よかったらコメント欄に、その人に向けお最近かけた蚀葉を、1぀だけ眮いおいっおくれるずうれしい。

いいなず思ったら応揎しよう